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第86話 邪神とステイツ帰還計画

「ウッ、ウグワーッ!?」


 叫び声がしたと思ったら、街のあちこちでパリンパリーンと何かが割れる音がした。

 あれは結界が割れる音だな。

 俺は詳しいんだ。


 声がした方に行ってみると、一人の男が紫色の顔をしてぶっ倒れていた。

 こいつが結界使いの異世界召喚者だったんだろう。


 オクタゴンからの攻撃を喰らって死んだんだな。

 あの邪神、やっぱり普通に異世界召喚者最強なんじゃないか?


 タイマンだと、同じ召喚者でもサクッと殺されてしまうのだな。


 遠くの方では、鎖で作られていた城みたいなのが崩壊していくところだった。

 あれもオクタゴンに倒されたのか。

 いや、策が敗れたと知って、鎖を解体して逃げていくところなのだ。


 鎖の解け方が規則的過ぎる。


「これで一件落着では?」


 俺の問いに、ルミイがぶんぶんと首を横に振った。


「そんなことありません。ほら、アビサルワンズのみんなを見て下さい! やる気満々ですよ! 若いパワーはもう止められないんです、うおー!」


「なんでルミイはそんなにやる気なの」


「ここの人たちが作るご飯が美味しかったので、絶対にこの文化を失わせてはいけないからです!!」


 むふーっと鼻息の荒いルミイ。

 食べ物への愛が暴走している!


「争いは良くないと思う」


「マスターがまともそうな事を言ってます! 衝撃です……!! で、その心は」


「この事件が長引くと女の子たちの水着姿を拝めなくなる。お預けはつらい」


「やっぱりエッチな理由でしたねえ……」


 呆れるんじゃない、アカネル。

 とりあえずルミイが止まりそうに無いので、俺は海に向かって呼びかけることにした。


「おーい、オクタゴン! お前を解放したぞ! ちょっとこっち来てくれ」


 反応はすぐにあった。

 暗雲が立ち込め、周囲がじめっとして磯臭くなる。


「うっ、カオルンはまた気持ち悪くなってきたのだ!」


「わたしと後ろに下がってましょうカオルン!」


 ルミイに手を引かれて、カオルンがテントの影に移動していった。

 そして今回はアカネルが俺の隣にいるではないか。


「アカネルはいいの?」


「当機能の精神をマスターと同期させました。これでダメージは全てマスターに行きます」


「ひどうい」


『相変わらず女子たちと仲いいなあ。お前のステディ理解ありすぎじゃない?』


 フランクな声が掛かった。

 空間から滲み出るように、オクタゴンが現れる。

 彼が立っている場所だけ、あの岩礁みたいになった。


「おお、完全に自由になったみたいじゃない」


『お陰様で。いや、感謝感謝だ。あの無限使いだけはどうにも、俺様との相性が悪くてさ。力ずくで抵抗はできるんだが、その間俺様は無防備になってしまう。そこを他の異世界召喚者にやられたんだ』


 久々の自由に、オクタゴンは大きく伸びをしたりしている。


『で、どうして俺様を呼んだ? あ、いや、お前だったら呼んでも構わないな。俺様と同格だからなあ。這い寄る混沌って感じの男だもんな』


「なんと人聞きの悪い。あのなオクタゴン。うちのおっぱいハーフエルフがだな」


『ワオ、素敵な呼び名だな。今度紹介してくれ』


「ダメだ俺のだ。戦うぞ」


『お前と戦うのは俺様でもゾッとしないな。俺様、ちょっと未来が見えるんだが、普通に俺様が負ける未来がちょこちょこ差し込まれる。絶対お前とやりたくない』


「うむ。俺も万に一つ負けるかもしれないあんたとはやりたくない。ということでだ。うちのおっぱいハーフエルフが、アビサルワンズを扇動してこっちまで連れてきて、お陰で異世界召喚者をぶっ倒したんだが」


『ほうほう。辛気臭い俺様の眷属が、妙に盛り上がってると思ったら』


「あの連中、帝都まで突き進んで帝国をぶっ倒すつもりらしい」


『うわあーめんどくせえ』


 オクタゴンが顔をしかめた。

 だよな。

 こいつ、絶対に面倒くさがるタイプだもん。


 海底都市とかでずっと眠りについてるのが好きそうだ。


「はい、質問です」


 アカネルが挙手した。

 彼女を見たオクタゴンが、ピュウっと口笛を吹く。


『ジャパニーズ・ハイスクールスチューデントじゃん……。映画でしか見たこと無いよ。セーラー服でサブマシンガンぶっ放すやつ』


「日本来たこと無かったのか」


『馬鹿言うなよ。お前と俺様では生きてた時代が違うんだぞ。まさかお前の時代、日本観光が比較的容易に……? うわー、元の世界に帰りてえ』


「いいな。アカネルが元の世界に戻るやり方多分知ってるぞ」


『ほんとか!?』


「あのう、当機能の質問よろしいでしょうか」


 いかんいかん、オクタゴンと盛り上がってしまった。

 こいつ、俺と魂の兄弟みたいなところがあるから、めちゃくちゃ気が合うんだよな。


『アッハイどうぞ』


「既に答えを聞いてしまった気がしますが、この世界に根付いた新たなる神として、オクタゴンは今後どうするつもりですか?」


『ステイツに帰還する』


 悪夢のような状況になりそうである。


『なので、その方法をジャパニーズガール、君が知ってるんだよな? 教えてくれ』


「当機能のヘルプはマスターのみが実行できます」


「よーし、じゃあヘルプ機能。地球に帰る方法を教えてくれ」


「召喚の逆儀式を行う必要があります。魔法陣を提示します」


 空中に、魔法陣が現れた。

 本当に便利だなあ、ヘルプ機能。


 オクタゴンが、ポカーンと口を開けてそれを見ていた。


『おいおいおい……。話が早すぎない?』


「そういうのも俺の能力なんだ」


『俺様、本当にお前とやり合うことにならなくてよかったよ。よし、マナビ。ついてこい。約束のプレシャスなギフトを作ってやるぜ。なんと、お前のステディたちのサイズを測ってぴったりのを作っちゃう』


「リアリィ!? マジかよ!!」


『期待してろよ、兄弟』


「最高だぜ兄弟」


 俺とオクタゴンは肩を組み、二人で世界一人気がある星の戦争の映画のBGMなどを口ずさみながらイースマスへ戻っていくのだった。

 あ、そう言えばやる気満々なアビサルワンズをどうするか、まだ決めてなかったな。



面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] 悲報:地球に邪神が降臨して滅亡… みたいなことを避けるためにもせめて狂気の制御の訓練をだな
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