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第6話 閉じ込められていたもの (3/6)

わあ……。GMさん達お仕事が早いなあ。


「ただ、君たちはそのフニルーが異常だと気付いていたのに報告をしなかったね? 今度からはおかしなデータに気付いたら、すぐにGMまで報告してくれるかな?」

圧を強く感じる言葉に、私も二人も頷く。

「は、はい……」「はい」「すみませんでした」


「じゃあ今からこのサーバは緊急メンテに入る。そのフニルーに君たち以外に接触した者はいないかい?」

アイカ達には、きなこもちを見せていない。

きなこもちは、カタナとあゆにしか撫でられた事もなかった。

「はい……」

私の答えに頷いて、ラゴは続ける。

きっと、ログを辿って誰に接触したかは確認してあったんだろう。

ただの確認なんだなと、気付いてしまう。

「一応君たちのデータもウィルスによる侵食や破損がないか確認して、おかしな部分があれば直しておくから、メンテナンス完了時間まではログインしないように。いいね?」

画面の上部にサーバ全体への一斉通知メッセージが入る。

今から五分後にメンテに入るので、全員ログアウトするようにというメッセージだ。

「きなこもちはどうするんですかっ!!」

カタナが焦りを浮かべて叫ぶ。

「残念だけど、あれはウィルスだ。焼却させてもらうよ」

「……っ!」

ギリッとカタナの奥歯が軋んだ音を立てる。

「ペットとして可愛がってくれてたのに、ごめんね……。補填として三人にそれぞれ好きなペットをあげるよ」

私たちへの疑いが晴れたからか、ラゴは申し訳なさそうにそう言って、もう一度両手に炎を宿す。

「……ヴルルル……」

怯えるような声に振り返ると、きなこもちは涙のマークを出していた。

「ダ……ダメっっ!!」

私はもう一度両手を広げる。

私なんかじゃ盾にもなれないだろうけど。

それでも、きなこもちを消していいなんて言えなかった。


ラゴは私をまっすぐ見つめると、ゆっくり瞬きして言った。

「……仕方ないね。メンテまで時間がない。申し訳ないけどみさみさちゃんはログアウトできないようにさせてもらった。実力行使させてもらうよ」

言葉とともに、私ときなこもちへゴウッと炎が降り注ぐ。

それに触れると思った瞬間、目の前に氷の壁が立ち上がった。

あゆの魔法だ。

バキンッと派手な音を立てて、ラゴが尻尾で氷の壁を砕く。

えっ、その尻尾って武器にもなるの!?


氷を割ったラゴが目の前に現れる。

大きな尻尾がゆらりと持ち上がる。

視界が一瞬で黒く染まる。それはカタナの背中だった。

ギィンッッ!!

金属のぶつかり合う音。

カタナが押し負けて、私に激突する。

カタナの肩越しにラゴがくるりと回転するのを見て、カタナがその尻尾を受け止めたのだと知った。

あゆが水の槍のようなものをラゴに降らせる。


どうしよう、二人を巻き込むつもりじゃなかったのに。

GMさんに攻撃なんかしたら、アカウントを消されちゃうんじゃ……。


「効かないよっ!」

ラゴは余裕の表情であゆとカタナに炎を放つ。

あゆは炎の壁で防いだけれど、カタナはそれを喰らいながらラゴに突撃してスキル攻撃を入れる。

その隙にあゆが大魔法を詠唱する。


どうしよう……。

私が、きなこもちを消されたくないって言ったせいで……二人が……。

カタナは、ラゴの両手から生まれた大きな炎に包まれて、その場に倒れた。

「カタナ!」

瞬間、大魔法が発動する。

「すぐ戻る!」

倒れたまま叫んだカタナは、一瞬でログアウトしていた。

ラゴから赤い字がいくつも溢れる。

それが終わりきらないうちにカタナがログインした表示が出て、カタナはまたラゴに突撃した。

そっか、カタナはここがセーブ地点だから……。


私は、震える指できなこもちの飼育ケースをタップする。

でももう、きなこもちはケースには戻れないみたいだ。

「きなこもち……」

きなこもちは、水色の大きな瞳で私を見つめ返す。

縋るようなその視線は、瞳のもっと奥から注がれているように感じた。

不意に頭の中に声が響く。


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