第3話 嘘と事実と友達 (1/6)
スマホのアラームで目を覚ます。
今回はちゃんと別れの挨拶をして落ちることができて良かった。
たっぷりたまった通話アプリの通知にクラスのグループを見れば、夜中の2時頃グループに坂口くんが冬馬くんを呼んでいた。
なんでまたこんな深夜に……?
坂口くん、夜寝てないのかな。
ちゃんと寝ないと病気治らないんじゃないのかなぁ……?
冬馬くんも心配してるだろうに……。と、私は勝手に冬馬くんの心配をしたりしながら、学校へ向かった。
ズッ友グループの方は皆でお笑い番組を見ていたらしく、アイカとひまりと遥のやりとりがずらっと並んでいた。
玲菜は途中まで一緒に見ていたようだったけれど、途中から『音楽番組見るから』と消えている。
多分アイドル好きのひまりもそっちが見たかったんじゃないかなと思うんだけど、何も言わずにそのままお笑い番組を見てるようだった。
実際には二画面にして、そっちも見てたのかも知れないなぁ。
どちらにせよ録画してあるのは間違い無いと思う。
もしかしたら、玲菜と一対一会話では盛り上がってたのかも知れない。
そんなふうに思えば思うほど、通話アプリでの彼女達との会話は酷く薄っぺらに見えた。
今日も、学校に坂口くんは来なかった。
私は、ちょっと理科の実験で火傷しそうになってヒヤッとしたけど、そのくらいで今日もいつもと変わらない時間に学校から戻る。
いつものようにスマホを開く。
クラスのグループに表示された文字に、私は目を疑った。
『ひまりが冬馬叶多を退会させました』
『ひまりがグッチーを退会させました』
グッチーというのは、坂口くんのことだ。
え……!?
なんで……。どうして……??
二人とも、何も発言していなかったのに。
……そんなに戻ってきたのが許せなかったんだろうか。
「酷い……」
思わず口から零れた呟きに、カタナの声が胸を過ぎった。
そうだ。想像力……。
どうして何も言わないのに蹴ったんだろう。
何かを言われる前に……? 何かって……もしかして、文句を言われたくなかったのかな。
文句を言われるのが怖くて、二人が何か言う前に蹴った……??
それにしたって酷いけど。と思いながらも、ひまりの態度にひまりの弱さを見つけてほんの少しだけ怒りが和らぐのを感じる。
なんだか不思議だ。
現実は何も変わってないのに、考え方だけで人の気持ちは変わるものなんだね。
でも、冬馬くんと坂口くんはどう思ったかなぁ……。
嫌な気分になったのは間違いないだろうけど。
冬馬くんは、坂口くんが蹴られたことに心を痛めてるかも知れないな……。
ん?
でもこの順番で蹴られたなら、坂口くんが蹴られた事を冬馬くんに言わない限り、冬馬くんは自分だけ蹴られたと思ってる……かなぁ。
坂口くんよく学校休んでるし性格まではわからないんだけど、細い銀色のフレーム大きめの眼鏡をかけた、ほんわかした感じの男の子だったよね。
もうずっと休んでるけど……、まさか、コロナなのかなぁ。
ズッ友グループにも通知が入る。
『ちょっと、ひまり蹴り過ぎウケるwww』
『二人まとめて蹴っとけば、もう戻って来ないっしょ』
『えへん(←スタンプ)』
アイカの突っ込みにも、ひまりは悪びれる様子がない。
『えへんじゃないでしょ、坂口まで蹴ってどうすんの?』
『テヘッ(←スタンプ)』
玲菜が窘めてくれてるけど、ひまりは反省する気はないみたいだった。
『そんなことばっかりしてたら、友達無くすよ』
『ひどーいっ(←スタンプ)』
『うるうる(←スタンプ)』
でも、スタンプの返信ばっかりなのは、もしかしたら本人も、ちょっと罪悪感を感じてるのかも知れないなぁ……。
そんな風に想像力を働かせていたら、遥も帰ってきたらしい。
『ただいまー』というスタンプに、おかえりが続く。
私もそろそろ見ているだけではまずいので、ただいまとおかえりに混ざっておいた。
アイカが3人の招待でもらえたというDtD衣装のスクショを上げてくる。
あ……。可愛い……。
こんなメイドさんみたいな衣装セットがあるんだ。
一見メイドカフェの服みたいなふりふりのエプロンドレスなんだけど、所々ファンタジーテイストになってるのが、DtDっぽくていいなぁ。
他のみんなも私と同じで『可愛いっ!』とスタンプを送っている。




