エピローグ『戦乱の始まり』(前編)
「そうか。報告ご苦労だった」
秘書が一度下がった。
旧グランデン首都レンデンの城『キャメロット城』。
そこをロルムスが接収して以降、機械の備品がとにかく増えた。
フィン・ゲッシュ・ファイアスは、城の一角にある執務室の机上にあるコンピューターを操作して、報告された資料を再度確認する。
ドゥンイクスの復活、ドラグーン王の遺児による、聖剣カリバーンの起動。
そして、自軍の機体のモンスター化。
それが観測していた部隊から届けられた報告だった。
それをまとめた資料が、モニターには写っている。
同様の報告自体は、皇帝にも知らせたが、何故か捨て置けと一蹴された。
どうもここ最近、皇帝の危機感のなさがフィンにとって気にかかるところではある。
だが、反乱軍は周囲にまだいるのだ。自分がここを離れるわけにもいかない。故に皇帝に謁見するなど不可能だ。
「何をお考えなのだ……?」
正直、その疑問が湧くのである。
何か裏であるんじゃないか。そんなことが、フィンの脳裏にどうしても浮かんでしまうのだ。
「何か起こると、思っておいでですか?」
黒髪の女性が、近づいてきた。
九尾を持つ、やたらスタイルのいい女性だ。
同時に額にあるのは、幾何学的な文様。
自分の愛機であるクレイルモルドの人間態『モルド』。それがこの女性である。
「ああ。何か嫌な予感がする。これがテオドールのみの計画なら良いが、はてそれだけで済むか、それとも別のところが絡んでいるか」
正直言うとそこなのだ。
疑いたくはないが、自軍の組織が既にこれに毒されている場合、一瞬で国は瓦解するだろう。
大義名分をあちらに与えるには十分すぎるのだ。
どちらにせよ、東端の一つの村とはいえ、そこからグランデンが再び興ろうとしている。その事態を、どう考えればいいのか、それがフィンには分からない。
「でも旦那様、あなたの望みは、あなたに立ち向かう者、ではありませんか?」
よく分かっていると、モルドの言葉にフィンは頷く。
自分に立ち向かう者がいるならば、敬意を持って当たる。それが自分の、戦士としての自分の領分だ。
「そうだな。私は望んでいるのだ。アースライ・グランデン・キャメル。まだ少年だそうだが、しかし、カリバーンを起動させたということは、それだけ特異な物を持つということ。それが私の前に立ち塞がることを、私は望む」
「旦那様は何処までも戦士なのですね。もっとも、私もそれを望みます。ドゥンイクスは我が兄弟機ですもの。それが期待ハズレで終わらないことを、私は願いますわ」
闘争心にどちらも魅入られている。
飢えているのだと、フィン自身が感じている。
レンデンを治めること事態は、正直嫌いではない。民の顔を見るのも、悪くない。
だが、自分は王ではない。
あくまでも、帝国に尽くす戦士なのだ。レンデンは今治めている所領に過ぎない。
しかし、自分に立ち向かって、立ち向かった者が勝って、初めて大陸の繁栄があると、フィンは感じている。
グランデンの住民からすれば、自分は悪党にすぎない。
その悪党を超えてみせろ、次世代の王よ。
それだけ思って、空を見た。
曇天が広がっていた。
まるで、国の空気のようだと、フィンは思った。





