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三日目(1)~決意~


 次の日。

 私は目覚めると、同時に、昨夜忘れていたことをか思い出した。

 「……あ、日記……」


 私は呆けた頭のまま、まだ昨日の記憶がはっきりとしている内に日記を書こうと、ペンを取った。



 


 ――――――二日目―――


 


 故郷、琴乃若で沙耶と再会した。

 でも、彼女は敵にならされていた。


 人形に、なっていた。


 もう、彼女を救う手立てはないのだろうか?

 シドウはないという。

 私もないと思う。


 でも、だからと言って親友を見捨てれるわけがないだろう。

 私はいくら罪人でも、まだ見込みのある親友を見捨てるほど、外道ではないつもりだ。

 

 絶対に、沙耶を、元の沙耶を取り戻しても見せる。


 




 追伸。この日記は三日目に書いている。……なんという失態。毎日書こうと決めていたのに。




 この世界の神に沙耶を救えるほどの力があることを祈って。


                           ―――――クレア・ペンタグラム






 ―――――――――三日目に続く――――――――













 ……沙耶。


 もう本当に人間ではなくなったのだろうか。

 もう本当に彼女は彼女じゃないのだろうか。

 

 ……沙耶……。


 私の、友達。小学生からの、親友。

 

 沙耶は、私と違って本当にただの女の子だった。

 それが、なんで私たちにかかわる結果になってしまったのだろう?


 悩むけれど、先は見つからず。

 考えてみても、答えは出ない。 

 

 また、沙耶と戦うことになったら私はどうするのだろう。


 今度も、躊躇するんだろうか。

 撃てずに殺されようとするのだろうか。


 ……沙耶を元に戻せなかったら、私は彼女を殺すのだろうか?

 また、ユノやキアのように、私の隣から、人が消えていくのだろうか。


 もう、考えたくない。

 今は見張り役のシドウも眠っていることだ。


 私はコートから拳銃を取り出す。

 ユノを殺したのと同じ拳銃。

 

 こめかみに当ててみる。

 引き金に、力を込める。


 あと、数ミリ。


 あと数ミリこの鉄の棒を引けば、私の命はここで消える。

 なんだ、とっても簡単だ。

 あれほど思い悩んでいたのはなんだったんだろう?


 死のうか。このまま、引き金を引いて。


 どうせ、いつか死ぬんだし。

 これから沙耶と戦うよりは、これからも苦痛を味わうことを考えてみれば、死ぬことなんて。



 ……さよなら、みんな。



 「……クレア様、一体何をなさっているのですか」


 ひどく、冷めた声がした。


 「……サクラ。なんで起きたのよ」

 このひどくバカ丁寧な口調で話すのは、シドウの主人格、私の目の前にいる体の本当の持ち主、サクラだ。

 

 「銃器の匂いがしたので起きたのです。……自殺なさろうと?」

 嘘をついてもしょうがないのでうなずく。


 「……私も、自害しようとしたことがありました」

 知ってる。そのせいで私一度殺されかけたのよね。


 瞬時に記憶がよみがえるほど、それは鮮烈な体験だった。


 ついさっきまで虫も殺せないような態度だったくせに、急に豹変して戦闘を開始したのだ。


 今は私のことを姉貴と呼ぶが、最初の出会いはあまりいい方ではなかった。


 「……でも、今わたしくしはここにいます。それは、ルネス様がいるからだけではありません。……あなた様や、わたくしを必要とされている方たちがおられるからですわ。あなた様を必要とされている方も、たくさんおられます。わたくしももちろん、その一人ですわ」


 サクラのその真摯な言葉が響いたわけではない。

 ……わけでは、ないが。


 「……じゃあ、死ぬのはこの騒動が収まってからにするわ」



 私はこめかみに当てた拳銃をおろした。


 死ぬのは変わらない。でも、今ここにある琴乃若の敵を殺してからだ。


 死ぬのはそれからでも、遅くはないはずだ。

 

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