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第一日目(2)~死の世界~

 「~~~~~~~~~~!!!」

 聞き慣れない悲鳴が、クレアの耳に届いた。それはクレアの今いる壁の向こう側から聞こえてきた。

 

 意味はわからずともその声には危機感が感じられ、何かしらの危険が声の主に迫っていることは明白だった。

 そこからのクレアの行動は迅速かつ合理的だった。


 無言のまま声のした方へと駆け出すと、コートの中から拳銃、コルトパイソンを取り出し、すぐに打てるよう撃鉄をあげる。

 壁の向こうに警戒しながら体を出すと、壁に体を押しつけて怯えている少女がいた。


 「……あら?」

 「~~~~~~!?」

 「あなた、どうしたの?」

 「~~~~~~~~~~~!!」

  

 少女が何を言っているのクレアには理解できない。そして少女の方も同じくクレアの言葉が理解できないようであった。

 そんなクレアが異質に見えるのか、少女はクレアの方を指さし、カタカタと震えている。

 「……大丈夫よ、私は味方……っと、言葉わからないんだっけ」


 そうつぶやくと当たり前のようにコートの中に手を入れ、耳栓のようなものを取り出した。

 いつものクレアならここで相手に説明を入れるのだが、意味が通じないのでは何を言っても無駄だ。

 それを耳につけると、クレアの耳につんざくような悲鳴の意味が、はっきりと聞こえた。



 「危ない、うしろっ!!」



 危険が後ろにある――

 それをクレアが認識すると同時、彼女の体は自動で動いた。死の危険に対していちいち意思を持って反応していたのでは遅いのだ。彼女は言葉を聞くと同時に振りむき、反射のように拳銃の引き金を引いた。

 爆音がとどろき、クレアの目の前の空間に、絶対致死の銃弾が吐き出される。


 そしてその銃弾は確かにあたった。

 しかし、その危険を打ち倒すには、不十分だった。

 その危険は人の形をしていた。しかし、人ではなかった。人であってはならないものだった。

 腐りきった、死体。俗に言う、アンデッドである。

 

 「なによこれ!?」

 こうクレアが叫んだのは何もアンデッドの正体がわからなかったからではなく、なぜこんな存在がここにいて、少女をおそっているか、と言うことだった。

 「は、早く逃げて!」


 少女の言葉の意味はわかるが、クレアは退こうとはしなかった。

 今退けば、確かにクレアは助かるだろう。

 けれど、代わりにこの少女が死につかまってしまう。

 そんなことは、させない。たとえこの少女が何者であったとしても、クレアは退いて自分だけ助かろうとはしない。

 なぜなら。

 彼女が地獄から救われ、救ってくれた人間に育てられたからだ。人は親の背中を見て育つ。人を救う親の子供はやはり、人を救おうとするのだ。クレアは無意識に、そしてその無意識を快く思いながら、少女を背中にかばうのだ。


 拳銃を構え、アンデッドの頭、胸、腰、腕、足、とにかく撃ちまくる。

 広い荒野に間断なく轟音が鳴り響き、その音が六連続でなった後、静かになった。

 最後の銃弾をくらってようやく、アンデッドは地に倒れ伏したのだった。


 クレアはコートに拳銃をしまい、そして何かの錠剤を取り出した。

 彼女は錠剤を口に入れると、水なしでそのまま飲み込んだ。

 

 「……あ、うん、大丈夫?」

 「え、言葉、わかるんですか?」


 いや、今でもおそらくわかっていない。ただ、クレアの言葉を錠剤の効力が勝手に現地の言葉に変換させているだけなのだ。そして耳には瞬時に意味を伝える翻訳機。

 この二つが、クレアが旅立ちの前に用意した最新の道具だった。

 

 「ああうん、今わかるようにした」

 「……?」

 そう首をかしげる動作だけですんでいるのは、少女がまだいろんなことを信じれる年頃だからであろう。これが大人だったらこうはいかないはずだ。

 「まあ、それはいいじゃない。あなた名前は?私はクレアよ」

 少女の疑問に答えるのはやぶさかではないクレアだったが、そうすると話がかなり長くなるので、説明を省いた。


 「私の名前はユノ。ユノ・フォーリナーです」

 少女は不思議そうにしたまま、そう答えたのだった。



 ―――――第一世界、第一日目―――――

 

 記念すべき第一世界、その世界の実態は、あまりに残酷な世界だった。

 ここはつい十年前まではごく普通の、故郷に近い形の世界だったらしい。しかし今はそれら文明は見る影もなく衰え、今私がこうしているように木の上のツリーハウスで細々と小さなコミュニティを築くしかない。

 

 あのとき助けた少女、ユノ・フォーリナーやアンデッドについては、『研究手帳』、『第一世界についての考察』にて追記する。今は研究の時間ではなく、日記の時間だ。


 あれからユノに連れられ、私はこのツリーハウス、『フォーリナー』へと来た。

 今この世界では二世帯、および三世帯以上のコミュニティの形成が難しく、完全な部外者は私一人となるほどまでに閉塞している。


 このツリーハウスを支えている木は『ホーム』と呼ばれていて(それもこのツリーハウス内での呼び名である。正式名称はとうにすたれたらしい)、この荒野でも青々とした葉を茂らせる、生命力の高い木である。その木の上に家を建て、ツリーハウスを作ったようだ。


 夕食は基本的に『ホーム』から採れる木の実で、肉は食べれないらしい。

 そのせいで老人や多くの成人達はやせ細り、頼りない姿をしていた。

 しかしユノや他の子供たちは木の実だけでも栄養が事足りるよう体の構造が変化しているようだ。

 一代で変化が起きるほど、どうやら事態は切迫しているらしい。


 私は携帯食があったので食事は辞退したが、食糧が減らされると家の住人に認識されると殺されるかも知れない。今後は食事はできるだけ控えて、自分が危険のない存在だと思われないよう注意しよう。


 ……ただ、もし危険はないと判断されたとしても、今後どう振る舞うか、によって私の未来は大きく左右されるだろう。この世界に留まざるをえない状況になる可能性だって十分にある。

 早いところ精神か体を安心させて、外に出なければ。もしかすると大変なことになるかもしれない。


 とりあえずのところ今日はユノと一緒に眠ることになった。というかした。でないと種族保存に目覚めた男どもになにされるかわからない。今はユノと一緒に眠ることで危険を回避しているが、いつかはその枷さえも忘れて襲ってくるかもしれない。用心は忘れずに、けっして油断せず、警戒を解かないよう。

 

 では、今日はこの辺で眠ろうか。……そうそう、研究手帳に記入も忘れずに。研究のし甲斐がありそうな世界だ。



 この世界の神が私に明日をくれる程度の慈悲があることを祈って。



                            ――――クレア・ペンタグラム

 ――――第一日目、終了。明日へ続く――――

 

 こんにちは、作者のコノハです。

 さて、一日目は無事夜を迎えられたクレアですが、明日ははてさてどうなるのでしょう?クレアは果たして世界を出て、旅を続けられるのでしょうか?

 では、また次回!

 感想、ご意見よろしくお願いします!……いや、ほんとにお願いします。誰も読んでないんじゃないかと疑ってしまいます……


 と、ご催促も終わったところで、お別れです。

 駄文散文失礼しました。ご愛読ありがとう!

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