復讐者
俺は気が付くと辺り一面が真っ白な空間を落ちる感覚だけを感じていた。
「ウワーーァーーー・・・、ン?、落ちる感覚が止まった、浮いてるのか?、ここは何だ?、ここは、いや、そんな事より俺は、・・・、そうだ!、確か乗っていたバスが崖崩れに巻き込まれ崖に落ちた、・・・はず、・・・アァ、俺は死んだのか」
「はい、今は魂の状態です、落ち着きましたか?」
声に気付くと、いつから居たのか近くに人が居た。
声のする方を良く見ると背中に翼が有り頭に光る輪っかを浮かべた正に天使の格好をした女性がいた。
「貴方のその姿は天使ですか?」
「いいえ貴方の言う天使ではありません、この世界を管理している管理神の一柱で召喚魔法を管理している神です」
「私はやっぱり死んだのですか?」
「はい、この世界のアークレイ王国が行なった勇者召喚に巻き込まれた事で亡くなっています」
「召喚に巻き込まれた?、いや、今はそんな事より私の家族はどうなったのですか?」
「お亡くなりになり元の世界の輪廻の中に入りました」
「私だけ?、何故、なぜ私だけここにいるのですか?、私も死んだのなら家族と共に輪廻に返してください」
「申し訳ありません、それは出来ないのです。
本来は魔法の有る世界に来る事を望んでいる勇者願望が強い方を1人だけを魔王を倒すべく勇者として神隠しのようにしてこの世界に呼び出します、
しかし、今回の勇者召喚は禁忌としていた改変が成されました、召喚陣に手を加える事を禁忌としていたのにです。
召喚国により召喚術式を勇者を複数を召喚する様に変えて召喚が行われました、それにより3人の勇者が召喚されました。
その御三方は事故が召喚によるものである事も他の方が魂だけ来てることも知りません、事故から召喚により助けられたと思っています」
「事故が何だって?」
「今回の召喚は、その周りにいた複数の人を巻き込んで発動しました。
消える勇者が分からない様に、崖崩れを起こて死体がわからなくなる様な事故を起こし、3人の勇者を無理矢理に神隠しの様に消えた形にしたようなのです。
更には死んだ魂の中で魔法適性がある方をも巻き込み、此方の世界に引っ張り落としてしまいました。
貴方の居た世界とこの世界は一方通行で例え上位の世界の魂でも下から上の世界には戻れないのです」
「オイ、フザケルナよ!、お前の管理している世界の人間が、関係無い複数の人を勝手に巻き込んで事故に見せかけて殺し、更には別世界に落とし元の世界で死ぬことも出来ないなんて許されると思ってるのか!」
「出来る限りの事はします、望むならこの世界で貴方の魂に合った身体もお創りします、その身体で復讐してもけっこうです、
許して欲しいとは言いません、この世界が許せないなら新たに魂に合わせて創る、若く頑丈な身体で世界を破壊しつくしても文句は言えません、
ですが、どうか、どうか罪の無い人々は許して貰えまないでしょうか?」
「・・・他にこの世界に魂だけ落とされた者はどう言ってるんだ」
「3人の方がこの世界に生き返りを望み、力を付けてから召喚した国を滅ぼす御つもりの様です。
他の方は記憶の一部を消して私達と同位の神が管理する異世界に転生する事を望みました」
「同じ下位だが別の異世界か、ならこの世界を完全に潰しても巻き添いにはならないな、処で、俺達には復讐するだけの力が有るのか?」
「・・・有ります、ただ、上位世界の魂に合わせた若く強い体とは言え、身体を鍛え、魔力量を更に増やしそれを制御する事が必要ですが」
「分かった、この世界のあらゆる知識を寄越せ、あと、他に新たな身体で生き返りを望み、復讐を選んだ者と話しがしたい」
「分かりました、いま知識をお渡しします、若い身体の作成を始めますから、肉体は魂に慣れやすい14歳前後になります肉体に精神が合わせる形になりますので、今までの年相応の感じが徐々に幼く変わって行きますが御了承下さい、では、他の方の同意が得られましたので、此方にお呼びします」
