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第3話 嘘と事実と友達 (6/6)

午後の授業は眠くなる。

お腹が膨れて、ぽかぽかの日差しが教室の空気をとろりとさせて。

それは皆そうだと思うんだけど、五限の歴史で寝てしまったのは三人だった。

ああ、こっくりこっくり船を漕いでる青木くんはきっと、大縄を必死で回してたから疲れたんだろうなぁ。

佐々木さんは夜更かしでもしてたのかな。どう見てもぐっすりだ。

そして、坂口くん。


坂口くん……、眼鏡をかけたままそんなべったり机に突っ伏したら、眼鏡が歪んだりしないのかな……。


坂口くんは授業中寝てしまう事がよくある。

それでも先生はなぜか、坂口くんを起こさない。


今日も先生は、青木くんと佐々木さんだけを起こした。


『なんで坂口は良くて俺はダメなんだよっっ』

その日のクラスのグループ会話では、青木くんがそう叫んでいた。

『あ、俺も気になったから、今日先生に聞いたんだよ』

『詳しく!(←スタンプ)』

『なになにー?(←スタンプ)』

『いや、これ話していいのかな……。まあ別に口止めされたわけじゃないからいい……のか……?』

『ドキドキ(←スタンプ)』

『ミステリー!(←スタンプ)』

『なんかあれ、薬の副作用とからしくて、どうしようもなく寝ちゃうらしい』

『!?(←スタンプ)』

『ショック!!(←スタンプ)』

『なんだそれ』

『???(←スタンプ)』

『私、お母さんに聞いたことあるんだけど、坂口くん脳の病気なんだって。なんかね、あんまり長く生きられないらしいよ?』

『ガーン(←スタンプ)』

『うええ、マジか……』

『そんなまさか!(←スタンプ)』

『あるんだ、そんなこと……』

『まだ中2なのに』

『号泣(←スタンプ)』

『ちょ、俺、明日から坂口に優しくするわww』

『あからさますぎwww』

『やめとけ(←スタンプ)』


坂口くん、学校に戻ってきて良かったなんて思ってたのに。

あんまり長く生きられないって……。


私は予想もしていなかった展開に言葉を失う。

クラスにそんな子がいることって、あるんだろうか。

それとも、私が知らなかっただけで今までも同じクラスにそんな子は紛れてたんだろうか。

みんなと同じようなフリをして、そっと。

それに、私が気付かなかっただけで……。


今日昼休みにチラと見た、冬馬くんと坂口くんの様子が浮かぶ。

二人とも、楽しそうに話をしていた。


グループ会話では、小学校の頃にもこんな子がクラスにいたとか歌は歌えるのに喋れない子がいたとか毎日何度も薬を飲む子がいたとか、そういう話が続いている。


そうなんだ……。

私が知らなかっただけで、本当は色んな事情がある子が私の近くにもいたんだ。

そんな風に思いながら、流れる言葉を追う。

ひまりもアイカも、ズッ友のメンバーはこの会話に入る気がないのか黙ったままだ。

でも、ここでこんな会話ができたのは、あの二人がここにいないからで。

ある意味ひまりがあの二人を蹴ってたからだよね。

そう思ったら、なんだか不思議でちょっとだけ苦笑が漏れた。


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