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グランドスター  作者: 東メイト
第三章 モルグス帝国編
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第9話:アマゾネス部隊

ザケルの砦ではフィザーク将軍が忌々しそうにワイングラスを投げつけていた。

(フィザーク将軍)

「何という事だ。ぺテルギアの砦が落ちてしまうなんて……レクサーは一体何をやっていたのだっ!」

(モルグス兵)

「いかがいたしましょうか、フィザーク将軍?」

(フィザーク将軍)

「スフィアのアマゾネス部隊をここへ呼べっ!」

(モルグス兵)

「はっ!直ちに……」

モルグス兵は急いで将軍の間を出ていた。それからしばらくして何人かの女性兵士達が入ってきた。

(スフィア)

「お呼びでしょうか、フィザーク将軍?」

(フィザーク将軍)

「ふ……相変わらず、そなた等は美しいな」

フィザーク将軍はいやらしい視線をスフィアに向けた。

スフィアはその視線を不快に感じながらも平然を装っていた。

(フィザーク将軍)

「どうだ?そろそろわしの為だけに仕える決心はついたかな?」

(スフィア)

「将軍……その様な事で私達をお呼びになったんですか?」

スフィアは鋭い目付きでフィザーク将軍を睨みつけた。

(フィザーク将軍)

「いっ、いや、違うっ!お前のアマゾネス部隊にはこの砦の警備と逆賊カナンに奪われたぺテルギアの砦を取り戻して欲しいのだ」

(スフィア)

「はっ!承知いたしました。この砦にはファミーラを警護に置いて行きます」

(フィザーク将軍)

「おお、そうか……そなたの妹をこの砦にな。それでは姉妹ともども活躍を期待しておるぞ」

(スフィア)

「それでは行って参ります」

スフィア達はザケル砦の外へと出ていった。

(ファミーラ)

「はぁ、相変わらず。むしずがはしる嫌な男だったわ、お姉様」

(スフィア)

「えぇ……そうね。あんな奴だけど私達の上官よ。口答えは駄目」

(ファミーラ)

「はい、分かっております。それよりお姉様はフィザーク将軍と結婚する気なのですか?」

(スフィア)

「あんな奴を結婚相手にする気はないわ。それに私は一生騎士でいようと考えているから結婚の事すら考えてないわ」

(ファミーラ)

「それなら私も一生独身を貫こうかな。私はお姉様の様な騎士になりたいの」

(スフィア)

「そこまで思ってくれてありがとう。それじゃ、砦の警備よろしくね」

(ファミーラ)

「はい、お姉様。ここは任せてください」

スフィアはアマゾネス隊を率いてカナン達の討伐に向かった。

(スフィア)

「カナン皇子か……ファミーラには戦わせられないわね」

スフィアは密かに呟いた。


その頃、カナン達はザケルの砦の近くの谷を通っていた。しばらくするとカナン達は谷の反対側のスフィアのアマゾネス部隊を発見した。

(アースティア)

「あれは……スフィアお姉様っ!」

(カナン)

「あの人もアースティアが知ってる人なの?」

(アースティア)

「えぇ……スフィアお姉様は私がまだ小さかった頃、私とよく遊んでくれた人なの。とても強くて、とても優しい人で私の憧れの人だったの……」

(カナン)

「そうなんだ……だったら戦わずにこの場をやり過ごしたいね」

(アースティア)

「それは無理かもしれないわ。だって、スフィアお姉様はとても意志の強い人だったから……レクサーの様に……」

アースティアはレクサー将軍の最後を思い出して言葉が止まった。そして、目尻に涙を浮かべた。

カナンはアースティアの頭の上に手を置いた。そして、何も語らずにアースティアを優しく見つめていた。

その頃、スフィアもまた谷の反対側からアースティアのことを発見していた。

(スフィア)

「そんな……あれはアースティア様。どうして、この様な所へ?」

(アマゾネス兵)

「どうかなさいましたか、スフィア様?」

(スフィア)

