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第3話 嘘と事実と友達 (4/6)

どうしようかな……。カタナに声かけてみようかな……。

狩りの途中だったりして、邪魔になったりしないかな……?

私は、きなこもちをケースから出す。

「ぷいゆっ!」

やっぱりきなこもちはお腹を空かせていて、お腹を空かせたマークをしきりに出してくる。

「お待たせしちゃって、ごめんね」

カタナからもらった小石を食べさせて、もちもちしたボディを撫でる。

「ぷいゆ♪」

きなこもちは機嫌を直してくれたらしい。

もちもちですべすべのボディはひんやりしていて気持ちいいんだよね。

夢の中での感触を思い出しながら、私は指で画面を撫でる。

カタナも、きなこもちが撫でたいかも知れない。

そんな風に思うとなんだか我慢できなくなって、ついその名前をタップしてしまった。

『今忙しい?』

『精算してるとこだから大丈夫だ、今日はどうだった? レベル上がったか?』

『ううん、それどころか、減ったかも……』

『そんなに死んだのか?』

『2回死んで、3回全滅しちゃった』

『デスペナあるゲームって、今時珍しいんだよな……』

デスペナルティ。DtDは死んでしまうと経験値の1%が無くなる。

ひまりと遥の1%は簡単に取り戻せたけど、私とアイカは減ったかトントンくらいなんじゃないかなぁ……?

『初心者ばかりのパーティーなのか? 良ければ俺が付き添おうか?』

ああやっぱり、カタナならそう言ってくれそうだなって思ってた。

でも、あの文句ばっかりで口喧しいパーティーに、カタナを巻き込みたくないなぁ……。

『ありがとう、友達にも話しておくね』

『ああ、そうしてくれ』

カタナのまっすぐな返事に胸が痛む。

きっと、カタナは私がこの話を友達にしないだなんて思ってもないんだろうな……。

私は一体いつから、こんな風に嘘ばっかりつくようになってしまったんだろう。

本当は、友達は口が悪いから会わせたくないって……。

…………やっぱり、そんなこと言えないよ……。


「ここにいたのか」

全体会話に出たカタナの名前に辺りをみれば、カタナがいた。

ほんの昨日ぶりだったのに、カタナの姿になんだかホッとする。

今日の狩場でも街でも、同じような黒髪のアサシンを見かける度に思わず名前を確認してしまっていた。


「きなこもち、触っていいか?」

うっかり返事をしそうになったけど、よく見ればカタナはきなこもちに向かって話しかけていた。

「ぷいゆ♪」

きなこもちが嬉しそうに鳴く。

カタナがもちもちときなこもちを撫でれば、きなこもちが音符マークを出す。

それに応えるように、カタナも音符マークを出した。

その赤い瞳は、スマホ越しでも普段より優しそうに見える。

「……なんか、嬉しそうだね」

「空気だけでそんな事まで分かるのか? すごいな健常児……」

カタナが本当に驚いた様子でこちらを見る。

頭の上にはびっくりマークが3回も出された。

健常児ってなんだろうと思ったけれど、後で調べてみたら障害を持ってない人のことのようだった。

「仲のいい友達が、明日退院するんだ」

「お友達、入院してたんだ?」

「ああ。昔からよく入院する奴なんだが、最近は見舞いも行けないからな……。ずっと会えなかったんだ」

そっか。最近病院はどこも面会禁止になってるってお母さんも言ってたなぁ。

おばあちゃんの顔も見に行けないって……。

「明後日からは学校にも来られるらしい。だから、すごく嬉しい」

カタナの頭の上にニコニコのマークが出る。

うわぁ。嬉しそう。こんな風に笑うカタナ、スマホ越しじゃなくて夢の中で見たかったなぁ。


その日は結局普通にログアウトして、私は普通にベッドに入った。


でも、夢は見た。

どこか暗いところに何かが閉じ込められていて、助けを求めている。

丸いような形のそれは、卵か何かだろうか。


夢の中で私は、それを助けてあげたいと……、出してあげたいと思った。

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