3つの光る玉が現れ、周りに薄っすら幽霊みたいに人型が見える。
「初めまして、私は佐藤はじめ35歳の会社員です、今から下りる世界で違和感を無くせば、・・・シン、これから冒険者風に呼び捨てでシンと呼んで下さい」
「私は田中さちえ、100歳ちょっとよ、頂いた知識だとサチがしっくりきますので気軽にサチと呼んでくれると嬉しいわ」
「僕、いや、オレは中谷こうや、呼び名はコウかな?、前は8歳だ」
「私は初鹿野みう10歳です、呼び名はミウのままで問題無いと思います、よろしくお願いします」
「皆んなはこの世界の知識は貰った?」
「あのー、申し訳ありません、知識の事なんですが」
「何だ!、この上渡さないとか言わないよな!」
「勿論お渡しします、いいえ御渡ししました、したのですが、身体に入る知識のスペースに全部は入りませんでした、
一般常識や必要な知識から優先にしますとシン様で8割、サチ様で5割、ミウ様で6割、コウ様で7割になってしまいます、
残りの知識は本にして御渡しするので、どうかお許し下さい」
「チッ、無理なら仕方がない、それでいい、えーと、知識だと魔法属性は2つまでみたいだが、選べるのか?」
「シン様は土は決定です、貴方方の世界の錬金術に近い物です、サチ様は水、液体を操れます、コウ様は火、温度を操れます、ミウ様は光、浄化や光を生み出す事が出来ます、
後1つは風が1番相性が良いのでそれをお勧めします、他の物は反発してどっち付かずに成りますし、同一のダブルは本来有り得ません、発動すれば暴走して死んでしまいますので選ばないでください」
「その様だな、ならば全員2つ目は全員が風にしてくれ」
「分かりました、申し訳ございませんがこれ以上この空間を維持し続けると貴方方に御渡しできる魔力が少なくなってしまいます、
安全な場所に御送りします、皆様の知識にある場所なので安心して下さい、では私はこれでお別れです、私は神力切れで暫く休眠に入ります、
10年は力を完全には取り戻せないでしょう、我がままを言わせて貰えば、この世界がまだあり続ける事を願っています、では良き人生を」
俺達は転移した様で崖に囲まれた聖地に降り立った。
得た知識によれば、神に許可された者以外は出入り出来ない結界の中に在る場所で危険な魔物は存在しない場所らしい。
サチさんは中学生位、ミウとコウは小学5、6年ぐらいに見える、自分のステータスを見ると
名前:シン
年齢14歳
肉体魔力量:10/100
魔力量:500/500
魔法:土・風
称号:無し
エッ?、これだけ?、確かに得た知識でもこれだけみたいだけど・・・。
なんかもっとズラズラ出るもんだと思ってた。
まぁ当たり前か、力とか体力とかを数値にしても、変動が大き過ぎて意味ないか。
えーと、肉体魔力は魔力を使った肉体強化値つまりは常時の肉体強化か、これはこれから身分証を得る為になる冒険者としては当然の強化で、隣の最大強化値は一般の10倍だな、あとこれは魔力制御を出来れば出来るだけまだまだ上げられる様だな。
魔力量は一般の50倍、これも枯渇寸前まで使えば使うだけでまだ増やせられるのか、化け物じみてるな、まぁ知識的にこの2つを上げるのはかなりの苦痛が有るみたいだな。
「みんなは自分のステータスを見た?、確か知識によればパーティーになればお互いのステータスが見れる筈だから俺がリーダーで申請を飛ばすから受けてくれ、編成を終えたらお互いに見てみよう」
皆んなが頷き、称号が無名のパーティーリーダーになり、メンバーにサチ、ミウ、コウとなった。
皆んなの年齢はサチが同じ歳でミウとコウが13歳だった、冒険者登録が出来るのは仮が12歳、本登録が15歳の筈だから俺達が本登録出来る1年は此処で鍛える必要があるな。
