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食卓

「こんなに食べたら太っちゃうじゃない!」


我が家の食卓に、ちょこんと座る彼女の目の前にはドンッと山盛りの肉野菜炒めが置かれている。肉は多めだ。後は旬だからという理由で胡瓜の浅漬けも作った。


「遠慮するな、米は今よそうから待ってろ」

「少し、少しよ!お願いだから……!」


何を遠慮しているのだろう。米が進むものしかないというのに。


何故このような状況になったかと思えば、いつかの弁当の謝礼を根気よく聞き出したところ、彼女は俺が作った飯を食べたいと言い出したのだ。けったいな。

親が仕事で家を空けることが多い都合上、最低限の自炊はできる。

まあ単に煮る、炒める、程度のことではあるが。

せっかくなので量は多めに作ってある。いっぱい食べろよ。


気持ち少なめに山盛りにした茶碗を置く。

何故か唖然としている彼女をしり目に片付けに戻る。

男に見られていたら食べ辛いだろう。


「さあ、遠慮なく食べるがいい。」

「___はっ!あんたの分がないじゃない!早く持ってきなさいよ」

「?……、ああ、心配するな、お前が帰った後にゆっくりやる。片付けとかを済ませねば」

「そんなの後にして!」


キッとこちらを睨みつけ叫んだかと思えば。



「せっかくなんだから……一緒に食べましょうよ……」



しおらしくそっぽを向きながら呟いた。


ふむ、……こちらが全面的に悪いな。同年代の少女と食卓を囲んでよいのかと、柄にもなく遠慮してしまった。


「……そうだな、せっかくだ、一緒に食べようか。自分の米をよそってくる」

「も、もう。こんな量一人で食べきれるわけないでしょ。勿体ないから!それだけなんだからね!」


そう言いながらも彼女の顔は輝いていた。宝石かな?

さて実食。とはいえいつも食べ慣れているものだ。目新しいものはないが……


「しょっぱいわね」

「俺のいつもの食べているものがご所望だったからな、本当はもっといいものを食べさせたかったが……俺にはそんな技術はなかった、すまない」

「別においしい物食べさせろって言ってないじゃない、これでいいのよ……でもちゃんと野菜も食べてるようで安心したわ、肉しか食べてないのかと思ってた」

「流石に肉だけだと飽きるからな…」


たわいのない会話の途中、彼女はふっと微笑み呟く。


「でも美味しいわ、あなたはこの味が好きなのね」


その笑顔はあまりにも優しい。しばし見取れてしまう。

自分の発言に気付いたのか、ハッと気付いたあと、こちらを睨み返している。

だが、特に発言を訂正する気はないようだ。

顔を赤らめながらもまた、食事に取りかかり始めた。

ふむ、食後にはあれを出すか。


「食後にプリンなんて…しばらく体重計には乗れないわね」


その言葉とは裏腹に彼女は終始、満足げであった。

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