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第175話 ぶん投げられからの達人大地に立つ

 大変な責任を負うことになった代わりに、魔導王対策本部の首脳の一人として迎えられた俺である。

 これはリターンが見合ってるのか……?

 まあいいか。俺は考えるのをやめたぞ。


「どうもどうも」


『まあ、兄弟はそうするしかないと思ってたよ。ようこそコチラ側へ』


「責任と重圧を得ることは、かなりのモチベーションになるぞ。楽しくやっていこう」


 オクタゴンとベストールに大歓迎されてしまった。


「私は好きにやっていたいのだがね」


「教授は別です。放っておいても責任の方が教授を放ってはおきませんからね」


 尊大な感じのベストールも、教授の前では腰が低いのな。


「マナビ君、彼はこの国最強の男であると同時に、我ら国家上層部のほぼ全ては彼の薫陶を受けた教え子でもあるのだよ。そりゃあ頭が上がるわけがない」


「なるほど納得」


 スリッピー帝国の文字通り重鎮じゃねえか。

 俺が睨むところ、この教授はバーバリアン王バルクと互角くらいだ。

 強いぞ。


 いつまでもそんな事を言っていると話が進まない。

 俺はここで、話題をどーんと進めてしまうことにした。


「んじゃあ、手っ取り早く行こう。フリズドライが復活した。144時間で世界を凍結させるって言うから、あと残り時間は……アカネル」


「120時間です」


「うむ、刻々と時間は迫ってる。魔導王はニヤニヤしながらこれを眺めているはずだ。で、フリズドライを止めるためにやって来るであろう連中を迎撃すべく、色々準備してるのは間違いない」


「ああ。そこまでは我々も予測しているよ。そこで、どうするかだ。今はオクタゴン君の力を使い、進路を異界化させて攻撃を仕掛けるという話をしていたが、進軍速度に問題が……」


 教授が唸っている。

 極北だからな。

 遠いんだ。


 オクタゴンの軍勢は徒歩なので、どうしても進軍に時間がかかる。

 なので、ここは手っ取り早く行こうじゃないか。


「俺とカオルンとアカネルと達人をだな、オクタゴンが極北にぶん投げればいい。それで事足りる」


「マスターとともにチュートリアルしました。それが一番確実な方法です」


「なんと」


 教授とベストールと、対策本部幹部陣が絶句した。


「そ……そんな大雑把な方法で……!?」


「大雑把かつ、極めて直接的だからこそ相手は想定できないってことだ。それに、俺と達人が揃ってたらどんな妨害も意味がなくなるぞ」


 言われてみれば……と首脳陣は納得した。

 オクタゴンが、ゲラゲラと笑っている。


『兄弟らしい! それに頑丈なメンツを選んだな! そいつらなら問題ないだろ。よし、やるぞ』


「やるか」


「もうやるのかね!?」


 教授が目を見開いている。


「魔導王は当たり前の戦法を潰すように色々備えてるはずだ。ちょっとくらい非常識な戦法でも同じだろう。なら、弾丸の速度で突っ込んでくる、あらゆる守りを破壊する突破力の化身になってやるしかない」


「意味が分からないよ」


 ベストールまで肩をすくめているのだ。

 なるほど、彼らでは魔導王の攻撃を防御できるだろうが、攻撃はできまい。


 定石は相手に読まれていると思って間違いない。

 なぜなら俺は定石を読んで逆手に取って踏み潰すからだ。

 魔導王が俺に似てるっていうなら、絶対同じことをやる。


 ってことで。

 巨大な鉄板を用意させた。


 これの上に俺と達人とカオルンとアカネルが乗る。


「飛ぶのか! 飛ぶんだな! 俺はこういうの大好きだ!」


 テンションが上がる達人。

 ハチャメチャな展開、大好きそうだもんな。


「飛ぶのだ飛ぶのだー!」


「当機能は機械ですし、マスターが無事であれば何回でも再生できるので問題ありません」


「そんな機能あったの」


 さらっと明かしてくるなあ。


『投げるぞ』


「どうぞ」


『おらっ!!』


 巨大化したオクタゴン、俺たちを持ち上げるなり、いきなり投げた!

 鉄板が凄い速度で空を飛ぶ。

 この鉄板自体がオクタゴンの異界化しているので、風の抵抗なんかがないのだ。


「今頃エリイが到着して、とても悔しがっています」


「エリイの愛は分かるが、戦力的に魔導王とやり合うには心許ないからなー。残当」


「久々に解放された気分だ! 空が青い! 空気が美味い!」


「夜に搾り取られると空が黄色くなるぞ」


「やめてくれ! 聞きたくない!」


 大変だなあ。


 さて、鉄板だが、空気抵抗というものが無いのでアホみたいな速度で突き進んでいく。

 あっという間にワンザブロー帝国を超えてその先へ。


 おお、帝国の後ろの山が破壊されていて、その先に海がある。

 で、海が凍りつき、道ができているではないか。


 氷の道の半ばには大きな島があったが、それも全て凍結していた。

 凍結した島には、氷の彫像になった多くの人々の姿。


 北方のバーバリアンであろう。


「通り道にいたから凍らせたのか。先にいたのが悪いんだぞと言いたげな所業、邪悪だなあ」


「マスターがどの口で言ってるんです?」


「俺はセーフだが魔導王はアウトということで……」


 そんなやり取りをしていたら、極北の大地に到着だ。

 大地というか、氷の塊だ。

 それが海上に浮いている。


 極北の大地の空は暗雲でかき曇り、黒い障壁に包まれている。


 この障壁に鉄板はぶち当たるのだが……。


「ほあああああああっ!!」


 前に飛び出した達人からの、嵐を思わせる弱パンチ連打!

 障壁が点滅し、明らかに削られていっている。


『な、なにぃーっ!?』


 叫び声が聞こえた。

 魔導王であろう。


 びっくりしてるびっくりしてる。


 空から突撃してきて、猛烈な勢いで障壁を削っていく相手なんか想定してないだろう。

 しかも俺たちの誰もが魔法を使わない。

 魔力感知も出来なかったはずだ。


「カオルンは神様パワーを得たので、なんか魔力みたいなのが変わったのだ!」


 そういうことらしい。

 さて、俺もチートモードでお手伝いしよう。


「達人、叩いた瞬間にてっぺんがより強く光るぞ。そこが弱点だ」


「なるほど! 情報感謝! セイヤーッ!!」


 飛び上がった達人、ジャンプ大キックからの連打を決め……。


「達人のゲージが一つ埋まりました!」


「うおおおおっ!! 斬空ッヴォイドウェイブ拳!!」


 達人の腕が輝き、そこから光の塊みたいなものが出た。

 そいつはモリモリモリっと障壁に食い込むと、ガガガガガガガッと凄い音がした。

 光り輝く障壁。


 そして、パリーンっと割れて消滅した。


『な、なにぃーっ!?』


 魔導王、めちゃくちゃに驚いてるな。


『なんだ、なんなんだお前たちは!! 僕のゲームの邪魔をするな!』


「ほう、ゲームと来たか。奇遇だな」


 俺は笑った。


「こっちもゲームなんだ。しかも達人つきだぞ」


 コンボの達人が、極北の大地に降り立つのである。



面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 達人の安心感よ もしかしたら致命傷食らってもコイン入れれば復活するんじゃねーのとも錯覚する位に
[一言] 目には目を! ゲームには、ゲームを!
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