12 サモンの末路
12 サモンの末路
ルインはサモンとドランと共に虹色蝶の研究をする毎日が幸せだった。
しかし、その幸せが突如として崩壊する。それはあっと言う間だった。
政府の役人と名乗る集団が大挙として研究所を包囲した。
何事かと、朝起きた時、ルインは大慌てで、陰から役人に包囲されるサモンを見ていた。
役人の長が、何やら聞き取り調査を行っている。標本から、飼育室の全ての虹色蝶が見聞される。
「役人の長官を務めるバロンだ。
サモン博士、お前は研究用に繁殖した筈の虹色蝶を不正に密売した容疑がある。
お前は研究用に繁殖する許可証は所持しているが、密売は法律に違反している。
よって、逮捕して勾留する。何か言いたいことはあるか?」
役人の長官バロンは役人特有の冷淡で厳かな佇まいの男であった
バロンは厳しい口調で捲し立てる。サモンは縄で拘束されてその場に膝を付く。
「仕方なかったのだ……虹色蝶の繁殖には金がかかる。
そうしなければ研究を続けることは出来ない」
サモンは涙を流して、思いの丈を叫んだ。それにルインは飛び出して、サモンを庇う。
「魔導族の子供……純血ではないようだが。
サモン博士、こんな子供を不正に働かせていたのか? 給料は払っていたのか?」
「勿論、払ってなど無い。そんな金の余裕はないのだ」
「余罪もあるようだな。後で取り調べする必要がある。連れていけ」
サモンはガックリと項垂れた。
縄で拘束されたサモンを連れて行こうとするが、ルインが、それを庇うように飛び出す。
魔導眼を発動させ、真紅の瞳が役人達を示威する。
「サモンおじさんは優しい人間だ。お前達とは違う。
おじさんを連れて行くなど到底、容認できない。ならば私も同罪だ」
ルインは毅然として言った。そうだ。おじさんが悪い人なわけがない。
魔導族であるルインを差別も虐待もせず養ってくれたのだ。
しかし、そんなルインの想いとは裏腹に、役人の長官、バロンは困惑した様子で、
「これは驚いた。子供を洗脳してタダ働きさせていたのか。これはきっと死罪だ」
「ルイン……止めなさい。長官のバロンは王国一の実力者だ。
幾ら魔導眼を持つとはいえ、お前の敵う相手ではない」
ルインはサモンの言葉を無視して、無謀にもバロンに挑む。
凄まじい殺気を伴い猛然と一気に間合いを詰めて、バロンへと迫る。
しかし、バロンは眉一つ動かさず、ルインの額を指で小突いた。
その一撃で、雷が打たれたかのように痙攣してルインはその場に崩れる。
身体が痺れて動かない。これが王国一の実力者……対してバロンは少々驚いた様子を見せる。
「何という殺気……ならば見せしめだ。私の権限で研究所の裏で、
サモン博士を鞭打ち九千回だ。魔導族の娘は大人しく見ているがいい」
サモンは研究所の裏で鞭打ち九千回を受けて、身体が傷だらけになり、息絶えた。
「ルイン……お前ならば世界一の魔物使いになれるさ」
それが、サモンの最後の言葉だった。師匠の最後の言葉を噛み締めた。
ルインは取り押さえられながら、それを無力感に打ちひしがれながら見届けた。
「サモンおじさん……」
ルインはサモンの亡骸を見つめて溢れんばかりの涙を流した。
涙腺が崩壊する程の涙が真紅に染まった瞳から流れ出た。
暫くして、サモンの甥であるドランの迎えが来て、ドランの両親と共に暮らすことになった。
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