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森のおねぇ、大魔王をうっかり倒す

作者: 田島久護

「ぎゃんぎゃぎゃんぎゃん奇跡のおねぇ伝説……フルパワー!」


木々の隙間から木漏れ日が優しく差し込む森の中に低く渋く通る声が響き渡る。

それだけであれば問題無い。ちょっと気持ち高まって訳分からない歌を

歌った記憶は誰にもある。あの超有名声優下野さんだってあるはず。


「掴もう未来と安寧の死! 掴もう愛しの侯爵夫人の座!」


 ツインテールを揺らしながら全体的にはち切れんばかりな状態の真っ赤なワンピースを

着て赤いハイヒールで勇ましく歩くそれは、綺麗なメロディラインに自作であろう

いや自作じゃ無かったら国全体を疑うレベルのかなり病的な歌詞を口ずさみながら

爽やかな森の雰囲気をぶち壊す。これは問題だしダメ。

遠くからうっかり間違えて打たれても文句は言えない。


本人は耽美な顔をしているのに動作と声が勇ましい問題をどうにかしないと

侯爵夫人は無理だろうと誰もが思う残念な人物だ。そもそも無理なのは一回置いておく。


「フラー! ロス! フラー! ロス! ゲルマン魂見せつけろ!」


 ちなみにドイツとは一切関係ありませんし何の思惑もありません念の為ふざけんな。


「どんつくどんどんオラオラヘイヘイ! ……あ、これは良いなメモしよ」


 何も良くない一ミリもメモするものでもないであろう歌詞をワンピースのポケットから

乱暴に取り出したメモとペンでさらさらとしゃがみながら記して行く。全体的に雑。


そんな彼……いや彼女の歌に呼ばれて来たのか爽やかな森にこれまた全く似つかわしくない

禍々しい黒い気を纏いマントも黒く短髪で二本のぐりぐりした角を生やした男が

彼女の前に現れた勇者か?


「おい呪い歌手……お前だお前。この辺りにお前みたいな酷い感性の奴が他に居てたまるか。貴様我が大魔王軍旗下の低級魔族であろう?」


 メモを取り終わりやり切った感を出しつつ徹夜明けみたいな顔をしながら木漏れ日を眩しそうに

見上げていた彼女は、何故か突然現れた大魔王に声を掛けられたが気付かず辺りを見回したので、

綺麗に突っ込まれたざまぁ。


「は?」

「は? ではない我を呪術歌で呼び出すとは無礼であるぞ? 悪魔ですら震えるそのおぞましさ大魔王の我でなければ耐え切れぬわ」


 次の瞬間一陣の風が巻き起こりそれを置いて彼女の逞しい肉体は躍動。繰り出された拳は大魔王を遥か彼方へと吹き飛ばしましたとさ。

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