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第145話 再会とキャンプと今後の方針

「エリイじゃないか。ルミイと合流したのかい」


「無事だったんだね。まあ無事だとは思ってたけど」


「兄さんたちじゃーん。っていや、妹心配しろよ!」


 双子と彼らが率いるバーバリアン軍団と合流した。

 早速エリイは、双子とわいわい騒いでいる。

 どうやら、凍土の王国勢は二手に分かれていたらしい。


 バルクはひょっとすると、ドラゴンの方に行っているのかもな。


「父もバカではないので、ドラゴンに仕掛けはしないだろう」


「マナビが連れてきた、コンボの達人とやらの戦いを見ているかも知れないな」


「ラッキー!」


 エリイが喜んだ。


「再会したら絶対にめんどくさいことになるじゃん! ママはほら、あたしが恋を求めて旅することに賛成だったけど、パパったら心配性だから」


 お父さんは娘に対しては常に心配性なものである。

 ちなみに、エリイがやって来たら、バーバリアンの男たちの士気がうわーっと上がった。

 ルミイもいるのでさらに上がった。


 二人の姫は、凍土の王国のアイドルなんだなあ。

 なお、未婚男性のほとんどが戦死したので、エリイとしてはお眼鏡に叶う男はもういないらしい。


「ドラゴンにやられたの? 超もったいないんだけど……。磨けば光る男は絶対いたし」


 エリイ、なかなか優しいことを言う。


「未婚を焦らせて死地に追いやる文化だもんな、凍土の王国」


「それで生き残ることができれば、彼が優れた戦士であることが分かるからね」


「なかなか合理的なんだよ」


 双子がうんうん頷いていた。

 そういえばこいつら独身だったな。


 あまりに超越し過ぎてて、地元の女子では相手にならないとかなんとか。

 相手になるレベルがいないだろ。


 大軍勢になった俺たちは、のしのしと森の中を進むのだ。

 エリイが案内を務める。


 途中で襲ってくる、群れからはぐれた魔獣などはサクサクと片付けた。

 数のパワーでどうにかできる。

 楽ちんだ。


「マナビ。僕らが妻をまだ見つけていない理由だが」


「バルガイヤーの教えに、血が遠い相手と番うほど、強い子が生まれるというものがあるんだ」


「あー、ありそう」


 実際、動物なんかも血統書の付いた純血よりも、雑種の方が生命力が強いらしい。

 人間も同じだ。

 人種として離れた相手ほど、強い子が生まれやすい。


 繁栄をモットーとするバルガイヤー、月の女神からすると、強いやつほど遠いところでパートナーを見つけるのがベストということになる。


「じゃあ、今度は双子の嫁さんを探してやるか……」


「マナビさんは本当に世話好きですよねえ」


 ルミイが感心した。


「俺は身内に優しいんだ。知り合いの幸せのためならいくらでも頑張るぞ。それにな、人生は目標みたいなのがたくさんあったほうが張り合いが出る。俺は今のところ、これをやらなきゃダメだという目標がないのだ。だから自主的にそういうのを作ってるんだぞ」


 異世界召喚した帝国は滅ぼしてしまったし、俺に使命を与えてくる存在はない。

 なので、俺は俺に使命を課すのである。


「そう聞くとなんかカッコいいのだ!」


「だからマスター、望んで困難に首を突っ込んでいくんですねえ……」


「難儀な男だねえ。だけど、お陰であたいが助けられたんだけど」


 そうだろうそうだろう。

 そうこうしている内に、フィフスエレの生き残りが逃げ込んでいるキャンプに到着した。


 まさしくキャンプである。

 魔獣たちが警戒しており、そのリーダーらしき見覚えのあるマンティコアと遭遇した。


『止まれ! ここから先に行けると思うな蛮族ども!!』


「俺だ、俺俺」


 俺がルサルカラバーの背中から手を振ると、マンティコアがきょとんとした。

 そして、呆れた顔になる。


『なんだ、よりによってお前か。お前があの者たちを傷つけようと言うなら、わしは立ちふさがるぞ』


「その意志はない。保護しに来た。数少ない生き残りだろ。人間が減り過ぎたらいかん」


 俺がマンティコアと知り合いだったので、エリイや他のバーバリアンたちもびっくりしたらしい。

 なお、ついてきたアビサルワンズたちは、さもありなん、と全く動揺していなかった。


「あの方は我らが神の兄弟分ですからね。何があっても驚きません」


「魔獣にまで顔がきくとは、さすがはマナビ様。彼を兄弟とした我らが大いなるオクタゴンは偉大」


「「「「「「「「「いあ、いあ、おくたごん」」」」」」」」」


 アビサルワンズたちの理解が深い。

 そして最後はオクタゴン凄いにつなげるのも、信仰が篤くていい。


『しかし、大勢過ぎる。キャンプにはあまり食料がない。自前で用意しろ。そこの男と、エリイと女たちだけついてこい』


 そういうことになった。

 双子は余裕があるので、「何かあったら呼んでくれ」「すぐに駆けつけるよ」と二つ返事。

 バーバリアンたちは、戦いがなかったので拍子抜けしたようだ。


 なに、どうせドラゴンの眷属とか出てくる。

 戦う機会はいくらでもあるぞ。


 キャンプの奥には、何匹もの魔獣と、それを従えた元魔法使いたちがいた。

 彼らは皆、魔獣と絆を交わしたお陰で裏切られなかったのだろう。

 やっぱり信頼関係は大事だよな。


『客人か。マンティコアが交戦の必要なしと認めたならば、味方だ。迎えよう。私は当キャンプの責任者を務める、フィフス・シーだ』


 ローブに三角帽子で、顔が見えないやつがやって来た。

 あ、こいつ、シクスゼクスに行く前に出会った、国境警備の責任者じゃん。


 今は松葉杖をついて、よろよろと歩いている。


「俺だ俺。久々だな。怪我しているのか」


『かつてマンティコアを退けたものと、ルミイ姫か。了解した。敵意は無いものと判断する。私のダメージについては問題ない。ピコル隊員を助ける際に負った負傷だ。現在、魔力の星の喪失により我々は魔法を使えない。そのために回復が困難な状況にあるだけだ』


「なるほどな。ルミイ、回復頼む」


「はいはーい。ドライアド、手を貸して。彼の傷を癒やしてあげて」


 バギーから飛び出てきたルミイが、むにゃむにゃと呪文を唱える。

 すると、フィフスシーの怪我が一瞬で全快した。


『むっ、感謝する』


「あーっ!! 侵入者の皆さん!!」


 メガネっ娘の魔法使い、ピコルも来たぞ。

 彼女はまずマンティコアに駆け寄り、怪我がないかをペタペタ触って確認した。


『よすのだ、くすぐったい!』


 まんざらでもなさそうなマンティコア。

 そしてすぐにピコルはこっちに来た。


「皆さんだったんですねえ。あの時はどうも! モヤシって言われたのを気にしてた皇帝は、ドラゴンを呼び出して真っ先に食べられちゃいました」


「まさにモヤシな最後じゃん。一度も会うこと無かったなあ」


 ピコルも、俺たちと再会して一言目がそれか。


「今の私たちは、ドラゴンの眷属による襲撃を警戒してるとこです。けが人も多くて移動できないから困ってたんですよ」


「なるほど、じゃあ、それをなんとかするのが次のミッションだな」


 俺は状況を理解したのだった。

 やるべきことをまとめて行こうじゃないか。

面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] モヤシを食べるだなんてあのドラゴンは草食だったってコト…? 冗談はさて置き、命令されてムカついたのだろうか
[一言] も…モヤシ皇帝…
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