4 開眼
4 開眼
ルインは縄で縛られて連行される母、シャインを不安げに見つめていた。
それも束の間、ルインも憲兵に強引に取り押さえられた。ルインは何が起きたのか理解不能だった。
しかし、まだ小さいルインは国の法律の上では死罪は免れる。それがシャインの唯一の救い。
「母さん!」
「ルイン……ごめんなさい。こんな母を許して」
ルインとシャインは谷底が一望できる処刑場に連れていかれた。大勢の憲兵が、
それを取り仕切っていた。ルインはフォースが化けている左腕の腕輪に目を通す。
だが、腕輪は無反応だった。これから母が処刑されようとしているのに、
フォースは何をしているのだろう。ルインはフォースに念じたが、腕輪は無反応。
「ルイン。貴方はまだ子供だから、処刑は免れる筈……だけど、
これだけは聞いて、人間を恨んでは駄目。復讐を私は望まない」
母、シャインは涙ながらに最後の言葉を言うと、
谷底に突き落とされ、谷底に控えている処刑竜が待っていましたとばかりに、
その鋭い牙を持つ口を大きく開けて、ガブリとシャインを一気に丸呑みした。
「母さん……!」
取り押さえられながらも、ルインは赤みの帯びた両目から滂沱の涙を流して、母の最期を看取った。
それは小さな少女であるルインにとって、一生、忘れられない悪夢であった。
「さあ、次はお前の番だ。子供は死罪を免れる法律だが、
魔導族の血を引いている場合は別だとお達しがあった。おい、この娘も谷底へ落せ」
憲兵の指揮官はルインを谷底へ落すように部下へ命じた。
自分も死罪になると聞いて、ルインは憤りを隠せなかった。特別な自分が死罪になる。
下等な人間共、と心の中で憎悪を燃やす。何の力も無い非力なルインは哀れにも谷底へ突き落される。
再び、処刑竜が、その大口を開けて待ち構えていた。その時、ルインの身体が光に包まれた。
空中で身体が制止し、宙に浮かぶ。そして、その両目は赤みが増す。そして完全なる真紅の瞳となった。
その場の憲兵は何事だと、騒ぎ立てる。ルインは光に包まれたまま、その場から忽然と姿を消した。