第131話 朝と今後とキスマーク
朝。
つやっつやになって俺の腕を抱きながらカオルンが現れたので、流石に鈍めであるうちのヒロインたちも気づいたようだった。
「カオルン、なんだかすっごくラブラブになってませんか? わたし、カオルンはもっとドライだと思ってたんですけど。それに血色すごく良くないです? 前はもっと白かったのに」
「明らかに表情が違いますね……。当機能のライブラリを検索すると、そんな顔のカオルンは今までいませんでしたから」
「そうなのだ? カオルンはやっと愛に目覚めたところなのだ。これからもずーっと、マナビとラブラブするのだー」
語尾にハートがついてそうなカオルンである。
ルミイとアカネルに戦慄が走る──!!
「すっごいライバルが誕生してしまいました! 恐ろしい恐ろしい……。今夜はマナビさんとラブラブしてカオルンにカウンターしないと……」
「待ってルミイ! 次は当機能の番です!! 順番を飛び越えるのは徹底抗戦も辞しませんよフシャーッ!!」
「うーわー」
ルミイがアカネルにもみもみされて倒された。
うーん、肉弾戦だとうちの奥さんたちでも最弱なのかルミイ……!
カオルンもアカネルの言い分を聞いて、これは可哀想だと思ったらしい。
「そっか、アカネルはまだだったのだなー。いいのだ。アカネルの番が終わるまでは、カオルンは大人しく待っていてあげるのだー」
俺から離れて、朝食の席についた。
んで、俺に投げキッスとかしてくる。
すっごい変化っぷりだ。ラブラブを隠そうともしない。
アホカワイイ系のルミイと、余裕のあるラブラブ奥様なカオルンと、割りとヤンデレみのあるアカネル。
三者三様である。
向かいにカオルン、右にルミイ、左にアカネルという形で座って飯を食うことにした。
ナルカがカオルンの横で、俺たちの纏う妙な空気に戸惑っているようだ。
「何かあったのかい? いや、あんたたちだから何があってもおかしくないけどさ」
「何もないのだ! ううん、カオルンの人生の中では一番大きいイベントがあったのだー。むふふ」
カオルン、襟元をめくって首筋のキスマークを見せつける。
「あー」
納得するナルカ。
ハッとするアカネルが、俺のあちこちを見た。
「よく見たらたくさんマーキングが! きーっ」
「落ち着けアカネル。牛乳飲んで落ち着こうな、セロトニンな」
「ふーっ、ふーっ……ごくごく」
牛乳を飲ませたら、アカネルが静かになった。
ルミイは飯を食っている間、飯に完全集中するので平和である。
今日も三人前食った。
「落ち着いたようだから話をするけどさ。あたいらルサルカ教団は、あんたらに護衛してもらうことになったんだ」
「ほう、そうなのか」
ナルカがいきなりそんな事を言ったが、意外な話ではない。
昨夜、オクタゴンもルサルカを口説き、なんか色々あったようなのである。
多分、あいつはまだ手を出していない。
性根がナードなので、もっとちゃんと親しくなってからステディな関係に……とか考えているであろう。
草食系邪神だ。
その第一弾として、ルサルカをイースマスの街に招いたに違いない。
「そんな感じ?」
ナルカが驚いた。
目を丸くするってこのことだな。
「そうだよ。よく分かるねえ……。あの神と仲良くしているだけあるよ。オクタゴン様は、海と彼岸の神なんだろう? 死そのものはルサルカ様が。死後の世界はオクタゴン様が司っているようだよ。だから、二人は本当に相性がいいみたいなのさ」
千年前にはいなかったって、ルサルカ様が仰ってたけどねえ……。
とかナルカがぶつぶつ言っている。
ルサルカ教団はフィフスエレ帝国を横断し、シクスゼクスも横断してイースマスに向かう。
ここの護衛みたいなのを俺にやってほしいというわけだ。
よしきた。
フィフスエレに行く予定もあったし、いろいろついでの仕事も済ませちゃおう。
それにしても、オクタゴン、思った以上にルサルカと相性がいいな。
これ、オクタゴンが奥手なだけで、ルサルカはいつでもウェルカム態勢なんじゃないか?
この間声を聞いた感じだと、ルサルカも奥手っぽいので、二人の仲は自然に任せていると、百年経っても進展しなさそうだ。
「イースマスについたら俺がひと肌脱いで、神々をメイクラブさせるとするか!!」
「マスター、本当に友達の幸福のためには全力を尽くしますよねえ。そこがいいところなんですけど」
「うんうん、マナビはかっこいいのだ!」
わいわいと奥さんたちから喝采が飛んだ。
俺がいい気分になりながら牛乳を飲んでいると、でかいのが来た。
ガガンである。
憑き物が落ちた晴れやかな顔をしている。
隣にはつやつやしているアリスティアがいる。
昨晩お楽しみしたな!!
彼らは俺たちの隣のテーブルを使うことになった。
「やったなガガン」
「ああ、やった……。オレは今、世界で一番幸せだ……」
ガガンがぽーっとしている。
ちょっと眠そうでもある。
「明け方までその、共同作業してしまいました……。わたくしともあろうものが……」
アリスティアはそんな事を言うが、つやっつやである。
相性めちゃくちゃ良かったらしい。
どっちも同じ神の信者だし、アリスティアにとってのガガンは、孤立無援みたいな状況だった自分を救うため、塀の外から現れたヒーローだもんな。
ここはもう何の心配もいるまい。
末永く爆発して欲しい。
「これからガガンはどうする? 残るんだろ?」
「ああ。アリスティアを支えて行きたい。もしかすると、彼女が次の法皇になるかも知れないんだ」
まあ確定だろう。
光輝神アクシスにして、蛮神バルガイヤーと直接おしゃべりした聖女である。
それに、伴侶はバルガイヤーの加護が篤い救国の英雄。
これ以上の人材はいないであろう。
「じゃあ、ガガンとはここでお別れか、寂しくなるな」
「なあに、兄弟! この世界は空と大地で繋がってる。天変地異でも起きてこれがバラバラにならない限り、オレたちはずっと兄弟だ」
「おう! なんかフラグみたいなセリフでちょっと不安になったが、概ね同意だぜ」
俺とガガンは拳を打ち合わせた。
そうすると、俺がアカネルのところに身を乗り出すことになるのだが、彼女はしめた! とばかりに乗り出した俺をむぎゅーっと抱きしめてくるのだ。
「ウグワーッ!! アカネル! 体勢! 俺の体勢が!!」
「離しません! 当機能は離しませんよー!!」
こうして、俺たちはセブンセンスから旅立つことになる。
我が事ながら、生き急いでいるようなペースなのだった。
面白い!
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