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ジャック・オー・ランタン~光を灯して~

作者: 月見里 桜

『ジャック・オー・ランタン~光を灯して~』

 昔、ある村にジャックという男がいた。貧しい生活を送っていた。ある日、悪魔と出会い富を得る。変わりに死後、魂を授けると約束した。徐々にジャックの生活は良くなっていく。働きもせず、飲んでくれて賭博ばかりの生活を送っていた。その生活が数十年続き、さぁ、死ぬぞという時だった。悪魔がやって来て魂を請求してきた。ジャックは一計を講じた。悪魔に死ぬなら一度その力を見てみたいと木の上に登らせた。そして、木の下に十字架を置いて悪魔が降りれなくした。死後、地獄に連れて行かないことを約束させた。ジャックは一人酒の瓶に囲まれて死んでしまった。魂は天に登り、初代法王のペトロの前に立った。

 「お前は生前、ものすごい数の罪を犯した。天国には入れない。地獄も悪魔との約束がある為、入れない。お前の罪が許されるには千個の光をランタンに灯すしかない。そうすれば、天に入れるだろう」

 と言った。そして、ジャックはこの世をさ迷うことになった。


 アメリカではハロウィンになると仮装した子供達が家々を回りお菓子を貰います。今日は十月三十一日、待ちに待ったハロウィンです。子供達は喜んで家々を回ります。

 八歳のジャックは頭から目の所を切り抜いた布を被り、お化けの仮装をしています。手には籠を持って、元気よく友達と一緒に駆けていきます。友達は魔女、フランケンシュタイン、吸血鬼、狼男の仮装をしています。皆、手にお菓子で一杯の籠を持っています。

 ジャック・オー・ランタンのカボチャが置いてある家にジャック達が向かいます。コンコンと扉をノックして、「トリック・オア・トリート!」と大声で叫びます。扉が開き、おばあさんが出てきました。両手にクッキーを持っています。

 「さぁ、お菓子をあげるから悪戯しないでおくれ」

 ジャック達はクッキーを貰い、満足げに微笑みました。

 ジャックは近所の公園に一人で向かいました。ベンチに座り、お菓子を頬張ります。

 「美味しいな」

 ジャックは布を取っていた。ベンチの横に置いてクッキーをを一枚づつ出して食べる。

 「さて。そろそろ皆の所に戻ろう」 

 ベンチから飛び降りて布を被りなおす。そこに、目と鼻と口を切り抜いたカボチャを頭から被り、黒い服を着た男がやって来た。随分とくたびれた様子だった。カボチャ男はベンチに座り込み、深く息をついた。

 ジャックはおろおろして男を見つめる。低い声で男が言う。

 「ジャック。そんなに警戒するな。ほら。お菓子をあげよう」

 カボチャ男はポケットからキャンディを取り出す。上目遣いで見つめるジャックはキャンディを籠の中に入れる。

 「あなたの方が何か食べたほうがいいんじゃない?」

 クッキーを手渡す。

 「ありがとう」

 男はカボチャを脱ぐ。深い皺、ぼさぼさの髭。ホームレス風の男だ。クッキーを食べ終えて男はジャックの手を握る。男は皺の寄った顔を綻ばせて微笑む。

 「ジャックはいい子だ」

 突然褒められて俯くジャック。その時、男が被っていたカボチャが光り出す。暖かいオレンジの光。

「いい子である印だオレンジの光が灯った。ジャック、頼みがある。私を助けてくれないか?」

 男は濁った目から大粒の涙を流す。まるで、大きな罪を背負い責められているようだ。ジャックは被っていた布を脱ぎ、男の目を真っ直ぐ見つめる。今度はジャックから男の手を握る。

