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第39話 次なる都は産業都市から

 まずはなんか国境線にいた軍隊を突破し、スリッピー帝国に突入した俺たち。

 ここを抜けて、さらに奥のフィフスエレ帝国を抜けると、バーバリアンとエルフが住まう北方の森がある……らしい。


 ワンザブロー帝国の連中、よくぞ二つも国をまたいで移動したなあ……。


「わたしを連れて行く時は、全力でしたからねー。戻る時もすごい勢いでした。マナビさんの召喚に国運を賭けてたんでしょうねえ」


「なのだなー」


 横でカオルンが適当に相槌を打った。

 今はスリッピー帝国内を走っているところで、俺は後部座席でのんびりしている。


 運転席のルミイが、助手席に座ったカオルンに運転の仕方を教えているところだ。


 俺は免許が無いので運転しないが、多分ヘルプ機能とチュートリアルを使えばやれるだろうと思っているのだ。

 なにせ、戦車もヘリも操縦できたからな……。


 だが、俺が運転すると緊急事態はむしろ危ない。

 俺がフリーであった方がいいのだ!


 ということで、運転はルミイに任せてある。

 魔導カーをずんずん進めてもらいながら、俺はヘルプ機能などをちょんちょんといじるのである。


 助手席でやると、前方に説明文が表示されて危ないからね。


「ヘルプ機能、スリッピー帝国とは」


『パルメディア随一の軍事国家です。魔力電池を開発した国であり、豊富な鉱山資源といち早く技術系の異世界召喚者を迎えたことで独特な発展を遂げました』


「ああ、戦車やヘリがいておかしいと思ったら、あれは異世界召喚者デザインだったか」


『魔力電池の使用により、操縦者本人の魔力の有無に関係なく高い戦闘能力を発揮する軍隊を所有します。魔力保有者が一級帝国民、魔力の無いものが二級帝国民なのは変わりません。奴隷システムも存在します。戦場に出るのは、基本的に一級帝国民だけです。これは、二級帝国民を魔法で拘束して前線に出した際、魔法を用いる感覚を知らなかったため、フレンドリーファイアが多発してその戦闘で敗北したためです』


「おお、帝国に歴史あり。魔法がメインになっている世界だと、魔法を使った経験の有無ってのはリアルに大事なんだなあ」


『なお、不人気だったパワハラ気質の上官はことごとくフレンドリーファイアで戦死しました』


 魔力なしの兵士、極めて正確に戦力を行使していたのでは?


 ひとまず、俺はうむうむとうなずいた。

 すると、運転の見学に飽きたカオルンが、座席の隙間からにょろりと後ろの席までやって来る。


「もう運転の話はたくさんなのだー! カオルンは自分で走ったほうが速いから、車は運転できなくてもいいのだー!!」


「えーっ! それじゃあ運転手はわたしだけになっちゃうじゃないですかー! そんなのだめですよー!」


 ルミイからの猛烈な抗議!

 確かに、ルミイ一人に任せるのも大変だ。


「そうだ。こんな世界なら、普通の運転くらいなら自動運転装置とかありそうじゃないか? ちょっとその辺の都市に寄って探してみようぜ」


「見知らぬ国で寄り道は危険ですけど、それなら仕方ないですね!」


「なのだなー」


 満場一致で俺のアイディアが可決された。

 カオルンは適当に相槌打ってるだけだな?


「ヘルプ機能、近くの街。あと、自動運転装置」


『スリーズシティを表示します』


 魔導カーのフロントガラスに、半透明な地図が投影された。

 最寄りの都市というわけではないのは、ここに自動運転装置があるからだろう。


「よーし、自動で運転してもらうために、わたし頑張っちゃいますよー。でも、やっぱり一人で運転してると疲れるなー。お風呂とか入りたいなー」


「俺をチラッチラッと見てくる! 露骨な要求だけど、俺はルミイにお喜びいただいたり一緒にお風呂するのが人生最大のモチベーションなので寛大な心でそれを受け入れよう……。お風呂しましょう」


「やったー!!」


「お風呂なのだなー?」


「あれ? カオルンはお風呂入ったことないんですか?」


「ないのだな! カオルンは時間がもったいないから、水浴びで済ませてるのだな! すぐ終わって別のことができるのだなー!」


「それはいけません!! お風呂は凄いんですよ!! 人生の喜びが二倍くらいになります!!」


「な、な、なのだなー!?」


 おおっ、ルミイがカオルンを圧倒している。

 滅びの塔でお風呂に入ってから、ルミイのお風呂ラブは強くなるばかりだ。


 あれが良かったな。

 温泉都市で飽きるまで都市規模の大浴場に入ったの。


 あれほどの規模でなくとも、大きな湯船に浸かりたい。

 俺もそれは思った。


「よーし、ではスリーズシティへ進行!」


 そういうことになった。

 魔導カーは、一応は道の形をした道の上を走っていく。


 ワンザブロー帝国と違って、スリッピー帝国の道路はきちんと形を保っているのだ。


『魔力が使われていません』


「あー、それでか」


 ワンザブロー帝国と比べて、保有魔力量に余裕がないスリッピー帝国。

 少しでも魔力があるなら、軍事に回したい彼らは、二級帝国民と労働ゴーレムを使ってコンクリートロードみたいなのを国のあちこちに広げたそうだ。


 そのお陰で、軍隊が迅速にどこにでも移動できる。


 普通なら、他国もこの道を使って攻めてきそうなものだが……。

 魔法文明時代なので、わざわざ軍事車両を作って攻めてくるような国はここしかないのだった。


『フィフスエレ帝国はエルフとの関係も深く、精霊魔法を研究しています。フォーホースメン帝国は魔獣を飼いならしていますから、移動は魔獣任せです』


「国に歴史あり!」


 どの国も尖ってるんだな。

 じゃあ、スローゲインを連れてきたツーブロッカー帝国は?


『魔導歩兵とゴーレム馬によるチャリオット突撃が売りです』


「ローマっぽい。チャリオットと魔導戦車のバトルとか見てみたいよね……」


 魔法文明時代、なかなかロマンに溢れているような気もする。


 ちなみにスリッピー帝国、道路がある以外は割りと一面の荒野なので、風景的にはワンザブロー帝国と代わり映えがしないのだった。

 お陰で、遠くにあるスリーズシティの姿がよく見える……。


 げげっ、明らかに巨大な建造物と、そこに囲い込まれるぐちゃぐちゃ雑多な街並み、そして黒煙を上げる煙突が無数に立ち並び、都市からは毒々しい色あいの水が垂れ流されているんだが。


「あれはお風呂に期待できない系都市なのではないか……?」


 俺は疑念を抱くのだった。

面白い!

先が読みたい!

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