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二日目(1)~敵の本拠地を探せ~

 

 私は目覚めると同時に戦闘態勢に入った。

 一日中、戦闘になるかも知れない。


 それは、朝とて例外ではないはずだ。


 「お父さん」


 私がリビングに入ると、双剣を携えたお父さんがいた。


 「おはようクレア。今日も早いね?」


 いつも通りのあいさつ。それが今はとても心地よくて。


 「おはよ、クレア」

 

 お母さんも、いつもよりもピリピリした雰囲気をまといつつも、私に笑顔で挨拶をした。


 「おはよう、お父さん、お母さん」


 私もいつものように、挨拶をしたのだった。


 


 「ルネスは?」

 

 いつもならうるさく付きまとって来るはずの弟が今日は声さえ聞こえない。そのフィアンセであるサクラの声もまた、聞こえなかった。


 「二人は昨日から出かけているよ。この世界のイノベートの基地を探りに行ってもらってる」

 「そんなのトレースにやらせればいいじゃない」


 万能無限の道具なら、それぐらい造作もないことでは?


 「今トレースには他の世界を担当してもらってる。他の家族を守るよう、言ってある」


 お父さんの口ぶりから、きっとこの戦いは『イノベート』対『ペンタグラム』の戦争のようだ。


 また、戦争か。


 そう思わなくもない。けれど、今は嫌がっている場合でも、キアのことを思い出して後悔している場合でもないのだ。


 今は、戦う時なのだ。


 「今のところ市街地に出てる形跡はないけれど、きっと敵は自由にこっちを攻めてくる。それを各個撃破する以外に方法がないのがつらいけど、皆ならできるはずだ、頑張ろう!」


 「うん!」


 私は元気よく、返事をした。









  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






  『そうそう、ルネス。君のお姉ちゃんが一人、今帰ってきてるんだ。また挨拶でもしてあげてよ』

 「向こうは俺に会いたくなんてねえだろうがな!」

 

 そう言って俺は携帯電話を切った。


 「いいのですか、ルネス様……」


 不安そうにサクラが聞いてくる。

 

 青い髪に、黒の瞳。

 サクラは元イノベートの人間だったが、今は俺のフィアンセとして日々頑張っている。


 「さて、行こうか」

 「ええ」


 俺たちは今路地裏に潜んで琴乃若を隅々まで調べている。


 敵の本拠地、イノベートの支部を見つけるためだ。


 でも、三日たっても全然見当たらない。

 当たり前、と言えば当たり前である。


 ただの高校生であるルネスが少し探した程度で見つかるような間抜けは、いくら敵でもしないだろう。

 

 なぜ、俺がこんな任務についているのか。


 答えは簡単、俺が隠密が得意なサクラと一緒にいたいから。

 つい最近まではサクラが俺に惚れてる恰好だったんだけど、今は俺もサクラに惚れていて、こうやって危険な場所にでもついて来ているわけだ。


 「ルネス様、少しだけお離れください。……代わりますので」

 「ああ、わかった」

 代わる、つまり、サクラの第二人格であるシドウに交代するってことだ。


 クラリとサクラの体が一度揺れたかと思うと、花のような雰囲気から一転、とげとげしいものに変わった。


 「……よお、ルネス」

 「よお、シドウ」

 

 俺たちはとげとげしく挨拶をした。

 シドウとサクラは別人で、俺との関係も正反対だった。


 俺とサクラは恋仲だが、俺とシドウは仲の悪い友達みたいなもんだ。


 「てめえまた危険に首突っ込みやがって……死ぬぞ、いい加減?」

 「死ぬかよ。俺はサクラと結婚するまで死ぬもんか」

 「はいはい、うるせえよお前」


 いつものやりとりの後、シドウは表情を引き締めた。


 「……で、見つかったのか、敵の本拠地は」

 「まだに決まってんだろ、頼むぞシドウ」


 俺は軽口を言う感覚で頼む。


 「ったく、気配探んのどんだけ大変かわかってんのか?クレア姐さんならわかってくれるんだろうけどな……」


 そしてなぜか、シドウはクレア姉をとても尊敬している。

 まあ、クレア姉は昔っから女受けはよかったからな。


 女の子からもかなり告白された、とか困りながらもうれしそうに言ってたけどな。

 

 「で、どうなんだ?」

 「できるよ、……時間はかかるがな。……まあ、最近出るたびに気配探ってるが、今のところ引っかかるような気配はねえ。……あと三日はかかるかもな。……クレア姐がいたら少しは変わるかも知れねえな」


 ……何、それ。俺に頼めってか?


 その時のシドウの顔は、意地の悪そうな顔をしていた。

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