第169話 邪神登場からの結成会議
『イヨー兄弟』
「いよう、兄弟」
オクタゴンが空間からにじみ出るように姿を現した。
お互いに手を上げて挨拶をする。
オクタゴン、仮の姿である人間態だが、なんだかツヤツヤしている気がする。
心が満たされているのだな。
「その後ルサルカとはどうだ」
『ラブラブだぞ……。あと千年は清い関係のまま行く』
「すげえなあ。その自制心はどこから来るんだ」
『いいか? 一線を超えたら、例え神であろうともう超える前には戻れないんだ。不退転の決意をせねばそのさきには進めない。俺様はここに注目し、なるべく長い間を初々しいラブラブのまま過ごすと決めたのだ。幸い、神である俺様たちは時間感覚が果てしなく長い……』
「含蓄のある事を言うやつだなあ」
久々の再会を喜び合う。
ルサルカは今日は留守番らしい。
彼岸の地にて、新居を造成しているとか。
「彼女が家作るのか」
『水死者たちの魂を慰める宮殿を作っている。その一角に俺様とルサルカの愛の巣があってな。なんと4LDKだ』
オクタゴンが語る4LDK、アメリカンサイズだからくっそ広いんだけど。
富豪の家かよ。
というか神々が4LDKに住むな。
『いいかね? 彼がオクタゴンか』
『おっ、なんだなんだ。喋るテレビか?』
ここで、ユーリンとオクタゴンが出会った。
「オクタゴンか! ここでやるか!」
身構えるコンボの達人。
「ダーリン、ここでデートしようよ! 色々美味しいもの食べられるらしいじゃん? ほら、それでお腹いっぱいになったらあたしがダーリンの心も満たしてあげる!」
「ひい、たすけてえ」
コンボの達人が顔を出すと、エリイも現れるから賑やかになるなあ。
『ちょっと待ってくれ。情報量が多すぎて俺様何も理解できないぞ』
「一度に情報をぶつけすぎたな」
ということで、アメリカンダイナーみたいなところで食事をしながら今後の方針について話し合うことにする。
実質、これが世界の命運を決める会議なのだ。
テーブルの上には、大量のピザとフライドポテトと揚げたタコスとチキンナゲットが乗っている。
そして各人の前に、ミニバケツサイズのコーラ。
世界を救うための会議と、晩餐会。
ずいぶんジャンクだな。
ここに、住宅造成中だったルサルカも駆けつけた。
思ったより楽しそうな会議になるということで、オクタゴンが呼んだらしい。
愛だなあ。
儚げな金髪の超絶美少女は空間から滲み出すように現れ、オクタゴンの隣にピッタリくっついて座った。
そして美味しそうに、チキンナゲットをマスタードソースで食べ始めるのである。
「ルサルカ様があんなにキラキラして……。なんか、あたいは涙出てきちゃうねえ」
ナルカが拝んでいる。
さて、俺とルミイとカオルンとアカネルとナルカ、オクタゴンとルサルカ、コンボの達人とエリイ、ユーリン。
このメンツの中で、まずは音頭を取る者が必要だ。
ここは俺がやらねばなるまい。
他はコミュニケーションに難があるか、コミュ力一番高そうなエリイもギャルだしな。
「じゃあ諸君!! ここに世界を救うため集まったドリームチームの、結成式を行う! 各々、コーラの入ったプラスチックコップを手にとって。はい、それでは皆さん、今後の戦いの必勝を願って! かんぱーい!!」
「「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」」」
まず、ルミイが猛然とタコスを食べ始めた。
野菜が入っているからヘルシーなので、どれだけ食べてもいいと言っている。
だがカロリーは確実に摂取してるから、後で夜の運動をしよう、グヘヘ。
「アカネル、食べながらでいいんでヘルプ機能で表示して」
「はい。当機能は常識的な食事で大丈夫ですので、並行して行動可能です」
ヘルプ機能がテーブルの上に表示される。
360度方向に見える、円形のディスプレイだな。
「こちらが魔導王です。共有します。現在、北方から降りてきた蛮族の大軍と一人で戦っています」
「ゴーレムあんなにたくさん作ってたのに?」
「楽しんでいるみたいですね。音声を拾います」
『集団が徐々に絶望に染まる様は堪らないなあ。愉悦愉悦。彼らが戦いをやめないように、彼らの妻子を転送してこちらで人質にしておいた甲斐があったよ。少しずつ人質が殺される様子を見せてもっと絶望させてやろう』
「うわーっ」
会場の俺たちドン引き。
こりゃあひでえーっ。
魔導王、ゲロ以下の品性の持ち主だぜーっ。
これは飯が不味くなるということで、魔導王の中継はやめた。
「これは分かりあえないな。殲滅決定」
『ああ。殺そう』
「理想的な敵キャラムーブじゃないか」
俺、オクタゴン、コンボの達人の意見が一致する。
魔導王、本当に自分の楽しみのために世界を陥れ、仕上げとしてぶっ壊そうとしていると判明。
分かりやすい絶対悪でした。
本当にありがとうございました。
『だが、私はここにいる者たちが力を合わせれば魔導王にも勝てると信じている』
ユーリンが真面目な事を言った。
彼は食べたり飲んだりできないので、安置された鏡からずっとこちらを覗いているばかりだ。
これを聞いて、女子たちがうんうん頷く。
俺たちを信じているのである。
これは胸熱。
ちなみに俺たちは。
「そりゃあ勝つだろう」
『数の暴力で押しつぶせるな』
「俺が一人で倒してしまっても構わんのだろう?」
全員が、タイマンですら勝つ気満々なのであった。
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