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14 戦神

 14 戦神



 半年後、ルインとフォースは濁流だくりゅうが流れる川の橋の上で、目的である勇者との邂逅かいこうを果たした。

 勇者は父、ブレイクを倒し、欲に駆られて魔導神眼を奪い、自身の両目に移植。

 その力を暴走させて、魔導に落ち、現在は戦神いくさがみと名乗っていた。

 対峙して伺える戦神は強そうには見えない優男であった。イメージしていた姿と大分違う。

 目の前の人間は造ったような笑顔を取り繕い、全く底の知れない風貌をしている。


「やあ! ルインちゃん、こんにちは。僕が戦神だよ。魔導アース最強にして究極の存在。

 最強の魔導族ブレイクも僕の前に屈した。誰も、この僕には敵わない」


 戦神は取り繕ったような優しい笑顔で両手を広げて自身が魔導アース最強を誇示していた。

 こんな軽薄な男に父、ブレイクが敗れたと言う事にルインは些か、不可解だった。


「こんなふざけた男に我が父が敗れたと言うのか!?

 下等な人間が、私を愚弄するな! 魔導神剣で切り刻んでやる」


 ルインは魔導眼を開眼した者だけが生成することが出来る魔導神剣を作り出す。

 煌びやかに輝く黒い刀身の魔剣……魔導族だけが扱うことを許される伝説の業物。

 不気味な様相を呈する戦神に若干、恐れを抱いたまま、猛然と戦神の間合いに入る。

 戦神は微動せず、余裕の笑みを浮かべ、ノーガードでルインの一撃を受けた。

 戦神の右半身の一部が、切り落とされる。だが、戦神は優しい面持ちを崩さずに自己再生。

 戦神は悠々と右半身の一部を異常な速度で再生させた。戦神の雰囲気が突如、不穏な気配を帯びる。

 身の毛のよだつような邪悪なオーラを身に纏い、両目には永遠なる真紅の瞳……魔導神眼が輝いていた。


「我は戦神……全てを超越した存在。魔導アースに君臨し、全てを畏怖いふさせるもの」


 全身から全てを飲み込み暗黒に染めるような邪悪なオーラを無尽蔵に溢れださせ、

 戦神は音速を超えた超速で、怯えるルインに迫る。その凄まじき速度は魔導神眼でも追えない。

 神速とでも形容すべきか、ルインの首を鷲掴みにして勢いよく地に叩きつける。

 ここが極めて強固な鉄橋てっきょうでないならば、その衝撃で大地が砕け、

 底が見えない地割れにまで発展していたであろう。人間の常識を無視した出鱈目な力である。


「ブレイクの娘よ……我に挑む無謀、やはり奴の娘だ。何処か面影がある。

 だが、我には勝てない。潜在能力は認めよう。だが、多くの魔導族と同じで、

 魔導眼に頼り切っている。魔導族はそれ故、淘汰されたのだ」


 全てを飲み込む、邪悪なオーラを全身から溢れ出させながら、

 戦神は魔導族が何故、淘汰されたのかを明かした。ルインは敵わないと思った。


「我の気紛れだ。命は助けてやろう」


 戦神は温情を見せて、ルインを橋の下に流れる濁流の渦に放り込んだ。


「姫様!」


 フォースも主君であるルインを追って、迷いもせず、慌てて濁流に飛び込む。

 痛みと恐怖でルインは意識が朦朧もうろうとしながら、濁流の渦に飲まれていく。

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