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第100話 決闘の終わりから娘婿殿へ

「うおおおおお!! 喰らえーっ!!」


 地面をえぐり取り、投げつけてくるバルクだ。

 とんでもないことしてくるな。

 これが闘気の力か。


 だが、チュートリアルで学習済みなので、俺はそれを座って回避する。

 頭上を通過していく地面。

 ガラガラ崩れて行くが、俺が座っている場所には全く落ちてこない。


 俺は座ったまま、尻移動ですすすーっとバルクに寄って行った。


「ぬおっ!! 面妖な動き!!」


 これにはバルクもびっくりしたようである。


「力というものはな、魔力と闘気と腕力だけじゃないのだ」


「何を言っている! ふんっ!」


 振り下ろされてくるバルクの足を、尻移動で横に回避する。

 俺は尻で移動できるよう、尻の筋肉を鍛えてあるのだ。

 全てはスマホをポチポチして寝そべりながら、家の中を移動できるようになるため。


 言うなればこれこそ、俺が何の力にも頼らず行使できる、純粋な異能である。


「避けた!」


「座りながら!?」


「気持ち悪い動きしてる!」


「何の魔力も働いていない! あれはなんなのだ!」


 観衆からどよめきが聞こえる。

 ハハハ、理解できまい。

 これが尻移動だ。


 それはそうとして、移動しながら勝手にオクタゴンが殴ってくれるので楽ちんである。

 ゲートを通じて出現した巨大な腕が、バルクを叩き潰さんと……実際はギリギリかするくらいで大暴れっぽい動きをしている。


 俺たちの気遣いを見よ、バーバリアン王!


「うおおおおっ!! なんと言う男だ! この力はなんだ! 何の力を借りている!!」


 よくぞ聞いてくれた。

 俺は満を持して答える。


「聞かれたら答えねばなるまい!! 会場の皆さんもご清聴ください!! 俺は!! 今!! 邪神オクタゴンの力を借りて! 戦っている! つまり、俺は蛮神を崇めるとかそういうことはしなくて、邪神とトモダチなのである!!」


 一瞬の静寂。

 そして会場に激震が走る!


「「「「「「「「「「な、な、なんだってー!!」」」」」」」」」」


 これにはバルクも愕然としている。

 ルリファレラはあらかじめオクタゴンと顔合わせしているので、彼が悪い邪神ではないことが分かっている。

 見ろ、お義母さんの余裕の微笑みを。


「よし、オクタゴン、これでいいだろう。決めるぞ」


『ああ、やろうか』


 そういうことになった。

 俺はスライディングしながら立ち上がり(尻移動と邪神の補助の合わせ技だ)、オクタゴンが放つ領域を纏う。

 実際は周りに領域がふわふわしてるだけなんだが、傍から見たら邪悪な色彩のマントを広げたように見えるだろう。


 俺たちは力を合わせて、それっぽく見せているだけなのだ!

 だが、効果はてきめんだ。


 バルクが叫びながら攻撃を繰り返すが、これはマントによって防がれる。


「今! 俺の最大の力でお前を下そう、バルク! うおおおお!! 邪神パワー全開! 邪神・ダイナミックストライク!」


 オクタゴンの両腕が出現した。

 それが、バルクに向けて連打を開始する。


 闘気のバリアみたいなのを張って、二発目まではなんとか凌いだバルク。

 だが、そこで限界が来た。

 バリアが砕かれ、連打が全身に突き刺さる。


「ぬわーーーーーーーーーーっ!!」


 連打で空中に浮くバルク!

 最後に、上空から出現したオクタゴンの足が、バルクを踏みつけた。

 地面に深くめり込むバルク。


 だが、安心して頂きたい。

 地面はあらかじめ、オクタゴンの力でぬかるみに変えてある。

 実はそこまでダメージが入ってないぞ。


 連打の衝撃で、バルクの体を一時的に麻痺させただけだ。


 見ろ、俺たちの気遣いを!


