第122話 熱戦・レスバ・神バトル
戦神の領域で、本格的に勝負をするのである。
慈愛神の領域と鍛冶神の領域は中立であるため、二つ合わせると他の全ての神々の領域に接している。
問題なく戦神の領域に到着。
信者が総出で出迎えてくれた。
なんと、ちょっと離れたところには光輝神の軍勢みたいなのもいる。
今のところ、セブンセンスで交戦主義を唱える二大巨頭というわけだ。
戦神の最高司祭みたいなのが、何やらわあわあとお題目を唱えてくる。
「信者レベルでは話にならんので、戦神そのものに来てもらいたい。どうせあんたを倒したところで、別の信者が最高司祭になって戦いを継続するだろ」
俺が告げたら、最高司祭は顔を真赤にして、何かわあわあ叫んだ。
開戦してしまったらしい。
光輝神側では、聖女アリスティアが顔を曇らせている。
あれって本当は戦いたくはない系の表情じゃん。
不幸な過去を背負った美少女で、世界に必要される力を持ち、しかし自分の意志に反して戦わねばならないとか。
ヒロインかよ。
「うちのヒロインはルミイとカオルンとアカネルだからなー。あ、ナルカもそのうち」
「そうでしょうそうでしょう。わたしこそヒロイン筆頭なのです」
ルミイ、大変自己肯定感が強い。
カオルン、既に戦神の軍勢と殴り合い始めていて聞いてない。
アカネル、ニヤニヤして嬉しそうである。本当に機械なのかね君は。なんか体も柔らかいし感情表現めちゃくちゃ豊かだし。
ナルカはきょとんとしていた。
さもありなん。
まだ出会って4日くらいだからね。
さて、ガガンだが、スッキリした顔で戻ってきた後、戦神の信者たちをバカスカ軽快にぶっ飛ばす。
時折、アリスティアを気にしている。
光輝神の聖女も、ガガンを見て驚いた顔をしているな。
お互いをはっきり認識しているのだ。
「聖女アリスティア! オレは! この戦いを終わらせるぞ!!」
おお、堂々と宣言した。
「戦いは……神の思し召しです……!」
悲しそうにアリスティアが告げる。
「わたくしの気持ちでは、何も変わりません! 神はお怒りになっておられます! だから……だから、わたくしたちは戦わなければ……!」
なんか弱腰なアリスティアの言葉に、光輝神の信者たちから、わあわあと批難の声が飛んでるな。
聖女としての尊敬は地に落ちているのかもしれん。
彼女の責任じゃないのになあ。
光輝神の信者たちも大概ろくでもないかも知れない。
そしてアリスティアの横から偉そうな神官戦士が歩み出て、
「総攻撃!! 神の光輝を示せ!!」
「ま、待ってください! 戦いは……!!」
「アリスティア殿は黙っていていただこう! これは聖戦なのです! 聖女として認められぬお方は、従ってもらう!」
おお、アリスティアが悲しそうな顔をして俯いた。
「ムギャオー!! それが! 自分のとこの巫女に対してやることかよーっ!!」
「ガガンが怒った! よし、お前の恋路は応援すると決めた。光輝神の神官をぶっ飛ばせ! 俺が道を切り開いてやろう」
俺は進み出て、ついに秘密兵器を使うことにした。
首に巻いているネクタイである。
スリッピー帝国でドンデーン教授からもらった、この戦闘用ネクタイ!
