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第17話 ドライな人とは当然な

 広場から離れると、追手はやってこなくなったぞ。

 あいつらは、アイナの周りに異分子がいる時に動くらしい。


 俺とルミイがファンらしくない動きをしただけで察知された。

 勘が尖すぎる。


「どうしたもんだろうな」


「どうしましょうか」


 追手を撒いた後、民家の影でコソコソ相談していたら、広場の方で大きな爆発音がした。

 なんだなんだ。


「誰かアイナの命を狙ったんでしょうかね?」


「そうかも知れない。ほら、周りの奴らがみんな広場に集まっていくぞ。……もしかして、どこかで大騒ぎを起こせばアイナの守りを手薄にできたりするか?」


 俺は考えるのだ。

 チュートリアル機能の何が不便かと言うと、こういう選択肢が無数にある状況だと、何を目的にチュートリアルするのかこちらが明確に定める必要がある。

 そしてヘルプ機能はあくまでヘルプなので、漠然とした疑問に回答を与えてくれることはない。


 どれも、俺が明確な意志で決断しないと機能しない。

 なので、今回は俺がきちんと、やるべきことを調べねばならないのだ。


「それにしても、マナビさん凄いモチベーションです。なんでですか? ずーっとやる気なさそうだったのに」


「そうだなあ。アイナってあれ、どう考えても世界を侵食する毒みたいなやつなんだよ。そういうのを描いたエンタメとかに縁がないとピンと来ないだろうけど」


「はあ」


 ルミイは要領を得ない感じだ。

 ということで、俺たちはその辺のベンチに腰掛ける。


 時間はあるので、ちゃんと話をしておこう。


「アイナの能力は無限チャームみたいなのだろ? それは分かってるよね」


「はい。そこはわかりますね。男女関係なく魅了するのは、ドライアドのチャームでは考えられないほどの異常な威力です!」


 植物の精霊ドライアド。

 森の乙女とも言われる存在らしいと、ヘルプ機能で知る。

 それがチャームを司る精霊なのだが、あくまで個人対象の能力らしい。


 なるほど、アイナのチャームは異常だ。


「あのチャームは、世界の魔力を吸い上げて常時展開されてるんだ。つまりアイナがいるだけで世界中の魔力が減ってく」


「ふんふん。でも、魔力は無限なのでは?」


「無限じゃないから、魔法文明の連中は空に浮かぶ魔力の星、エーテリアを作ったんだろう。で、あれから照射される魔力をさらに受け取って栄華を極めたと」


「あ、そうなんですね! ……マナビさん、異世界人なのにどうしてわたしよりも詳しいんですか」


「そりゃあ、ヘルプ機能というカンニングができるからな……。あと、ルミイは辺境で暮らしてたんだろ? 伝聞以外でこの辺りの事情とか知らなそうじゃないか」


「確かにそうでした! わたしの故郷はいいですよー。涼しいトコで、冬は凍えるような寒さですけど、サウナとか釣りとか狩りとか、夏は水浴びが……」


「いいなあいいなあ」


 ルミイと行く、アウトドア!

 魅力的ではないか。

 あわよくば、彼女のもこもこローブを脱いでもらい、またその下の姿を拝みたいものである。


 俺の行動モチベーションは、下心もかなりの割合を占めている……!

 具体的には八割くらい。


「話を戻すけど、アイナが魔力を吸い尽くしたら世界はおかしくなるんじゃないか? それにワンザブロー帝国がアイナの手に落ちたら、今度はルミイのところをチャームしに来るかもしれないだろ。それじゃあ、アウトドアレジャーどころじゃなくなる」


「アウトドアとかいうのがなんだか知らないですけど、確かに困ります! それでマナビさんは頑張ろうとしてるんですね! ……えっ、わたしのために!?」


「そう、ルミイのために……!」


「あのマナビさんが!! じーん」


 あのってなんだ、あのって。

 だが感動してくれているようだから、まあいい。


「とりあえず闇雲にチュートリアルしてみようか。チュートリアルモード! アイナを倒すぞ」


 こうして、チュートリアルが展開された。

 何度も試して実感したんだが、チュートリアル中は時間が経過しない。

 チュートリアルしている俺とルミイもまた、疲労度や空腹度はチュートリアルごとにリセットされる。


 つまり、これは完全にチュートリアル専用の時空なのだ。

 現実には一切関わりがない。

 まあ、精神的にはちょっと疲れるが。


 そしてチュートリアルを何度もやってみた感想だが……。


「あー、こりゃ現状だと無理だね!」


「わたしが一発でチャームされたり、マナビさんがチャームされたりしましたね! 直接触れちゃうと、わたしもマナビさんもダメなんですねえ」


「うむ。今までで最強の敵だな」


 チュートリアルを振り返って、感想を交わす俺たちなのだ。


「ところでマナビさん、チュートリアルを繰り返して気になったことがあるんですけど」


「なんだい」


「アイナがですね。毎回ちょっとずつ違うこと言うじゃないですか。『私だけを愛して!』とか『この世界ならみんな私を見てくれる!』とか『今度は絶対逃さない!』とか」


「おうおう。怖いよねー。なんかサイコって感じがする」


「マナビさんがスーパーにドライなだけだと思うんですけど、あの人、本当は愛情が欲しかったりするのかも知れません」


「そうなの……?」


「ほらー! マナビさんキョトンとするー! ドライすぎるんですよー!」


 ルミイにポコポコ叩かれた。

 はっはっは、こういうのはイチャイチャしているようでとてもいいなあ。


「でもまあ、愛が欲しかろうと、ああいう相手を支配する能力を無制限にばらまくようになっちゃったんだから、無理だろ。俺たちもどうやってやっつけるかに集中した方がいい。あれはもう助からないでしょ」


「ドラーイ!」


 疲労度も空腹度もそれほどではないが、チュートリアルしまくって気持ち的にお腹いっぱいになった俺たち。

 宿泊施設に戻り、休憩しようということになったのだった。


 すると……。

 宿泊施設にやって来ようとする、コソコソとした一団と鉢合わせた。


 それは、ワンザブロー帝国からアイナシティへの使節団だったのである。


面白い!

先が読みたい!

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