青い炎
妖怪退治・美女と野獣的な恋愛要素・たまに流血あり(そこまでリアルには書かないです)・女主人公・メインは高校生から・前世からのつながり。
という感じにしていく予定です。よろしくお願いいたします。
わたし、月城飛鳥は生まれつき良からぬモノが見える。それらは正直よくわからない。黒くてドロドロしたような、変なやつだ。妖怪というより、化物…。
わざわざ探さなくても、そこらじゅうにいるから必ず目に入る。昼間はまだ大人しいが、夕方頃になると突然追いかけてくるのだ。
「黒いドロドロの化物がいる!」
そう言っても、他の人たちには見えないらしくからかわれて終わり。母に言ってみても
「きっと気のせいよ。」
と適当に返されてしまう。
父はわたしが物心が付く前からいないらしいし。結局この悩みと恐怖は誰にも理解されず聴いてすらもらえずにいた。
仕方がないので夕方までには家に帰り難を逃れることにした。家の中までは化物は追って来なかった。
それでも学校があるので、どうしても夕方頃に帰る日もある。そんな日はもうダッシュで帰る。
しかしある日、夕方、日が沈もうとしていた時刻のこと。
小学校高学年になる飛鳥は、クラブ活動に参加しなくてはいけなく、帰りが遅くなってしまった。
過ごす日々の中で夕方の帰り道ほど怖いものは無い。母や先生に怒られるよりもだ。
ほんとに一人歩いて帰るか迷った。迎えを頼もうか、いやきっと明るいから大丈夫と言って、迎えには来てもらえないだろう。
怖いなぁ…。
考えていても仕方が無い。意を決し、校門からもうダッシュする。
案の定、黒いドロドロの化物が追いかけてくる。
しかし今日は一段と量が多い。
いつもよりも遅い時間だからだろうか。
学校から家まで徒歩20分。走って15分から10分くらいだろうか。
絶対に帰れる、走り続ければすぐに家に着く…!
そう言い聞かせ、脚を必死に回転させる。
こんなに走って転んでしまわないだろうか。もしここで転んでしまったら食べられてしまうのだろうか…。悪い想像ばかり生まれ始める。
それだけは、嫌だ!!!
さらに脚をを早く回転させる。
そのまま曲がり角を曲がる。
突然、早くなっていた脚を急に止めた。
道の少し先に化物の姿が…。
ここは通れない。冷や汗がでる。しかしそんな暇もなく逃げ道を探す。
道を塞がれる前に逃げなくては。
目を見張る。
家と家の間に細い道がある。
もしかしたら化物は通れないかもしれない!
少し体を斜めにしないといけないが、急ぎ足で通ることができる。
通ったことのない道だが、もしこの先行き止まりだったらどうしよう。
行き止まりだったら、そこで食われるかもしれない。
不安と恐怖の負の感情はつのっていくばかり。
とにかく逃げろ。毎度言い聞かせる。
家4軒分ほどの長さの細い道を抜けると、車は通れないほどの狭い道にでた。
正面と左は行き止まり。右を見ると道はある。
しかし小さな希望の光はあまりにも弱かった。
そこにはまた、化物がいたのだ。
「なんで…」
待ち伏せでもされていたのだろうか。
逃げろと言い聞かせても、逃げ場が無いのなら無意味である。神様はわたしを見ていないのだろうか。
なぜわたしだけが怖い思いをしながら一人逃げなければいけないのだろう。
小さな希望のすらわたしには与えてくれないのか、そう考えると今までの大きな不安、恐怖という負の感情が湧き上がる。ある意味絶望である。溢れそうなその気持ちは涙になりそうなほど。
そのうち後ろから追いかけていた化物もここまでたどり着いてしまった。
挟まれてしまった。
逃げ道もない。
大量の化物たちはわたしの気持ちなんて知らずどんどん迫ってくる。
思わず後ずさるが、すぐに背中が壁に当たった。
「あ……」
迫りくる化物は、物体と物体互いが触れ合うと合体していき、一つの巨大なドロドロになっていく。
ズイッと目前に胴体傾けてくる。
「巫女ノ子?巫女ノ子。攻撃シテコナイゾ。イイニオイネ。美味シソウダ。」
一つの胴体から個別に存在するような喋り方。
声なんて初めて聞いた。
すごく重苦しいような、耳に圧迫感が残るような不気味な声だ。
やがて、うようよとうごめく怪物はから大量の目が現れ、ギョロっとこちらを睨む。
さらに大きな口が開かれ、笑みを浮かべる。
大量にいた怪物は完全に一つの怪物へと成り果てたのだ。
「アハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
大きな高笑いが空気を大きく震わす。
「弱イ癖ニ霊力ダケハ高イヨウダナ!!ウマソウダナ…!ウマソウダナァ!!!!アッハハ!!!」
この笑いは歓喜だ、わたしを食べれるという。
空気と共にわたしの体も震える。
「巫女ノ子!巫女ノ子ォ!!!!」
大きく開かれた口がわたしを包もうとする。
食べられる…!!!!
反射的に目をつむり、顔の前に腕のガードを張る。
その時だった。
ブワァァァァァ!!!!!!
何かが燃え上がるような大きな音に驚き目を見開く。
「アッツゥウウウウウウウウイイイイ!!!!」
青い炎だろうか。怪物の体から噴き出していた。
叫ぶまま後ずさり、そのまま後ろに倒れてしまった。
いったい何があったんだ…?
熱い熱いともだえる怪物を見ていると、突然私の視界に青い光が現れる。
「いやぁ!!」
驚いて体が縮こまる、ハッと前を見ると、そこには宙に浮く青い火の玉が。
何だこれは…。味方…いや、こいつも化物と同じ…!
火の玉がゆらりと近づいてくる。
っ…!燃やされる!!
少し離れていても熱いのに、近付かれるとさらに熱い。
身構えた瞬間だった。
「見ツケタ。」
火の玉はわたしの目前で止まった。身構えたまま火の玉を見つめる。
また、喋った…。
その声は低い声だった。化物の似て非なるような声ではあったが、先程の不気味な印象は無く、どこか落ち着くような声でもあった。
「お前ノ体ヲ貸セ。ソウスレバお前ヲ守ッテヤレル。」
守る……?
この火の玉が???
実際危機状態だ。助けてくれる、しかも守ってくれるなんて…。
しかし体を貸したらどうなるのだろう。貸した瞬間燃やされるのではないだろうか。
どうしたら……。
迷っていると、火の玉の後ろで怪物が動き出した。
ドロドロの皮膚を燃やしていた炎は徐々に消えていき、今にも起き上がろうとしていた。
早くしないとホントに殺されてしまう!!
焦りが口を動かしていた。
「わかった!!体を貸すから!!わたしを守って!!!!」
叫んだ瞬間わたしの体を青い炎が包み込んだ。
そこで私の記憶は途切れた。
ただ薄っすらと、夢を見ていたような、消え入りそうな光景。
青い炎の中でドロドロと溶けていく怪物。
自身の手のひらをまじまじと見ていた……。
目を覚ますと、そこは見知らぬ敷き布団の上だった。