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8 貴い血脈

 8 貴い血脈とうといけつみゃく



 ドランはそれから何度か、研究所を訪ねてきた。その度にルインは小躍こおどりするように喜んだ。

 ルインは密かにドランを身ががれるように慕っており、大いにかれていた。

 それを最大の理解者であるフォースにも告げようとする。フォースは応援してくれるだろうか。

 休憩時間の合間に木陰の裏で、腕輪を小突いてフォースを呼び出した。

 サモンの助手の仕事が忙しくて、中々フォースと腹を割って話せる時間は少なかった。


「姫様、見ておりましたぞ。サモンと言う人間……。

 魔導族王家の姫君であるルイン様に雑用を押し付けるとは許せない。

 姫様も姫様です。姫様は始祖魔導王ルインの直系の姫君。自覚を持っていただきたい」


 フォースは少々、不機嫌であった。その機微きびがハッキリと伝わってくる。

 ルインがサモンの助手に甘んじているのが許せないらしい。

 確かに魔導族王家なのは分かる。だが、時代の流れには逆らえないのだ。

 魔導族は人間の世界で、順応じゅんのうしていかなければ魔導族は終わりだ。


「フォース、お前の気持ちは分かる。

 私は魔導族の姫……それは揺るぎようが無いのは事実だ。

 でも、私は人間と共存していくのも悪くないと思い始めている。

 サモンの助手の仕事にも充実を見出している。それに何より……」


 微笑しながら言いかけて、フォースはルインが慕っているドランの姿を取る。

 それを見てルインは不機嫌になる。大切な人物の姿を取った事への憤り。


「あのドランとか言う小僧の事ですか? あってはならない事です。

 魔導族の姫君であられる貴女が、人間の小僧に心惹かれることなど……」


 フォースは元の子供の姿に戻り、ルインを叱った。初めてだ、フォースに叱られるのは。


「フォース! 家臣の分際で主君の気持ちを踏みにじるな!」


 ルインも負けずに言い返す。それでもフォースは顔色一つ変えない。


「主君の間違いを正すのも家臣の役目にございます。

 やはり、姫様は人間の血が濃いようだ。下等な人間をしたうなど……」


 フォースは何か事あるごとにルインの身体に半分流れる人間の血を蔑む。

 それをルインは悲しかった。フォースに嫌われたくない。ルインはその一心で心を入れ替えた。


「フォース……私が間違っていた。お前の言う通りだ。

 ドランは下等な人間に過ぎない。私はルイン……貴い魔導族の姫だ」


 始祖魔導王ルインの再来を思わせる魔導眼でフォースを示威。本心とは真逆の事を言って、

 例えようのない寂しさを伴う悲しみを覚えながらフォースを安堵させた。

 フォースは二千年以上生き、極めて万能であるが、ルインの心を読むことが出来ない。


「姫様。そのお言葉を待っていました。永遠の忠誠をお誓いします」


 永遠の忠誠などと言っているが、自分はフォースの言いなりだ。

 フォースには魔導族王家はこうでなくては、と言う確固たる理想像がある。

 それに見合う器でなければ彼……フォースは納得しないのだ。

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