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第二日目


 『第一世界、およびユノ・フォーリナーおよびアンデッドについての考察

 まず、この世界について。

 この世界はアンデッド、およびそれに類する何かに侵食された世界だとみて間違いない。

 

 ツリーハウス『フォーリナー』の人間は外に出ることを異常に恐れ、そして外を旅している私を羨望の目で見ていたことから、外には危険があるから行けないだけだと判断する。


 普通に考えればアンデッド達が元凶だと判断できるが、それだといくつか説明できないことがある。

 たとえば一面の荒野。

 あれは人もどきが行動してできる『傷』じゃない。

 たとえば木々。

 人もどきが闊歩した程度で『ホーム』以外の木が全滅するなど、まずあり得ない話である。


 何が元凶かわからない今、この世界から出ることはまずかなわないだろうし、研究者を自負する私としても未研究のまま出て行きたくない。


 次に、ユノ・フォーリナーについて。

 今のところ一番の謎は彼女だ。

 なぜ、荒野をあんな所まで一人でいたのか。

 

 謎はたったひとつだが、その謎は深い。

 武装もせず、アンデッド達の闊歩する荒野を一人で歩こうなどと思い至ったのか。

 散歩にしては距離がありすぎる(追記。このツリーハウスとユノがいたところはおよそ十キロほどある)。

 この謎、なにかあると私は踏む。ユノとの夜話にでも訊いてみるか。

 

 次に、アンデッド達のこと。

 やつら、ツリーハウスの人たちに恐れられる割には数がすくなく、力も強い方ではない。生命力はかなり高かった(パイソンの銃弾六発でようやく沈黙した)が、おそらくその異様な生命力が脅威になったのだと思われる。

 ……今日の時点ではこの程度しかわからない。以後、研究を進め、今後の参考に当てよう。

 追記欄

 フォーリナーが何故このツリーハウスの長になったのか、今後の安全確保のためにも調べておこう、何か意外なことが分かるかも知れない』




 「……ん」

 

 次の日。

 クレアは日が昇ると同時に起きた。

 それは別に緊張していたとかそう言うわけではなく、幼少のころに習慣づけされた起床時刻だったからに他ならない。


 他の住人はまだ寝ているかな、と思ってクレアは隣を確かめたが、いるはずのユノはいなかった。

 「……一体どこへ?」

 とりあえずユノを探すため、クレアは寝室を出た。


 なんてことはない、ただここの人たちは朝が早いだけだった。

 ただし、それが恐怖からくる不眠症だが。

 子供たちはそうそう恐れてはいないようだが大人に合わせて朝が早くなったのだろう。クレアでさえ、ここでは遅起きだった。


 フォーリナーの人たちはテーブルに互いを互いに守りあうようにして固まって座り、少ない食料を分け合って食べていた。

 「あ!おはよう、クレア!」

 「おはようユノ」


 朝の挨拶を交わすと、テーブルに着いた。

 住人達の鋭い視線がクレアを貫く。

 食料を取る気なのか、こいつは。

 言外に、そう言っていた。

 

 「私は食事はいらないわ。小食なの」


 そう言うと、クレアに対する敵意はなくなった。

 「ありがとうな、クレアさん」

 そう言ったのは、少し白髪の目立ち始めた中年男性だった。

 「気にしないで」

 

 クレアはそっけなく言う。

 「聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」

 「かまわんよ。大事なユノを助けてもらった恩だ、そのくらいならいくらでも……」


 彼の名前はセン。セン・フォーリナー。ユノの父親であり、ここ『フォーリナー』の長である。


 「アンデッドどもの原因はなに?」

 クレアは率直に訊いた。

 「……わからんよ」

 「ユノがなんであそこにいたの?」

 「知らんよ」

 「『ホーム』だけが健全な理由は?」

 「学者にでも訊いてくれ」

 「荒野になった理由は?」

 「わからん」

 

 しかし、えられた情報は皆無だった。

 何を言っても暖簾に腕押し、糠に釘。この男から情報はもらえないと確信したクレアは、自室に戻ろうとした。

 

 「ま、待て!」

 

 その時、フォーリナーの誰かが、叫ぶようにその足をとめた。

 「何?」

 声の主が男だったので、クレアの声はひどく冷たい。


 「お、お前は、いや、あんたは、ここに住むのか?」

 「住まないわ」

 クレアは即答した。


 「ま、待ってくれ!たのむ、この木に住んでくれ!食料も俺の分ならやるし、荒野よりもここは安全だ、な!?ここに住んでくれよ!」

 男は真摯に、そうクレアに頼み込んだ。


 「いやよ。ここが荒野よりも安全?アンデッドよりも危険な存在がここにいるじゃない」

 その言葉に、一同はぎょっとなる。

 「な、何がいるんだよ?」

 男の質問に、クレアは、


 「人間よ。特にあなたは飢えた獣みたいでまるで信用できない。残念だけど、私次世代のための畑じゃないのよ」


 冷たくそう言って、クレアはユノの部屋に帰った。

 声がしたが、今度は止まらなかった。


 「……ねえ、畑ってなに?」

 そして、ユノの部屋。クレアについて戻ってきたユノは、いきなりそんなことを訊いた。

 「畑は畑よ。野菜を耕すための土地」

 「知らない」

 クレアのはぐらかしは、成功したと見える。だが、ユノの環境の異常さを、改めて実感させられた。

 

 ユノは生まれた瞬間から十年間、ずっとこのツリーハウスにいた。

 したがって、ここ以外の世界を知らないのである。

 

 「……そう。……ユノは、どうしてあんなところにいたの?」

 あんなところ、とはクレアと出会った廃墟のことである。

 「……隣のツリーハウスに行くところだったの。お友達交換って言ってね、新しいお友達をこっちに呼ぶ代わりに、こっちからも向こうにお友達として行かなきゃいけないの」

 

 お友達交換、か。まあ、ほほえましいことじゃないか。ただ、隣と言うのにも距離が離れているようにも感じたが、ユノにとって隣とは、あの距離だったのだろう。

 「そう。……じゃあ、向こうのお友達は?」

 「もう来てる。だからユノも行かないといけないの」

 「そうなんだ」

 ユノは申し訳なさそうな顔をして、うつむいた。

 

 こっちにお友達は来たのに、向こうには行ってない、その差が自分がずるしているようにユノには感じられるのだろう。

 

 「仕方ないわね、隣の木まで守ってあげる」

 クレアは、ごく自然にそう言った。

 「え!?ほんと!?」

 

 顔をあげ、驚いた顔でクレアを見つめるユノに、クレアはちょっと面食らった。

 まさかここまで純粋な反応されるとは……

 「ええ、本当よ。今から行きましょうか?」

 「え、っと……明日から!それでいいでしょ?」

 

 少し行き渋るユノに、クレアはほとんど疑問を抱かない。少しの間でも家族の間にいたいのだろう、とそんな研究者らしからぬ考えで、ユノの行動を了承したのだった。

 こんにちは、作者のコノハです。

 さて、明日からクレアとユノは隣の木まで出かけることになりました。

 はたして一体どうなるのでしょう!?

 

 感想、ご意見本当にどうかお願いします。お願いします!

 

 駄文散文失礼しました。

 次回をお楽しみに!

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