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第55話 テロリスト鎮圧は簡単チュートリアルから

 チュートリアルモードになったら、案の定というか何というか、教授は自動的に行動するオブジェクトになっていた。

 仲間ではなかったか。

 まあ、この人は立場とかあるしな。


「どうするのだ?」


「まず一回目は状況を把握してみよう」


「マナビは慎重なのだなー」


 一旦出した光の刃を引っ込めて、カオルンは手のひらをグーパーしている。

 光の刃、指先を揃えても広げてもそれに見合った形で出てくるらしい。


 さて、カオルンを伴って銃撃戦を見に行く。

 どうやら、治安維持部隊が押されているようだ。

 武器がハンドガンくらいしかない。


 それに対して、相手は大型の魔導ガンをぶっ放している。

 マジックボトルなんていう悠長で、投げ返されたら確実に破滅するような自爆武器など使ってもいない。


 そうだよな、これがプロだよな。


 魔導ガン集団は、皆覆面をしており、誰が誰なのか分からない。

 仮にテロリストとしておこう。


 で、テロリストたちは治安維持部隊を銃撃で足止めしつつ、何人かが妙な動きをしている。

 まるで、彼らの背後にいる誰かを確保すべく走り回っているような……。


 おっと、ここで教授がテロリストの弾丸をネクタイで弾きながら突入した。

 体に魔法の鎧みたいなのを張り、何発かは無効化できるようだ。

 このおっさん、本当に教授だろうか。戦闘力が高すぎる。


「それなりにやるのだなー」


 カオルンが感心した様子である。

 そしてすぐに、鼻を鳴らした。


「だけどこのあたりじゃ二番目なのだー」


「ほう、では一番目は誰ですかカオルンさん」


 カオルンはニヤリと笑って親指で自分を指し示す。

 そして、走り出した。


 広げた指から、長い爪のように光の刃が発生する。

 カオルンは弾丸を視認しながら、的確に切り落とすのだ。

 マシンガンくらいの速度なら対処できるっぽいなこれ。


 あっという間にテロリストの間に躍り込んだ、カオルンと教授。

 次々にテロリストの手足とか首とかが飛ぶ。

「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」阿鼻叫喚だ。


 教授が殴り倒すよりも、カオルンが処理する方が圧倒的に多い。

 殴られた者は生き残れてラッキーである。


 さて、俺はこの隙間をくぐって向こう側へ。


 するとそこでは、軍の制服を着たやつが二人ほど死体になって転がっていた。

 さらに、テロリストが何人かで一人の男を追い回している。


 栗色の髪を後ろになでつけた、メガネの男だ。

 ストライアス?

 いや、違うな。


 見た目は似た感じのいい男だが、こっちのはもっと若い。


 誰だろう……?

 だが、テロリストの狙いがこの男であることは明らかだった。


 俺はトコトコと駆け寄り、テロリストの動きを把握した。

 チュートリアルの時間を戻したり進めたりしたのだ。


「こらー! カオルンが混乱するのだー! 時間をいじるのはやめるのだー!」


 おっと、カオルンに怒られてしまった。

 調子良く暴れてるところだったな。


 彼女、タクル戦ではあまりの相性の悪さに出番が無かったから、フラストレーションが溜まっているのだ。


「こっちはこれで終わりだよー」


 カオルンに告げながら、俺はスタンバトンでテロリストのむき出しになった首筋とか手首を叩いた。


「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」


 軽く叩くだけで麻痺した。

 これは優秀。

 繰り返し見たから、こいつらの動きも完全把握。正確に最小限の動きで無力化できるな。


「よーし、ではチュートリアル終了!」


 元の世界に戻るのだ。


 後は簡単。

 教授とカオルンが、チュートリアル同様にテロリストの軍勢に突っ込んだ。


 カオルンなんか何回も銃弾を切り裂くのをやったお陰で、精度が上がっているじゃないか。

 銃弾が纏った魔力とか衝撃波ごと、刃が散り散りに切り裂いていく。

 全く被弾が無いまま、カオルンはテロリストの中に躍り込んだ。


 踊る光の刃。


「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」

 飛び散るテロリストの首と首と首。

 遊んでるな! 首だけ飛ばすゲームしてらあ。


 なお、教授はテロリストの中でも一番体がでかい、魔導機器で全身を覆ったパワードスーツみたいなやつと殴り合っていた。


「大仰な格好だが……! 鍛え上げた肉体一つで勝負できんとは嘆かわしいな!」


「抜かせ! 捻り潰してやるぞおっさん!! ぬわあーっ!!」


「鍛えた肉体に、身体強化の魔力を載せる! これだけでそんなおもちゃなど相手にならぬということをレクチャーしてやろう!」


 パワードスーツパンチが迫る!

 だが、これを教授は狙いすましたハンマーブローで撃ち落とした。


「ぬおおーっ! 腕が! マシンの腕がーっ!?」


「続いてレクチャー2だ! なるべく長く学ぶため、こらえてくれたまえよ!」


 教授の体が振り子のように揺れる……。

 これは、デンプシーロール!?

 

 そこから放たれる無数の連打がパワードスーツテロリストに叩き込まれる!

 あまりの打撃の凄まじさに、パワードスーツが宙に浮き始めた。


 浮いた敵にひたすら連打する。

 格ゲーみたいだ。


「ウグワウグワウグワウグワウグワウグワウグワウグワウグワワワワワワーッ!?」


 教授のフィニッシュブローであるアッパーカットを喰らい、テロリストは全身のスーツを粉々にしながら吹き飛んでいった。

 魅せるプレイだなあ。


「効率が悪いのだ!」


 カオルンはお気に召さなかったようだ。


 さて、その一方で、俺はチュートリアルどおりの動きをする。

 死体を乗り越えて、追いかけっこをするメガネの人とテロリストに追いつく。


「なんだお前はウグワーッ!?」


「何をするんウグワーッ!?」


「ちょっまっウグワーッ!?」


 一呼吸の間に全員無力化した。

 スタンバトンのスイッチを切ってベルトに挟む。


「助けに来たぞ、メガネの人」


「は、え? ええっ!? い、いつの間にかテロリストが全滅してる!!」


 メガネの人は驚愕したようだった。


「おう。これくらいなら朝飯前だ。危ないところだったな」


 だが、彼は俺をちょっと警戒しているようだ。

 ここは名乗って警戒心を解こうではないか。


「俺はマナビ。コトマエ・マナビだ。ドンデーン教授の紹介で皇帝に会いに行くところなんだ」


「皇帝に……って、ドンデーン教授のご紹介かい!? ああ、だったら安心だ! 向こうで空に向かって咆哮を上げてるのはまさに教授だし」


「あれが教授ってんだからスリッピー帝国はおかしいよな……」


「魔法工学と身体性の適合を研究している人だからね。自分の体で実験してるんだよ。ああ、申し遅れたねマナビさん。僕はベストール・スリッピー。皇配であり、皇帝セレスティア・スリッピーは僕の妻だ」


「なんと!!」


 いきなり大人物を助けてしまったようだ。

面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] いきなり、最重要人物!? 皇帝の亭主か!?
[一言] 皇帝まで女性だったの…!? マジでマナビが救国の英雄なのだな
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