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15 魔獣保護区

 15 魔獣保護区



 ルインは濁流にのみ込まれたまま、緩やかに流れる川の河原に漂着した。

 意識が定かではない。自分はどうやら戦神に敗れたようだ。

 全身の痛みは、魔導族の治癒能力により、回復したが、体力まではなかなか戻らなかった。

 吐息が寒空に漏れる。肩で息をしながらフラフラに成りながらも立ち上がった。

 両目には永遠なる真紅の瞳……魔導神眼が輝いていた。もう元の通常の瞳には戻さないと誓った。

 魔導族の力を誇示して生きると決めたのだ。傍らにはフォースが子供の姿で控えていた。


「姫様、御無事でしたか。戦神……ブレイク様の魔導神眼を良くも」


 液体金属の身体に纏わりついた水を払いフォースは珍しく憤っている。

 それも無理もない。戦神は彼の慕う父の魔導神眼を情け容赦なく奪って殺したのだ。


「フォース、ここは何処だ?」


「ここはどうやらシールド王国に存在する魔獣保護区です。

 希少な魔物が多く生息している魔境です。以前、来たことがあります」


 ルインは究極の探索能力を持つ魔導神眼の力で何者かの気配を感じ取った。

 河原に魔導族に匹敵する程、希少な長い耳が特徴のハイエルフが、遠くから歩み寄ってくる。

 向こうも感知能力に長けていたようで、此方の動きを伺っていたのだ。


「魔導族……それも魔導神眼か。二千年前を思い出す。

 何処となく魔導王ルインの面影を感じる。私はハイエルフのテイマー。お前の名前は?」


 テイマーと名乗った長身のハイエルフの男は自己紹介をした。

 純白のローブを羽織っている。二千以上生きていると言ったが、見た目は若い。


「魔導族のルインです。隣にいるのは私の家臣……フォースです」


 その言葉にテイマーは割れんばかりの笑顔を向けた。

 ルインの祖先である魔導王ルインを重ねたのか。ルインは少し戸惑っていた。


「フォース。久しぶりだな?」


「はい。テイマー様。壮健そうけんそうで何よりにございます。

 此方に居られるルイン様は始祖魔導王ルインの直系の姫君にございます」


「ほう。アイツの子孫か。だが、人間の血が混じっておるな。

 魔導族王家の直系の娘が、人間の血が混じっているならば、魔導族王家は断絶の危機だな」


 聞く所によると、テイマーはハイエルフと言う希少種族で二千年以上生きている。

 そして太古の昔、魔導王ルインの親友だった。その縁でフォースも見知っていた。

 ルインはテイマーと共に魔獣保護区を散策しながら、保護区の管理所に到達した。

 道中、図鑑でしか見たことも無い魔物ばかりであった。

 風のように永遠に翔る事の出来る風神馬ふうじんば。高い魔力を備える魔導狼の群れが、

 颯爽と平原を横切る様は見事だった。ルインは永遠なる真紅の眼を輝かせた。

 管理所には一人の見覚えのある男が、ルインを待ち構えていた。

 ルインは咄嗟に身構え、魔導神眼で相手を射抜くように向ける。因縁のある役人の長官のバロン。

 他でもないサモンおじさんを死に追いやった人間だ。バロンは眼光鋭くルインを睨む。

 かなりの長身でマントを羽織っている。ルインも負けずにバロンを示威する。


「魔導族の娘よ。再び巡り合うとは。これは何かの運命かな。

 私の身の上話をしよう。私は虹色国の長官であった。だが失脚し、

 放浪の末、魔獣保護区に辿り着いたのだ。テイマーは私を快く歓迎してくれた。

 私は魔導アース最強の存在だと自負していてね。戦神と……」


 饒舌な語り口が突如止まる。ルインの只ならぬ殺気を見て、バロンは察した様子を垣間見せた。

 ルインが戦神と戦い、敗れたと言う事は見て取れるようだ。

 バロン……戦神と並んで魔導アース二強の一角。それに割って入るかのように、

 ルインは魔導神剣を生成し、憎しみを滾らせてバロンに突進する。

 対してバロンは全く動じない。眉一つ動かさずに闇雲に剣を振りかざすルインを巧みに翻弄。

 ルインの動きを読んでいるかのようにバロンは剣戟の全てを悠然と躱す。


「よくも、サモンおじさんを! 許さない!」


 怒りと憎しみがルインの心の中を支配し、汚濁おだくとなる。苛烈なるルインの攻めだが、

 バロンに当たる気配は全くない。魔導神眼と言う究極の眼を以てしても、捉えきれない。


「魔導族の娘よ……動きが単調すぎる。幾ら最強の眼を持っていても宝の持ち腐れだ。

 今度は此方から攻めよう。この一撃で、お前は私の前に這いつくばる」


 バロンは右手をルインに向けてかざす。神々しく輝く光弾が、ルインの全身を打ち付ける。

 宣言通り、ルインはバロンの前に這いつくばり、目の前が真っ暗になった。

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