外し、振ってみる。
うむ、輝く剣になった。ネクタイブレードと名付けようか。
「チュートリアル!」
戦神と光輝神の軍勢を前に、俺は宣言した。
倒すのは最小限でいい。
後はガガンが道を切り開く。
俺はあいつの邪魔になるもの、不確定要素だけを最適な動きで排除すればそれだけでいいのだ。
何回かやって、チュートリアル完了。
戻ってきた。
戻ってきたら、オクタゴンが何かと向かい合っているところだった。
あら、いつの間にか、全身に闘気を纏った、甲冑姿の輝く男が立っている。
戦神じゃん。
オクタゴン側も、神殿から紫色の闇みたいなのがぞるるるるっと飛び出してきており、端末だったはずの我が兄弟がどんどんと存在感を増してきている。
神同士の殴り合いが発生するぞ、これは。
だが、俺は俺で仕事をせねばならん。
ガガンの前に進み出て、ネクタイブレードを振り回した。
なんとこの剣、魔法を切り裂けるんだよな。
不可視の衝撃波魔法を幾つも粉砕し、光学迷彩化して襲いかかってきていた光輝神の信者をまとめて撫で斬りにした。
さらに、横合いから手出ししようとするシクスゼクスの間者、スナークどももぶっ倒す。
どこから誰が来るかが明確に分かっているので、俺が剣を振るたびにガガンの邪魔をするやつが消えるぞ。
「き……鬼神かこの男!!」
光輝神の神官戦士が震え上がった。
うむ。
無駄な動きが一つもなく、超高速で的確に戦力を削いでくる相手、仕組みを知らなければめちゃくちゃ怖かろう。
だが、あいつは俺の担当ではないのだ。
「ガガン、道は全て切り開く。行け! 行って愛を掴め!!」
「うおおおおお!! マナビ! 感謝する!! オレは……オレはやーってやるぜえええええっ!!」
拳に闘気をみなぎらせ、真っ赤に輝かせながら吠えるガガン。
その巨体が俺の横を駆け抜けていった。
流石に速いな!
俺はその後を追いながら、ガガンへの追撃を全て切り落とし、切り伏せる。
ネクタイブレード便利だなあ!
俺の最終武器かもしれない。
ついにガガンはアリスティアの元に到着し、神官戦士と戦い始めた。
「神のなんだかと言っていたが! お前は本当に神様の声を聞いてるのかよ!!」
「うるさいっ!! 法皇様が神のお声を伝えて下さっているのだ! 間違いはない!!」
「お前……聞こえないんだな!? 神様の声が!! アリスティアは聞こえるのに!!」
「な、な、な、何を言うのだ!! 私は神官戦士の長だぞ! そ、そんなこと!!」
「光で人を導く神がな!! 意味の無いような戦いに信者を先導するわけねえだろうが!!」
うおーっ、舌戦!! レスバ最強!
ガガンの熱い言葉が、神官戦士を殴りまくっている。
胸が熱くなるなあ。かっこいいぞ。
俺は大好物な光景にニコニコしながら、光輝神の信者たちをなぎ倒す。
後ろからは戦神の信者たちも来るので、これもなぎ倒す。
一人で無双してるみたいな光景になってきた。
「マナビずるいのだ! カオルンも手加減をやめるのだ!」
カオルンが飛んできて、俺の後ろに降り立った。
そして、両手から光の刃を展開する。
「一応あんまり殺さないようにね。禍根が残るからね。あ、戦神の信者は戦死は名誉だそうなんで、殺しても大丈夫」
「分かったのだ!!」
背中合わせで、二人でバリバリ無双するのである。
「お前らの聞いている神の声は、本当に神様の声なのかよ!! アリスティアの言葉に耳を傾けないで、お前らには何が聞こえてるんだよ!! おい! 答えろ!!」
叫びながら神官戦士を押しまくるガガン。
だーれも、ガガンの言葉には答えられないのである。
だって、聖女アリスティア以外の誰一人として、光輝神の声が聞こえていないからである。
そしてみんな、アリスティアは本当に神の声が聞こえているのだと知っているからなのだ。
さてはて、そんなアリスティアを冷遇するように仕向けているのは一体誰かな?
この内戦の黒幕が分かってきたのでは無いだろうか。
セブンセンス法国が争い続け、その力を一つにできないように画策している何者かが、トップに凄く近いところにいるのではないかな。
「なんか情熱的だねえ……。ちょっと羨ましくなっちまうじゃないか」
ナルカのつぶやきが聞こえてきた。
『ねりゃーっ!!』
『うごごごごーっ!!』
ちなみに、同時進行で邪神と戦神の超弩級バトルが展開されていて、この戦場の情報量が恐ろしく多いのであった。
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