二話
昼休みは私は図書室で過ごしている。
クラスでボッチの私は教室では居心地が悪い。光とは親友だけど、周りには秘密にしている。他に友達はいないし、作ろうとしたら光が許さないだろう。
「……」
適当に手に取った本を読んでいく。
本を読むのは好きだ。本は私を色々な世界へと連れで行ってくれる。
「こんにちは」
「っ……こんにちは」
隣に座っている女性に話しかけられた。
リボンの色から二年生だろう。
ショートヘアに端正な中性的な顔立ちをしていた。
「その本って、面白い?」
「え、えーと……そこそこ」
読み始めたばかりなので、よく分からなかった。
「そこそこか……おすすめの本とかある? 出来れば初心者向けで」
「えーと……」
突然、そんなことを言われてもすぐに返答できなかった。
そもそも、光以外とは話したことがないので、緊張で言葉が上手く出てこない。
「どんな……ジャンルが好きですか?」
「ジャンルか……笑えるやつ、コメディかな」
「でしたら……」
私が勧めたのはライトノベルだった。
異世界物で、異世界に転生したニートが個性豊かというか個性が強い仲間と共に冒険を繰り広げる物語だ。
「このイラスト可愛いね」
「はい……アニメ化もしてるので、良ければ見てください」
「アニメか……たまには良いかもね、ありがとう」
「……いえいえ」
「あ、そうだ。私は二年の斉藤理沙。君は?」
「私は……一年の御影友香です」
「友香ちゃんね、覚えておくね。私のことは理沙先輩て呼んでいいよ」
「はい」
それが私と理沙先輩の出会いでした。
一週間後、私は理沙先輩と再会した。
「久しぶり、友香ちゃん」
「お、お久しぶりです……理沙先輩」
理沙先輩は私の隣に座ると、テーブルにこの前勧めたラノベを置いた。
「読んでみたけど、すごく面白かったよ。久しぶりにお腹抱えて笑っちゃた」
理沙先輩は笑顔でそう言った。
「それは、良かったです……特にどこが面白かったですか?」
「特にか……ニートの主人公が魔族を目の前にして、ヒロインを置き去りにして逃げるシーンとか。後、平然を装いながらヒロインのスカートを覗こうとしたり」
「わかります。私もーー」
それから、私は本について語り始めた。
気がつくと私だけ話していて、理沙先輩は笑顔で相槌を打っていた。
「すいません……こうして、誰かと本の話をできることが楽しくて」
「大丈夫だよ。友香ちゃんの話は面白いし……友香ちゃんには本好きの友達はいないの?」
「えーと……友達は居るんですけど……本は余り読まなくて」
「そうなんだ。でも、友達できたね」
「え?」
理沙先輩は私を指さした後、自分にも指を差した。
「ほら、友香ちゃんと私。友達でしょ」
「っ……友達なんてそんな……」
本当は友達だと言われて嬉しかった。
けど、認めてはいけない。認めたら光が怒る。
「そうだ、この前面白い本を見つけたの。今持ってくるね」
理沙先輩は立ち上がると、本棚に向かって行った。
「はぁ……」
私はそっとため息を吐いた。
理沙先輩は本棚の前で、本を探していた。どうやら、目的の本が見つからないみたいだ。
「理沙先輩……私も探します」
「ありがとう……確か、推理物だったんだけど……」
「じゃあ、こっちです」
推理物が並べられている本棚に理沙先輩を案内する。
「タイトルとか分かります?」
「友香ちゃん」
名前を呼ばれて振り返ると、理沙先輩の手が私の頬に触れる。
「り、理沙先輩……?」
「うん、やっぱり可愛いよね」
理沙先輩が指で私の前髪をずらした。
視界が開けて、理沙先輩と目が合う。
「っ……」
獲物を狙うかのような目つきだった。
思わず後退りしようするが、背中が本棚とぶつかった。
「今、付き合ってる人いる?」
「……いません」
「じゃあ、私と付き合って」
「っ……冗談、ですよね?」
「冗談じゃないよ」
理沙先輩は顔を近づけてきた。
「それとも、女の子同士だと抵抗ある?」
「抵抗は……ないです」
「じゃあ、良いよね」
「それは……」
返答を言い淀んでいると、理沙先輩の手がスカートの中に入ってきた。スカートを抑えて抵抗しようとするが、止める気配はない。
このままじゃ、襲われる……!
絶体絶命の状況の中、予鈴のチャイムが鳴った。
「残念、お昼休み終了だね」
理沙先輩は私から離れた。
「返事はまた今度、聞かせてね」
「……はい」
理沙先輩は図書室を出ていく。
私はその場にペタリと座り込んだ。