 麻痺して動けなくなったバルク。

 彼を見下ろしながら、俺はペンダントを掲げた。

 そこに、周囲に展開していたオクタゴンのゲートが吸い込まれていく。


 俺は周囲を見回した。

 誰もが言葉を失っている。


「お分かりいただけただろうか。俺の力が」


 バーバリアンたちが震え上がった。

 エルフたちが戦慄した。

 ルリファレラがめっちゃくちゃ笑いを堪えている。


 バルクに全然ダメージ入ってない事をちゃんと察しているのだ。

 これ、どうやら倒れているバルクも分かったみたいで、きょとんとしている。


 ルミイはなんかハラハラしており、カオルンは「カオルンも戦いたいのだー!」とか言っており、アカネルは「ところで尻移動ってなんなんです?」とか言っている。

 ガガンは裏の事情を知っているはずなのに、なんか呆然としていた。


「しょ……勝者、マナビ!!」


 王弟マスキュラーが、ようやく判断力を取り戻したようだ。

 そう叫ぶと、会場にどよめきが走った。


「つ……強い……!!」


「だがあれは……強さと言っていいのか」


「もっと邪悪で恐ろしい何かだ!」


「蛮神様を信じないと言ってたぞ」


「邪神の力だって!? そんなヤツを王にするわけにはいかない!」


「み、認めないぞ! 俺たちはお前を王にするなんて認めない!!」


 凄いブーイングが巻き起こった。

 誰もが恐怖で青ざめているが、それでも必死にブーイングしている。


 凍土の王国への愛と、バーバリアン王への崇敬、そして蛮神への信仰があるのだ。

 いいじゃないかいいじゃないか。


 俺はわざと悲しそうな顔をした。


「なんということだ。勝利した俺は、決闘の結果としてルミイを得て、そして王になる資格を得たはずだ。だが諸君がそれを認められないということは……」


 俺の言葉に、観衆は再び静かになった。


「俺は王様を諦めよう! いやー、残念だなあ! ルミイと結婚するだけにしておくよ! いやあ、本当に残念だ! 邪神と一緒にいたら王様にはなれないもんなー!! かーっ、こりゃあがっかりだわ!!」


 観衆、ポカーンとする。

 俺は堂々と歩いていき、高いところに座ってるルミイを手招いた。


 背後では、ヌッとバルクが起き上がる。

 そして完全に状況を理解したようだ。


「わ……わははははははは!! わははは! がはははははははは!! そうか、そういうことか! わははははは! 理解したぞ、マナビ! いや、娘婿殿よ!」


「おおっ! 認められた! おいルミイ、聞いたか!」


「聞きました! マナビさん、またやりましたねー!」


 ルミイが笑顔になって、ぴょーんと飛び降りてきた。

 俺はそれをキャッチする。

 重さで、ぬかるみに足が沈み込んだ。


 だが、ルミイはしっかり抱いたままだぞ。


「わはははははは! なるほど、ルミイだけを得るために仕組んだな? それに、俺の体に何の傷もない。それでいて、真っ向から粉砕されたわ! なるほど、お前ほどの男ならば、娘を預けるに足るだろう! ルミイを守りきれる男だと確信できる!」


 バルクが歩いてきて、俺に手を差し出した。

 俺はルミイを見て、バルクの手を見た。


 ルミイ、察して地面に降り立つ。

 俺は、バルクの手を握り返した。


「勝者はお前だ。結婚を許す。ただ、一つだけ条件がある」


「条件……?」


「初孫を抱っこさせろ」


「いいよ」


 そういうことになったのだった。

 こうして、俺とルミイの結婚は大々的に認められることになった!

 やったー!!

面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] >ルリファレラがめっちゃくちゃ笑いを堪えている。 いいなあこのゆるさ。
[一言] なるほど! これは、「王様にならずに勝つ」いい方法だ! しかし、力の使い方が汚いと言うより、キモかった!(笑)
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