強化値と魔力量は同じだが最大強化値はサチさんが50、ミウとコウは40だった、これは元の身体による違いみたいだ。
「みんなに聞いておきたい事なんだが、復讐対象に付いてだ、勇者召喚はこの世界からは無くせないようだからその事は念頭にして聞いておきたい。
先ずは俺から言おう、俺は今回の歪められた勇者召喚を2度と使われない様に、この世界から完全に消去したい、
関わったこの世界の人の全てと歪められた勇者召喚魔法の資料の全てだ、後にやろうと思う気も起きない位に完膚なきまで周りも巻き込んで消し去りたい」
「私はこんな事を許すこの世界の体制を壊したいわ、国を預かる者が、こんな他力本願な物に頼ってるなんて事が、間違いの元よ。
しかも知識の中に勇者を騙し他国の戦争に使った記録が有ったわ、今回の召喚もその考えで呼び出したに違いないわ、
全ての国の権力者にこんな馬鹿な考えの人がいたら、その権力者を許したくないわ」
「俺は父さんと母さんと妹を殺した奴に、仕返しをし
たい」
「私は・・・父を殺された憎しみも有りましたが、それよりも死にたくなかった、まだ生きたかった、死んだ母との約束を守り、精一杯最後まで生きたかった、だから私のままでこの世界に留まる事を選びました」
「成る程、ならば魔物がいる世界で精一杯に生き残る為に、此処で冒険者登録出来る年齢になるまでの1年間だけ力を付ける。
1年経ったらこの場所を出て、権力に縛られず、他国にも自由に行ける冒険者になる為に冒険者ギルドに入る。
冒険者としてこの世界の常識に慣れながら力を蓄える、そして、国を移動し易いCランクまでパーティーランクを上げてから復讐の開始だ。
Cまで上がったら旅をしながら町や村に立ち寄り、サチの要望を叶える為、腐った権力者がいたら排除しつつ召喚をした国のアークレイ王国を目指す。
アークレイ王国で今回の勇者召喚の関係者を調べ、召喚された勇者を今後も政略戦争に利用されない様にする為にも、勇者召喚を利用しようなんて思わない位に完全に根絶やしにするまで復讐する」
「兄ちゃん、ダンジョンに生まれた魔王はどうするんだ」
「私としては魔王は放置したいわ、ミウの為に世界が滅びるのは困るけど、馬鹿な召喚をした国の助けに成りたくはは無いわ」
「私も、助けたくない国の為に勝てないかもしれない相手に危険を冒してまで戦いたくありません」
「俺としたら各所にあるダンジョンには冒険者の役割として、そして強く成る為にも入るつもりだ、だが、魔王の居るダンジョンには入らない、
魔王のいるダンジョンの周りに在る勇者召喚した国が魔境になるだけらしいから、世界的には直ぐ滅びはしないだろ、
アークレイ王国が滅び勇者が全滅して、魔王を倒さないといずれはミウの目的の生き抜く為には不味いかもしれないが、
幸い魔王はこの世界に一体だけしか生まれないそうだから、オレらが簡単に勝てる様になるまでは放置だな、
ダンジョンについてはこんな方針でいいか?」
「いいわ」「賛成ー」「気遣ってもらいありがとうございます」
「それでは皆んなで協力し合って、頑張って行きましょう」
「えぇ」「オーウ」「はい」
これから復讐が始まるのに、何だかみんな明るいなー。
これって、身体に精神が引っ張られたからなのか?、元の性格がみんな明るいからなのかはわからないが、アットホームな感じで凄い楽しい。
俺自体は確かに自分よがりで召喚し、家族を殺し、死んだ後も引き裂いた奴らは憎い、必ず召喚を後悔させてから殺す事は決定だ。
どうも、奴等を殺すのに忌避感が無いのは知識にある「盗賊や山賊は殺すのが当たり前」と言う感覚が新たな身体にあり、俺の感覚では召喚した奴やそうした性格の貴族もそれに該当するらしい、
他の3人も俺と同じか分からないので、見たり聞いたりして確認して行こうと思う。