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13 四年後

 13 四年後



 サモンが死んで四年の月日が流れた。それはあっと言う間であった。

 ルインはブラッドの家で養われ、それなりに満ち足りた人生を歩んでいた。

 背も大分伸びて、長身女性となった。漆黒しっこくの長い髪をたなびかせて、常に真紅の瞳が輝き続ける。

 その姿は魔導族の姫そのものであった。ルインは屋敷の図書室で、読書にふけっていた。

 傍らには彼女の家臣であるフォースが控えている。相も変わらずに子供の姿を取り、

 魔導族の姫君足るルインの一挙手一投足に目を光らせる。

 フォースは始祖魔導王ルインを思い起こさせる成長をしたルインの容姿に御満悦であった。


「姫様、貴女のその姿は魔導王ルイン様の再来……良くぞご立派に成長なさいました」


「一々煩いぞ……主の読書の時間を邪魔するな」


 フォースは勝手に感極まっている。ルインはそんなことはどうでも良かった。

 類まれなる知識が……知恵が欲しかった。もう大切な存在はなくしたくない。

 その一心で、あらゆる蔵書ぞうしょを読みふけり、脳に蓄積ちくせきされたその知識量は並外れたものになっていた。

 そして、ドランとの婚約も控えている。思いの外、順風満帆じゅんぷうまんぱんであったが、

 そんな幸せが崩れる。そんな事態が、目前と迫っていた。

 それは足音のように迫りくる。そんな折に風雲急ふううんきゅうが告げる事態が巻き起こる。

 隣国との小競り合いに、ドランが駆り出されたのだ。

 下級貴族とはいえ、貴族に相違ないドランは初陣を迎えるのだと言う。

 その報せを聞いたルインは戦に駆り出されるドランの部屋まで押し掛けた。


「ドラン様……必ず生きて戻って来て」


「ああ……必ず生きて戻ると約束しよう。達者で」


「ドラン様、これを……我が魔導族王家の家紋が記されたペンダントです」


「ありがとう……では行ってくる」


 ルインはお守りとして魔導族王家の家紋が入ったペンダントを渡した。

 後で、それをフォースに怒られた。だけど、何としてでも生きて戻って欲しい。

 ルインの切なる願い。もう二度と大切な人を失いたくない一心からであった

 それから程なくであった。ドランが戦死したと言う報せを受けたのは。

 ペンダントは血に染まってルインの元へと届けられた。それからドランの葬儀を終え、

 ルインは悲しみに暮れるブラッド夫妻に別れを告げて四年間過ごした家を出た。

 そしてルインの両目は崇高にして、永遠なる真紅に染まる。魔導神眼……最強の力を得た。


「ドラン様……私は人間共を許さない。

 フォース、私は父の痕跡を辿る為に伝説の勇者を名乗る下等な人間を消す」


 ルインは人間に対する強い憎しみを覚え、体をゾクッと震わせる。

 人間共は人間同士で争う醜い下等種族だ。強い不信感と憤り……憎しみが全身を蝕む。

 永遠なる真紅の瞳を爛々と輝かせてフォースに当面の目標を告げた。


「微力ながら、お力添えいたします。姫様……」


 フォースは深々とお辞儀をし、ルインの魔導神眼に恍惚して有無を言わさずに従う。

 元より、フォースは人間を毛嫌いしている。彼にとっても願っても無い事だろう。

 ルインとフォースは世界中を旅して、伝説の勇者を倒す算段を立てた。


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