第88話 海遊びと魂の双子
俺とオクタゴン。
二人で砂浜に体育座りをして海を眺めている。
ともに、海水パンツ一丁の姿で、背後にはビーチパラソルも準備してある。
美味しそうな匂いが漂ってきているのは、この間捕らえたアームフィッシュが焼かれているのだ。
あとは、ホットドッグの屋台も出ている。
全てアビサルワンズが運営しているぞ。
「ワクワクしてくるな。それと同時に、俺様はお前への嫉妬で世界を滅ぼしてしまいそうだ」
オクタゴンがポツリと呟いた。
緑色のタコさん柄のトランクスタイプの水着である。
「楽しみは後にとっておくもんだ。どこかに絶対、あんたと相性のいい女子がいるって」
俺は赤いタコさん柄のトランクス水着だ。
色違いのお揃いである。
ちなみにオクタゴン、自らの姿に多重のフィルターを掛け、相手を狂気に陥らせるオーラをカットしている。
こんなこともできるんだな。
「俺様、半日くらいしかこの隠蔽モードは持たないけどな。だが海水浴なら半日で十分であろう……!! バッファローには海がなくてな。湖があるんだ。夏はエリー湖で泳いだりした。だが海は憧れでな……」
そんなオクタゴンの憧れが、この能力を生み出したのかもしれない。
考えてみれば、イースマスにある全てのものは、この男が作り上げているのだ。
まさしく、イースマスの創造神に他ならない。
そんな男が寂しげに、「嫁さんほしいなあ」などと呟いている様を放っておけるだろうか?
放っておけまい。
「オクタゴン、あんたにはたくさんのものをもらった。ハンバーガーとかピザとかえっちな水着とか。この恩には必ず報いよう。約束するぞ兄弟」
「本当か、兄弟!」
俺とオクタゴンは固く握手を交わした。
そんな男同士のやり取りをしていると……。
「マナビさーん!」
「きたあー!」
飛び上がる俺。
腕組みしながらガン見しようと立ち上がるオクタゴン。
まず、揺れているのは胸であった。
水色のビキニに、可愛らしい翼のようなフリルが踊る。
出るところはめちゃくちゃ出て、引っ込むところがちゃんと引っ込んでいる。
いつもあれだけ食っているのにあのプロポーションとか、どうなっているんだ。
ルミイの代謝は化け物か!
ということで、ふわふわヘアを一個のお団子にまとめたルミイ登場だ。
女子チームでは一番の長身で、そして一番のわがままボディ。
あまりにもエッチ過ぎる。
だが、俺はトランクスにテントを作りながら、座ることはしないのだ。
これから一緒に遊ぶんだからな!
「おいおいマナビ、こいつは男だったら背筋を伸ばして立っていられなくなること請け合いだぜ。とんでもない女だな! バッファローだったら周囲の男たちがみんな前かがみになるところだ!」
オクタゴンが興奮混じりにまくしたてた。
「マナビ! カオルンも着てきたのだ! どうなのだ?」
「うおっ、まさしくオールドスタイル! 似合いすぎる」
いわゆるスク水と呼ばれていたものの、古いスタイル。
それに似せて作られたワンピース柄の紺の水着は、案外洗練されててイルカの肌を思わせる。
しなやかで、凹凸少なめのカオルンの体にフィットしているではないか。
胸元のゼッケンというか名札というかが、カオルンの名前をかっこよく意匠化したマークになっている。
デザイナーがよく分からんプロ意識を発揮してしまったようだな……!
ツインテールの髪は、左右に可愛くお団子にされている。
これはかわいい。
大変かわゆく、えっちである。
「おいおいマナビ、これはバッファローだったらお前が逮捕されてるぜ。ブラボー!」
オクタゴンが興奮混じりにまくしたてた。
「そして当機能の登場です。お二人が特徴的なので、あえて箸休め的なものを選んでみました」
スタスタと現れたアカネルは、黒髪をポニーテールにし、身につけたのはなんと真っ赤な水着である。
チューブトップ……つまり、肩紐がないタイプの水着で、赤い水着に真っ白いラインが何本か走っている。
「これは当機能のイメージする、ヘルプ機能というものの姿を表しています」
「本人から解説が始まったぞ!」
「どういうことだってばよマナビ!」
俺とオクタゴンが混乱する。
「赤色が、アカシックレコードにあまねく存在する知識です。そしてこの白いラインが、それにアクセスするヘルプ機能を表しているのです。さあ、ボトムを見て下さい」
「うおっ、ビキニタイプなのにハイレグだと!?」
「こいつはけしからんぜ……清楚なジャパニーズガールの外見なのにこんなすげえ水着を着てくるなんて……」
俺とオクタゴンが戦慄する。
「こっちは当機能の趣味です。当機能も、脚線美はルミイやカオルンに負けていないというところをお見せしたかったのです。いかがでしょう」
「ブラボー」
「ブラボー」
俺とオクタゴンが拍手した。
「マナビよ。どうあっても、俺様はステディな関係が欲しくなった。見ての通り、俺様はもう自由に動けん体だ。俺様が嫁を求めて大地を移動すれば、イースマスは維持できなくなるだろう。この街並みとファーストフードを守るため、俺様はここにいなければならん」
「ああ。イースマスはこの世界、パルメディアの宝だ。他じゃハンバーガー食えないもん。奥さん探しは任せろ。絶対に連れてくる」
「頼む……!!」
オクタゴンと俺、再び固い握手を交わす。
ともにえっちな好みも近い事がわかり、こいつとは魂の双子だったのではないかと思うくらいだ。
この男の望みを叶えてやらねばならん。
そのために、俺はこの世界に降り立ったのかもな。
だが、それはそうと……。
「よーし、遊ぼうぜー!!」
俺は女子たちに振り返った。
「ふぁーい」
「うおー、ルミイがもうホットドッグ食ってる!!」
「食べたらいきまーす」
なんてことだ。
だが、食にそこまで興味が無いのが二人いるからな。
「カオルン、泳いでみるのだ! マナビ、競争なのだー!」
「カオルンは流線型だから速そうだなあ……」
「ふふふ、当機能は機械ですが、水着を装備したので耐水性を得ましたよ。泳ぎというものを知り尽くした当機能におののいてください」
「機械って水着で耐水性得るの?」
二人と並んで、水の中にザブザブ入る。
「待て待て。このオクタゴンも泳ぎならなかなかのものだ。エリー湖ではヴォジャノーイと恐れられた俺様だぞ」
「化け物呼ばわりじゃん!」
そんな感じで、海水浴を始める俺たちなのだ。
面白い!
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