第154話 キャンプからの死の騎士
街から水をもらって、外でキャンプをする。
街の人たちが我々を怖がって入れてくれないので、仕方ないのだ。
温かい布団とお風呂が恋しい。
二度目のイースマス以来入ってないもんなあ。
俺が遠い目をしていたら、向こうでお湯を沸かしていたルミイがやってくる。
「お湯で体拭けますよー」
「行くのだー」
「汗を流したいですもんね」
「よし、さっぱりしようじゃないか」
女子たちがワイワイ向かっていった。
俺も後をついていく。
眼福であった!!
めっちゃ拭いてもらった。
すごく拭いてあげた。
いやあ!
野宿っていいもんですねえ!!
「マナビがつやつやしてるのだー」
「マナビさんはえっちを感じるとすごく喜ぶんですよ」
「我がマスターながら大変わかりやすくて助かります」
「こんな単純な性格の男なのに、色々な国の人を救ってきたし、化け物みたいな連中からも恐れられているって言うんだからねえ。人は見た目と普段の言動じゃわからないね」
そうだろうそうだろう。
成り行きで、世界を旅してきた。
七大帝国のうち、五つまで制覇して今は六つ目だぞ。
「それでマナビさん、今回の目的は果たしましたね! 鞍手に入れましたし」
「ああ……と言いたいところだが、目的は本来は違うものでな。異世界召喚ってそもそも何なんだ? といのを調べたい。俺にとってのルーツ探しみたいなもんだな」
「ははあ、たしかにマスターがこの世界に現れなければ、こんなとんでもない状況にはなっていなかったでしょうし、当機能も誕生していなかったでしょう」
「ってことは、マナビ。あんた、帝都で色々調べ物をしようってんだね? 前段階の街でこの有様だよ? 中に入れるとは思えないねえ」
「そりゃあもう、突破するに決まってるじゃないか」
女子たちは、やっぱり、という顔になった。
ラバーは大変やる気で、任せてください、と言わんばかりに鼻息も荒い。
「おー、よしよし。お前はかわいいなあ」
ルサルカラバーをもりもり撫でる俺。
動物がいると心が休まるなあ。
アンデッドだけど。
「それでマナビさん! 盛り上がったところで!」
「そ、外で!?」
ルミイがぐいぐいっと来たので、俺は圧倒された。
ナルカが他二名の肩をポンと叩き、スッと女子用テントに下がっていった。
ガードが硬い!
「よし、三人がかりでマナビをやっつけるのだ!」
「これなら当機能も負ける気がしませんね……!」
「みんなでかかりましょう! それー!」
「来るがいい!」
ということで、たいへん盛り上がった。
流石に1対3だと分が悪かった……!
俺、賢者モードになって敗北である。
カオルンとアカネルは倒した(比喩)んだが……。
「むっふっふ、わたしの勝ちです!」
俺の上で勝ち誇るルミイなのだった。
しかしまあ、見上げると本当にでかいなあ……。
朝である。
俺たち四人は遅くなってからノロノロ起きてきた。
昨夜の運動のお陰で、めちゃくちゃ眠れてしまったのだ。
「昨夜は頑張ってたのかい? あたいはすぐ寝ちゃったからねえ」
一度寝ると、危機が迫らない限り定時まで絶対起きないナルカなのだ。
しかし、久々に励むと心に栄養がみなぎるな。
元気いっぱいになった俺たちは、またバギーと馬で旅立つのである。
ヘルプ機能によって、地図は頭上に表示できるから便利便利。
ルートも赤い線で表現され、通過した後は黒くなるから分かりやすいぞ。
「あっ、マスター! 表示に敵対反応が!」
「おっ! ほんとだ。すごい速度で飛んでくるのがいる」
緑色の馬に乗った騎士が、魔物みたいなのを引き連れて飛んでくるではないか。
「死の騎士って表示されてますね」
「分かりやすくヤバいヤツだし、いきなり第四の騎士じゃん」
なんか接触したらいきなり仲間が死にそうだったので、俺はチュートリアルした。
連れて行くのはナルカである。
死の専門家なら彼女だからだ。
「どうだ? 死の線見える?」
「見えるねえ。大したやつじゃないよ。能力は……へえ。あたいに向かって死の線を向けてくるじゃないかい。あいつの周りには、目に見えない大きな虫みたいな奴らが飛び回ってるよ」
「ほうほう。ナルカが見て、そいつらの能力はどうだ?」
「腕が鎌になってる。死の騎士が見た死の線を、あの虫たちで切って殺すんだね」
「なるほど、そういう仕組だったか。じゃあ、任せた」
「任されたよ」
チュートリアルの中、マントから大量のダーツを取り出すナルカ。
彼女は飛来する不可視の虫たちを、的確にダーツで撃ち落としていくのだ。
途中、ダーツが尽きたらダッシュで回収に向かい、拾ってから再び投擲する。
虫たちは俺に全く近づくことができないでいる。
死の騎士はついにじれて、自らとどめを刺すべく向かってきた。
俺は悠然と、ラバーの上で腕組みして待つだけだ。
ナルカの投げた投擲斧が、死の騎士が従えている魔物を叩き切った。
死の騎士が振り返った時にはもう遅い。
五本のダーツが死の騎士の頭、首、背中に次々に刺さった。
落馬して動かなくなる死の騎士。
「なんだい、拍子抜けだねえ。それに、死の騎士っていうから、相手に死を与えるんだろう? それがこんな虫だったなんて」
「本来は違うんだろうけどな」
「ええっ?」
「俺のチートモードで、こいつが死を撒き散らす能力を、不可視の虫であると規定した。だから物理的に撃ち落とせるようになったんだ」
「はあー。何度聞いても、意味の分からない能力だねえ……」
ナルカは呆れ半分、感心半分。
だがまあ、彼女一人で死の騎士を圧倒できることは分かった。
一応だが、破壊してしまったらまずかろうしな。倒す以外のやり方も考えねば。
まずはいったん、戻ろう戻ろう。
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