「いや、何でもないわ……」

言葉とは裏腹にスフィアの顔色は明らかに良くなかった。そして、スフィアのアマゾネス隊と戦闘が始まった。


崖際の戦いということもあり、戦える場所が限られていたため、お互いに一進一退の消耗戦を繰り広げていた。

そんな最中に突然、崖の上から無数の岩石が転がってきた。

(スフィア)

「……危ないっ!」

降ってきた岩石がアースティアに当たりそうになった瞬間、先陣で指揮を取っていたスフィアはアースティアを庇って背中に岩石が命中した。その結果、脱臼を起こし気を失ってしまった。

スフィアが目を開けた時は宿屋のベットの上で横になっていた。

(スフィア)

「ここは……私は一体どうなってしまったの?」

(アースティア)

「気がついたのね、スフィアお姉様っ!」

アースティアは嬉しさのあまり我を忘れてスフィアに抱きついた。

(スフィア)

「痛っ!」

(アースティア)

「あっ!ごめんなさい。スフィアお姉様の肩は脱臼していたのに……」

アースティアは落ち込んでしまった。それを見たスフィアはアースティアの頭に手を乗せると優しく撫でた。

(スフィア)

「……大丈夫ですよ、アースティア様。だから、そんなに落ち込まないで下さい」

(アースティア)

「ありがとう、スフィアお姉様。それとあの時、岩から私を助けてくれてありがとう」

(スフィア)

「いえ……当然の事をしたまでですよ」

(アースティア)

「あ、そうだ。スフィアお姉様、ちょっとここで待っててください。

カナンを呼んできますから」

アースティアはカナンを呼びに言った。そして、カナンを連れて部屋に戻ってきた。

(カナン)

「スフィアさん、お体の方はもう大丈夫ですか?」

(スフィア)

「お気遣いありがとうございます、カナン皇子」

(カナン)

「いいえ、こちらこそ。アースティアを岩石から助けてもらいありがとうございました」

(スフィア)

「アースティア様は私にとって大事な方です。当然な事をしただけです」

(アースティア)

「えっ、私が?どうして、私が大事な方なの?」

(スフィア)

「幼い頃に私はアースティア様に助けて頂いた事がありますから」

(アースティア)

「そんな私がスフィアお姉様を助けた事なんて……」

(スフィア)

「私が病気になって熱が全く治まらなかった時、アースティア様が私の為に必死で薬草を取ってきてくれた事ですよ」

(アースティア)

「あれは……フローネお姉様が取ってきた物で私なんか邪魔にしかなってなかったのに……」

(スフィア)

「そんな事はありません。私の為に薬草を取りにいって頂いただけでも十分に嬉しかったです」

(アースティア)

「そんな……スフィアお姉様……」

アースティアは顔を赤くさせると嬉しそうに照れていた。

(カナン)

「アースティア、僕はそろそろ崖の道の復旧作業に戻るよ」

落ちてきた岩石の影響でカナン達が戦っていた場所は完全に塞がってしまい、通れなくなってしまっていた。そのため、アマゾネス部隊との戦闘は中断されて休戦状態となっていた。

(アースティア)

「だったら私も行くわ」

(カナン)

「いや、アースティアはいいよ。もっとスフィアさんとお話をしていたいだろうから」

(アースティア)

「ありがとう、カナン」

(カナン)

「それじゃ……」

カナンはその場をアースティアに任せると崖の復旧作業へと戻っていった。そして、アースティアは今まであった辛かった事などをスフィアに打ち明けた。

(スフィア)

「……そうですか。アースティア様はとても苦労なされていたのですね」

(アースティア)

「えぇ、ここまでの道程は私にとって、とても辛かった……フローネ姉様の事……お父様の事……レクサーの事……そして……カナンの事……本当に色々あったわ。だけど、私には私を支えてくれる仲間がいた。だから、ここまで来る事ができたの」

(スフィア)

「アースティア様は本当に良い仲間達に出会えたのですね」

(アースティア)

「えぇ、皆、大切な仲間……そして……スフィアお姉様も私にとっては大切な人。だから……スフィアお姉様と戦いたくないの。お願いっ!私達と一緒に来てっ!」

(スフィア)

「……」

スフィアは口を閉じたまま沈黙を保っていた。

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