表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/196

第132話 旅の途中とロマンとママ力

 たくさんの荷馬車が用意され、一斉にフィフスエレとの国境を目指す。

 こんな集団と一緒に行動するのは初めてだなあ。


 護衛とは言ったけれど、彼らルサルカ教団にも自衛の能力はある。

 アンデッドがたくさんいるし、夜になれば司祭のレッサーヴァンパイア、ドミニクが起きてくる。

 こいつが強いらしく、夜間ならガガンともいい勝負できるようなのだ。


 夜はおまかせでいいな。


「さすがにガツガツしている当機能も、馬車の中はどうかと思います。もっとロマンチックなところに到着したら致しましょう」


「アカネルはいきなり何を言っているんだ。あ、ナニか」


 単純明快だった。

 奥さんたちの最後発であるアカネルは、出遅れを取り返したい。

 だが、最初の夜はちゃんとしたお宿を使いたい。


 複雑な機械……乙女心である。

 もうこの人、機械じゃないでしょ。

 この間聞いてみたら、「当機能、普通にマスターの赤ちゃんを産めますからね! 任意のタイミングで妊娠できますから!」


 なんてとんでもないことを言っていた。

 恐ろしい女だ。


 だが、俺の旅が続く間は自重するらしい。

 身重になったら旅についてこれないもんな。


「カオルンはどこでもいいのだ! マナビ、したいのだ?」


「わたしもそんなに気にしないですねー。あ、じゃあカオルンといっぺんにしちゃいます? マナビさんとすると結構疲れてお腹減るんですよねえ」


「うわーっ、二人共積極的に!!」


「むきーっ」


 アカネルも暴れる。

 俺に割り当てられた荷馬車は大変賑やかなのである。


 ナルカが御者をしているのだが、車内の騒ぎを振り返って一言。


「みんな大事な戦力なんだから、しばらく大人しくしててもらえないかい? あたしが頼める立場じゃないってのは分かってるんだけどさ、ほら、信者の命が掛かってるから……」


「アッハイ」


 大人しくなる俺とルミイとアカネル。

 ナルカは間違いなく、とっても真面目なのである。


 なお、カオルンは特に大人しくならない。


「なるほど、カオルンの力が必要なのだなー。じゃあ、カオルンは早く寝て早起きして、ドミニクの手伝いをするのだ!」


 そう言うなり、荷物から毛布を取り出してくるまり、ぐうぐうと眠り始めてしまった。

 行動が早い!


「物わかりがよくて助かるね……! 頼むよ、みんな」


 荷馬車はルサルカ教団の持ち出しだし、俺たちがありつく食事もルサルカ教団のものだ。

 つまり、俺たちは宿と飯で雇われているのだから、ここは雇い主の頼みを聞いておく方が良かろう。


 俺の場合、ナルカだから言う事を聞くというのもある……。

 下心があるからだぞ。

 一発目でチュートリアル世界に入り込める女子。明らかに相性バッチリ。


 仲良く(意味深)なりたい。

 アカネルとアカシックレコードの前で、これでラストと告げてしまったので、最後のチャンスでもある。

 我ながら、まさかたくさんのヒロインに囲まれることになるとはなあ。


 うんうん。


「マナビさんがまたエッチなことを考えてますよ。わたしには分かりますからねー」


「マスターは常にエッチなことばかり考えてません?」


 俺のことをよく理解している二人なのだ。

 さてさて、日暮れころにフィフスエレとの国境に到着した。


 相変わらず、見渡す限りの森だ。

 ここに夜間入り込むのは危なかろうということで、国境線にて夜を明かすことになる。


 焚き火で肉を焼いたり、スープを作ったりしてみんなで飲み食いするのだ。

 ウトウトしているカオルンを起こして、飯にやってきた。


 暗くなってきたので、ドミニク司祭も棺から出てきたようだ。


「やあ皆さん、昼間は護衛ありがとうございました」


「セブンセンスは平和になったから、何もなかったけどな」


「それもまた、皆さんのお陰です。さらにはこの護衛まで引き受けていただき、本当にありがたい限りです」


 俺が知る創作のヴァンパイアを見回しても、ドミニク司祭ほど腰が低くて人間できてる人はいないな……。

 彼と、今後の予定について話し合う。


 明日の朝から森を超えて、フィフスエレを横断する。

 そこでバーバリアンたちと合流し、一旦シクスゼクスまで行ってしまう、と。


 ルサルカ・バーバリアン・エルフ連合軍なら、普通にシクスゼクスの魔族兵団より強いらしい。

 シクスゼクスを蹂躙しながらイースマスに到着したら、そこにルサルカ教団の街を建設すると。


 バーバリアンも補給を行い、アビサルワンズの有志が戦力に加わる。

 これで再びシクスゼクスを横断してフィフスエレ攻撃を行う。


 こういう作戦だ。

 あちらはドラゴンを召喚している。

 しっかり体勢を整えねば戦えまい、という話なのだ。


 ちなみに、俺はチュートリアルを発動すればまあ勝てるだろうと踏んでいる。

 それでも、バーバリアン王バルクこと俺のお義父さんがそれを許さないわけだ。


「パパも頑固ですからねー。マナビさんに全部頼っちゃったら負けだーって思ってるんじゃないかなあ」


「やはり。そんな感じの人だよなあれは」


「ママは全然オッケーって言ってるんですけどねえ」


「やっぱりな。そんな感じだよなお義母さんは。たまーに俺を誘惑してくる……」


「ママは男心を惑わしてきますからね! マナビさんにはわたしがいますからね!」


「うむうむ……。ルミイがベストマッチだと思います。あと、俺は鍛錬がまだ足りないので二人がかりは勘弁して下さい」


 俺もルミイのママこと、ルリファレラさんはちょっと怖いからな!

 精力的に圧倒されてしまいそうだ。


 こっくりこっくりするカオルンに、スープを飲ませたりする。


「美味しいのだ~」


「カオルン、寝ないでちゃんと食べるんだ。食べたら寝ていい」


「美味しいのだ~」


「あー、こぼれた」


「マナビさんがカオルンのママみたいになってますね」


「マスターの意外な一面ですね……! カオルンと一夜を過ごして母性愛に目覚めてしまった……?」


「マナビさんママ……略してママビさんですね! いいですねー。わたしも甘やかされたーい」


 好き勝手言うなあ君たちは。


「マナビ、小さい子に食べさせるやり方はこうだよ! よく見てな!」


 ここでナルカ。

 テキパキとした動作で、半分寝ているカオルンに見事にスープを全部平らげさせ、そのまま抱っこして馬車に連れて行ってしまった。

 あれはかなりレベルの高いママ動作である。


 戻ってきた彼女を、俺たち三人で称える。


「凄い。ママ力が高い」


「ナルカママですね! 略してママカです!」


「母性愛が強い。あまりにも強力なライバルです!」


「うるさいよあんたたち!?」

面白い!

先が読みたい!

など思っていただけましたら、下にある☆を増やしたりして応援してくださいますと、作者が大変喜びます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うーむ… どうなんでしょうか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