表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/76

5 魔導族か人間か

 5 魔導族か人間か



 ルインは紆余曲折うよきょくせつの末、海岸に流れ着いた。真紅の瞳は元の瞳に戻り、身体は痛めつけられていた。

 激しい痛みが全身を襲う。魔導族故、傷ついた身体は修復されるが、体力は暫く戻らない。


「おい、大丈夫か!?」


 恰幅かっぷくの良く、背の高い男が、海岸に漂着したルインを抱きかかえる。

 ルインは薄っすらと眼を開ける。男は真紅に染まったルインの眼を見て、驚きを露わにする。


『これは……伝説の魔導眼! 魔導族……初めてだ。取りあえず助けねば』


 魔導眼を発動しているためにルインは相手の心を読めた。驚いてルインを見つめている。

 更に魔導眼は相手の思考を完璧に読み取り、自身の脳に蓄積することが出来た。

 ルインを助け出した人間はサモンと言う名前らしい。ルインの母と同じで魔物使い。

 かなり高名な研究者らしい。繁殖が難しい虹色蝶にじいろちょうの研究をしている。貴族家の長男であったが、

 研究の為に生家を出て研究の為に一生を捧げる覚悟だと言う。


 ――これが魔導眼……素晴らしい特別な力!


 遂に開眼した魔導眼にルインは御満悦ごまんえつであった。この眼があれば何でもできる。

 世界を支配することも可能かもしれない。そう、魔導族は人間の上位種……。

 ルインは恍惚こうこつとした面持ちで魔導眼の力に酔いしれる。偉大な力を遂に手に入れたのだ。

 その途端、ルインの身体が光に包まれる。不思議な光はルインの身体を完全回復させた。

 光が収まると、ルインは立ち上がり、魔導眼でサモンを示威する。


「私は偉大なる魔導族……魔導……母さん!」


 ルインは魔導眼を通常の瞳に戻し、一転して悲しみに暮れた。

 念願だった魔導眼を開眼したが、大好きだった母を失った。そうだ。自分は大切な者を失ったのだ。

 ルインは涙を溢れださせる。そして、自身の左腕の腕輪を小突いた。

 すると、母を見殺しにした唯一の家臣、フォースが人間の子供の姿で現れ、お辞儀をした。


「姫様、御無事で何よりにございます」


 フォースはルインの悲しみを理解しながらも白々しい態度を取った。

 初めてだった。友達同然であったフォースに対して恨みを持つなど……。


「何故、母さんを見殺しにした? 答えろ!」


 ルインは再び魔導眼を開眼させ、涙を流しながら拙い声でフォースを示威する。

 魔導眼でフォースを示威しいする様は始祖である魔導王ルインの如くであった。


「全ては姫様が魔導眼を開眼する為でございます。下等な人間の女と、

 貴い魔導族王家の姫君……どちらを優先するのは明白にございます」


 フォースは当然とばかりに、ルインの大事な母を下等な人間だと貶めた。

 ルインは自分も下等な人間の血を半分受け継いでいることを気にしている。

 それをフォースは取るに足らない少女相手だと嘲り、弄んだ。フォースが崇め奉り、

 忠誠を誓っているのはルインに半分受け継がれている魔導族の血に対してだと、

 ルインはこの場で痛感させられた。もしも、あの時、ルインが魔導眼を開眼していなかったら、

 ルインは考えるだけでゾッとした。フォースが不気味で堪らなかった。


「フォース……答えろ。私は人間か? それとも魔導族か?」


 ルインは気丈にも震える声音で恐る恐るフォースに問いかける。


「ルイン様は紛れもなく、魔導族王家の姫君にございます」


 フォースは深々とお辞儀をして、ルインを安心させた。ルインはその言葉に肩の荷が下りた。

 最早、主導権はフォースが握っており、主君であるルインは恐々とした気持であった。

 そんなルインをフォースが、近寄り、優しくルインの髪を撫でた。

 ルインはフォースに縋り、延々とその場で泣き続けた。それを呆然とサモンが見ていた。

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