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第五話『王と聖剣』(1)

 炎が見えた。

 何が燃えているのか。そう思い見た時、愕然とした。


 自分のいた村が、燃えていた。

 そして、そこには数多くの殺された村人がいる。

 知っている顔も、何人も見た。


 何があった。

 そう聞いても、誰も答えない。周囲は死体の山だから、ただ何も言わないし、言えない。


 叫ぶ。

 何に向かって? 分からない。

 ただ、叫びたかった。叫んでいたかった。


 それと同時に、身体を起こしていた。

 真っ暗だった。

 周囲を見渡すと、自室であることに気付く。


「夢、なのか……?」


 アースは、髪を触った。汗だくになっていた。


 時計を見ると、まだ起床時間には早い時間だった。だが、眼が覚めてしまった。

 寝付けるとも思えなかったのだ。


 ベッドから起き上がり、着替えた後、置いてあった剣を握る。

 二日前に選んだものだ。自分はまずまずガタイが良かったこともあり、大型の剣があてがわれた。トゥーハンドソードというのだと、後で教えられた。

 実際、サイズは身の丈より少し小さい程度で、その名の通り柄が長く、二本の手でやっと握って扱う、といった形だ。


 何処か、ドゥンイクスの持っているカルドゥエッフに似ていたこともあり、そうした方がしっくり来るだろうとも言われたものだ。


 自室を出ると部屋の前に番兵が二人いたが、二人とも唖然としていた。

 どうやらこれが現実らしいと感じて、アースは少し、ホッとした。


「若様、どうかなさいましたか?」


 番兵の一人が聞いてきた。

 よく知っている声だと思って、尚の事ホッとした。


「ああ、ちょっとな。悪い夢を見ちまって、眼が覚めちまった。ちょっくら早いが、朝稽古でもしてくるわ。ガウェルは起きてるかな?」

「ガウェル殿でしたら、既にご起床されているかと。あの方は誰よりも早く起きて訓練をやるのが日課ですから」


 番兵が苦笑しながら言う。

 なるほど。ガウェルらしいと思った後、礼を言ってハンガーへと向かう。


 その間にも、護衛の兵士が一人付く。最初は少し鬱陶しく感じていたが、もう過ごして四日も経つと、慣れてしまった。


 ガウェルが戦闘をしてから、既に四日だ。その間の動きは特に見受けられず、自分はただひたすらに修練を積んだ。

 剣を使っての訓練は、まだ振る程度でしかないが、ガウェルに散々しごかれたこともあってか、上達は自分でも思ったより早かったと言われた。

 元々ある程度身体が出来上がっていた、というのが大きかったようだ。


 また、ガウェルからの指導もあり、剣は常に肌身離さず持つことで身体が重さに順応するようにしろとも言われた。

 それもあって、背中に鞘に収めた状態で剣を背負っているが、重量としては正直意外にもハンマーより少し重いな程度にしか感じなかった。


 また、この間にドゥンイクスの操縦訓練も何度か行った。もっとも、シミュレーターモードにした上での模擬戦だったが。

 しかし、結構リアルなシミュレーターだった。魔導を扱う感覚も、最初に動かした時とさほど変わらないように思えるくらいだった。


 それに座学とまで含めてだから、結構な時間を費やして、寝る時間は一日に四時間が関の山だ。

 だが、充実していると、アースは思っていた。

 一つ一つが、斬新に思えるから、というのが一番なのだろうと感じるのだ。


 番兵の言った通り、ガウェルは魔導機の整備兵と警備兵しかいないハンガーの一角で、半裸のまま剣を振っていた。

 その剣を見て、唖然とした。


 グルディスと同じような巨大な銃剣だったからだ。ライフルの下部に、大型の剣先が付いた、身の丈ほどのサイズの巨剣だ。

 それを自分と手合わせする時よりも遥かに早く振っている。


 それだけ、ガウェルの筋力が桁外れだ、ともいえるが、同時に扱い方を身体が慣れているとも思えた。

 ちらりと、ガウェルがこちらを見た。


「あ、これは若様」


 手を上げて、ガウェルに応える。

 ガウェルが近場にあったタオルを手に取り、近づいてきた。


「いかがなさったのです? まだお休みの時間では?」

「いや、悪い夢を見てな。目が覚めちまった」

「悪夢、ですか」

「胸糞悪い夢さ。炎で村が焼かれる夢だよ」


 ガウェルが、目を細めた。


「少し不吉ですね……。一応警戒監視は密にしていますが、やはり村が心配ですか?」

「そりゃな。だが、今の所夢で安心したぜ」


 少しアースは伸びをする。

 それでようやく悪夢から開放された気がした。


 魔導パネルが朝日が昇ったことを知らせる。

 今日も晴天だそうだ。


 しかし、思えばここに来てから外に出ていないと感じる。だから太陽の光もちっとも浴びていない。

 だが、元より採掘工だった自分からすれば、陽の光を浴びている時間のほうが短いから、それについては特段関係ない。

 それに、今出るのは危険だということも分かっている。何処に目が光っているか、分かったものではない。


 もっとも、この時間になると身体を動かさないとまずいなとも感じる。

 だから、鞘からトゥーハンドソードを引き抜いた。


「まずは、素振りからかな」

「ですね。しっかりやっていきましょう」


 なんだ、いつもと変わらない一日だ。

 そう思った後、アースは息を吸って、トゥーハンドソードを振った。

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