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第45話 NTR野郎の正体は陰謀から

 戻ってきて風呂を再開し、そして賢者になって後から出てきた俺は、部屋に運ばれてきた夕食を目の前にして今後の対策を考えることにしたのだった。


「マナビが冷静な顔をしてるのだ」


「たまに一人になった後、こういう感じになるんですよねえ」


「分析するのやめてくれませんか」


 俺は下手に出て陳情を述べた。

 ここを突かれると実に弱い。


 さて、今後の対策だが……。


「宿のご飯美味しいですねえ!」


「ほんと、ルミイはどんどん食べるのだ! でもスリッピー帝国は、どうして食べ物がブロック状になってないのだ? 非効率的なのだ」


「あ、それはな、ヘルプ機能が詳しい」


 話題が逸れたが、冷静になった俺は、確かにそっちも気になっていた。

 賢者であるうちにいろいろな疑問点を解消してしまおう。


『スリッピー帝国は軍事国家です。食事こそが兵士の士気に影響を与えると早くから気づき、ブロック食の作成をやめました。それ以降、スリッピー帝国の兵士は強い兵として有名です』


「効率よりも士気を選んだか。ワンザブロー帝国はもっとこう、ポストアポカリプスな感じだったもんな。それならブロック状の食事でかまわないか」


「カオルンはずっとあのフードバーというブロック状の食べ物を食べてきたのだ。だからこの国は驚きばかりなのだなー」


「あちこち偵察に行ってたのではないの?」


「行ってたけど、食べ物は自分で持っていっていたのだ!」


 そう言って、カオルンはハンバーグステーキみたいなものをフォークでブスッと突き刺す。

 これを持ち上げて、小さい口でかじりつく。


「うーん、悪くないのだ」


「まだおいしい食べ物の記憶がないだろうからな。最初は戸惑うだろう。どれどれ……」


 俺もハンバーグステーキを食う。

 なるほど美味い。

 なんか赤ワインがうんちゃらって感じのソースが掛かってる。


「うまいうまい。この国の食べ物は、俺の世界の食べ物にかなり近いぞ。兵士や工場の人は肉体労働者だし、学生はとにかく飯を食うからな。こういうガッツリ系の味付けが受けるんだろう」


「とても美味しいですよ!」


 ルミイが実にいい笑顔を見せる。

 このために頑張ろうと思える笑顔である。

 よし、このために頑張ろう頑張ろう。


 いかん、賢者モードが解けかけている……!

 ルミイめ、なんという威力だ。


 俺がまだ冷静なうちに策を練らねばならない。


「タクルを排除しようと思うんだ。さっきの宿の炎上も、タクルが仕掛けたことだ」


「そうなのだ?」


 ルミイが絶賛食事中なので、相槌はカオルンが担当してくれる。

 付き合いがよくて助かる。


「そうなのだ。さっき扉を開けたらあいつがいた。でな、あいつの狙いはルミイとカオルンだ。あの男は、狙った女子を自分に惚れさせる能力を持っている」


「むむむっ! それはつまり……カオルンがどんなに頑張ってもダメっていうことなのだ?」


「そうだ。カオルンが女の子である時点であの男には勝てない。あいつと勝負できるかどうかは、性別で決まるんだ。かなり恐ろしい敵だぞ。なお、スリーズ友愛団の男たちはタクルのハーレム女子たちに骨抜きにされている模様」


 タクルは恐るべきNTRパワーによって、スリーズ友愛団を……。

 もしかすると、この都市で起こっている活動そのものを掌握している可能性がある。


「あ、そうか。ヘルプ機能。タクルの黒幕」


『シクスザクス帝国です』


「アチャー! この都市で起こっている運動は、他国が仕掛けた内乱!」


 あっという間に真実が分かってしまったぞ。

 電池や兵器を作っている、この国の工場を無力化し、軍隊を撤退させればここにシクスザクス帝国は凱旋できるというわけだ。

 確かに、タクルの能力はそのために凄まじい威力を発揮するだろう。


 あいつはとんでもなく有能な工作員なのだ。


「不思議なのだなー。空中に文字が浮き出るのだ。そのタクルというのはシクスザクスなのだ? あの国は色々陰謀を巡らせてて、あちこちにスパイを放ってるのだ。カオルンもシクスザクスのスパイと何度か戦ったのだー」


「ほうほう、そんな過去があったのか。ここは、異世界召喚者をかなり上手く使ってるっぽいな。一番強敵な国かも知れない。だが、NTR野郎を俺と会わせてしまったのが運の尽きだ」


「わー、マナビがまた凄い笑顔になったのだ」


「俺の攻撃的笑みだぞ。どうだ、猛禽とかサメっぽいだろう」


「変な感じのげっ歯類みたいなのだ」


「えっ!? そんな風に見えてたの!? カッコいいと思ってたのに……」


 俺はショックを受けた。

 ともかく、NTRのタクルが危険であることは完全に確認できた。

 あいつがうちの女子たちに執着している間は、スリーズシティを陥落させる仕事がストップするだろう。


 それは即ち、こちらからもタクルを認識し、攻撃しやすくなることを表している。


「明日からは、魔法大学に潜入しようと思っている。学生に化けて、学内でタクルを仕留めるぞ」


「賛成なのだ! 変装は得意なのだー!」


「おいしかった~! あっ、話は決まりましたか? 潜入? 大学? へえー。わたし、魔法使いの大学って一度見てみたかったんですよねえ」


 満場一致で、俺の案は可決となった。

 あとは窓と扉の鍵をしっかり閉め、ルミイが呼び出した精霊に部屋の周囲を巡回させ、サーチアンドデストロイの指示を出してから眠りにつくだけだ。

 あ、宿の人には、日が昇るまではこちらの部屋に近づくなと告げておいた。


 安心して眠るためには、部屋を要塞化せねばならないのだ!

 タクルめ、余計なコストをかけさせやがって……!

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話が早いヘルプ機能が素敵すぎる [一言] げっ歯類みたいな笑顔は草
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