 「僕に何が出来るの?」

 男は光り輝くカボチャを持ち上げてジャックに手渡す。

 「持っててくれ」

 言われるがままジャックはカボチャに口づける。すると、ジャックの胸が微かに輝く。カボチャい光が移動する。男はカボチャを被る。

 「愛がある光だ。これで千個目の光だ。漸く天に上がれる」

 来た時と同様、ふらふらと帰って行く。

 「ジャック居た」

 友達が駆け寄って来る。

 「何してんだよ?こんな所で」 

 ジャックは男が去っていた方を見つめて友達の方を見る。

 「僕、ジャック・オーランタンに会ったんだ」

 「はぁ?ハロウィンにこの世をさ迷っているジャック・オー・ランタンに?」

 「うん」

 ジャックは真剣な眼差しで友達を見る。

 「僕で千個の光が集まったから天に上がれるって」

 「へぇー。そんな続きがあったんだんな」

 そこに。

 「すみません。カボチャ頭の男がどこに行ったか知っていますか?」

 ジャックと同じように目を開けた布を被った女性がいた。ジャックは男の去った方角を指さした。女性はジャックの手を握る。

 「光を灯してくれてありがとう」

 そう言い残して男の後を追う女性。

 「あれ?」

 女性は浮いていて、足が無かった。ジャックは急いで布を被った。だって、お母系連れて行かれたら困るから。お化けの仮装をしたのだった。


『お化けのバー子ちゃんハロウィンを行く』

 子供と別れた後、お化けのバー子ちゃん、白い布を頭から被った女性のお化けはあふふっと笑う。街の中心に向かう。街ではハロウィンの飾りが光り、賑わっている。

 「本当。ハロウィンはいいわ。隠れたりしなくて済むもの」

 バー子ちゃんはふわふわ浮いて進んで行く。

 「きゃっ、きゃっ」

 と叫ぶ子供の集団と行きかう。魔女にフランケンシュタイン、ゾンビ、悪魔、幽霊、妖精と色々なお化けに仮装している。そこに、ミイラに仮装をした、体中に包帯を巻いた七歳ぐらいの男の子がバー子ちゃんを見つめて籠からクッキーを取り出す。

 「どうしてお菓子持っていないの?」

 「ふふっ」

 あまりの可愛さに笑ってしまう。バー子ちゃんは男の子の頭を撫でる。

 「私は大人だから、子供の分が無くならないようにしているの」

 「ふぅん。でも、一枚ぐらい大丈夫でしょう」

バー子チャンはクッキーを受け取る。サクッと食べる。クッキーは口に中でさくさくとして香ばしい匂いがする。

 「じゃぁ、バイバイ」

 子供は手を振って去っていく。

 「ふふっ。可愛いわ。私も生きている時、あんな頃があったな」

 目の端に微かな光が見える。普通の光とは違う、心を照らすほのかに暖かい感じがする光。

 「ジャック・オー・ランタン」

 背後から声をかける。カボチャを頭から被った浮浪者のような男が立ち止まり振り返る。

 「バー子か。見てくれ」

 カボチャを取り、バー子に見せる。

 「千個揃った」

 バー子は涙を溜めて。

 「本当によかったね。千個の光が手に入って」

 バー子は布を取る。するお、金髪の巻き毛が美しい女性が現れる。取った布が女性の体を包み白いドレスに変わる。

 「漸くだ。バー子、迷惑をかけたな」

 ランタンが強く輝き、ジャック・オー・ランタンを包む。すると、若々しく逞しい男性が白い服を着て現れる。

 「天に行こう」

 ジャック・オー・ランタンが白い服に着替えた途端、ランタンが千個に増えて、夜空を明るく照らす。それは幻想的でランタンの光は水をかけても消えない。魂の光。素直でいい子達の輝き。

 「さぁ、お化けのバー子として長くをさ迷った女よ、共に天に上がろう」

 ジャック・オー・ランタン、金髪の女性、バー子として浮遊霊としてこの世をさ迷った美しい女性の手を握り締める。ジャック・オー・ランタンは感極まってキャリーを抱き寄せる。

 「やっとだ。千年かかった」

 瞬き輝くランタンの光。まるで、祝福するようだ。天から白い階段が降りてくる。ジャック・オー・ランタンはキャリーを連れて階段を登る。

 その様子を見つめていた一人の女の子。

 「とても綺麗」

 と呟いて涙を流した。

 天から声が降ってくる。

 「さぁ、鐘を鳴らせ。二人を祝福しようではないか」


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