第148話 眷属と戦闘と超必殺技
黒竜は、なんらかの手段で状況が変化していると察知したんだろう。
突然、黒い瘴気のカタマリみたいなのが三つ、こっちに飛んできた。
「ドラゴニュートだ!」
「気をつけろ!」
双子が叫ぶ。
彼らの言う通り、瘴気のカタマリは地面に落ちると同時に形を成した。
人型のドラゴン、みたいなのが三体現れる。
こいつらが、ルインマスターの眷属というわけだ。
形を成したドラゴニュートは、俺しか見ない。
『主が命じた。邪魔者を倒せと』
『仲間が巻き込まれることを恐れ、力を振るわぬ者を倒せと』
『あの者が力を発揮できぬうちに倒せと』
「ほう、よく覚えていたなあ」
俺がルインマスターと相対した時、勝てるが、仲間が全滅するという結果をチュートリアルで導き出した。
これを黒竜が覚えていたんだろう。
で、俺が良からぬ企みを進め、ルインマスターを追い出そうとしている事を察知した。
アカシックレコードを知るドラゴンだ。
それくらいの事、分かってもおかしくはない。
そこで派遣してきたドラゴニュート三体。
これで俺を仕留められると踏んだか。
「何言ってやがる! うりゃあ!!」「うおおー!!」「死にさらせー!!」
空気を読まず、飛びかかってくるバーバリアンたち!
こいつらもかなり強いんだがなあ。
しかし、ドラゴニュートには勝てないのでは?
『笑止』「ウグワーッ!!」
あっ、一人が腹を貫かれた!
マンガとかでよく見るやられ方だ。
『その程度の力で』「ウグワーッ!!」
おっ、今度は迎撃の踵落としで、地面にめり込んでいる。
『我らに抗おうなど』「ウグワーッ!!」
最後の一人は頭を掴まれて、ぎゅっと握りつぶされ……そうなところで、俺はそのドラゴニュートをネクタイブレードでペイっと斬った。
『ウグワーッ!?』
縦に真っ二つになって死ぬドラゴニュート。
『は?』『は?』
愕然としながら、残る二体のドラゴニュートが振り返った。
「不思議か?」
俺は彼らに向かって不敵に笑ってみせた。
「お前らドラゴニュートは、喉のこのあたりに逆鱗があってな。そこを中心にした線をこうやって切ると一撃で死ぬ」
俺は丁寧に解説してやった。
あからさまに動揺するドラゴニュート。
『バカな』
『そんな事実はない。でたらめだ』
「おう、さっきまでは無かった。だが、今はある」
俺はチートモードを使ったのだ。
世界は改変された。
ぶっ倒されたバーバリアンは、既にエルフチームが助けに向かっている。
ドラゴニュートに背中を向けて、彼らを癒やす形になるが……。
黒竜の眷属たちは、俺から目を逸らすことなどできないのだ。
『話が違う』
『主は、この男が何なのかを把握できていない』
そりゃあ、手の内を晒さなかったからな。
『作戦行動を行う。殲滅を開始……』
そこに、真・カオルンが飛び込んできた。
「カオルンもいるのだ! それそれ!」
回転しながら、銀色の竜巻みたいになったカオルン。
真っ向からドラゴニュートを弾き飛ばす。
『ウグワーッ!? な、なんだこれは……!!』
「ルインマスターからすると誤差くらいの強さだったんだろうが、ドラゴニュートにはちょっと荷が重いだろ、うちの最強の嫁は」
カオルンとドラゴニュートは飛び上がり、空中戦を開始する。
だがまあ、カオルンの方が速く、鋭い。
徐々にドラゴニュートは押し負けて、ついにカオルン優勢に。
そうなれば決着は一瞬だ。
『ウ……ウグワーッ!!』
断末魔が響き、ドラゴニュートがバラバラになって落下してきた。
それと同時に、静かに進行していた戦いがある。
禍々しい形のナイフを構えたナルカと、ドラゴニュートの戦いである。
当たれば必殺のドラゴニュート。
だが、その動きを、ナルカは死の魔眼で見切る。
「あたいの目は、致命的な攻撃ってのも見えるんでね。つまり、あたいの死を回避するように動けばいいってことさ」
鮮やかに回避しながら、ナルカはナイフでドラゴニュートを切り刻む。
本来ならば、黒竜の眷属の鱗を貫くはずがない素材だ。
だが、ナルカに見えるのは、相手を殺せるポイント。
そこを突けば、どんなものであろうと相手を殺すことが出来る。
『話が違う……!! こんなことが……。偉大なる黒竜の眷属たる我らが、このように……』
「相性っつってな。単体のスペックのみならお前らのほうが強いだろうが、タイマンだったり、今みたいに精神のバランスを崩してると、お前らでも人間に負けるのよ。あと、カオルンは普通にお前らより強い」
『そんな……』
ドラゴニュートが絶望したような顔をした。
その首がスポーンと飛んだ。
ナルカが決めたのだ。
「ふうーっ……。とんでもない相手だったねえ……。一発もらったら死ぬとか、そんなの勘弁してほしいよ。あたいはまだ生身だってのに」
「当たらなければどうということはないだろう」
「知ったふうに言うねえマナビ。というかあんたが一番おかしいよ。なんで一撃で倒してるんだい?」
「俺に背を向けたのでサラッと一発で」
チートモードで軽く練習したけどな。
黒竜ならともかく、その眷属は相手にならないでしょ。
さて、ここで、アカネルとルミイから声が上がった。
「コンボの達人、ルインマスターとの交戦を開始しました!」
「精霊さんが言ってますよ! なんか凄い力みたいなのがあの人間から溢れてくるって!」
「おっ、来るぞ、超必殺技!」
面白い!
先が読みたい!
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