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グランドスター  作者: 東メイト
第一章 メルトア王国編
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第3話:脱出…そして、旅立ち

辺りの音がしなくなった頃、レクトルは目を覚ました。

(レクトル)

「うっ……うっ……ここはっ!」

(カナン)

「やぁ、レクトル……気がついたようだね。ここは地下牢の中だよ」

カナンはレクトルが倒れた後の事を話した。そして、レクトルに頭を下げていった。

(カナン)

「レクトル、本当にすまなかった……僕のせいでこんな事になってしまって……」

(レクトル)

「とんでもございません。お顔をお上げ下さい、カナン様っ!私はカナン様にお仕えできた事を心より誇りに思っております。カナン様の判断は何も間違ってはいませんよ。とても立派だったと思います」

カナン達が話をしていると突然、階段を降りて来る人の気配がした。

その気配はこの牢屋のそばにまで近づいてきた。そして、そこに表れたのはアースティアの世話役であるキリトであった。

(キリト)

「見張りご苦労でした。交替の時間です」

(見張り兵)

「そうですか。ありがたい。それではよろしくお願いします」

見張りの兵は地上の方へと登っていった。

(キリト)

「……もういいですよ。アースティア様、出てきて下さい」

物陰に隠れていたアースティアが顔を覗かせた。

アースティアはカナンともう一度話をする為に部屋を密かに抜け出し、キリトに頼んでここまで連れて来てもらったのだった。

(アースティア)

「本当にごめんなさいっ!私のせいでこんな事になってしまって……」

(カナン)

「いや……気にしなくていいんだよ。アースティア、これは僕が望んでした事だから」

カナンは悲しそうに瞳を潤ませるアースティアの方へと手を伸ばすと優しく手を触れた。

(カナン)

「こうなる覚悟はしていたから。だから、泣くのは止めなよ。君が泣いているのを見ると僕が辛いから……」

(アースティア)

「うん……分かっているけど……涙が止まらないの」

(カナン)

「アースティア、こっちへ」

カナンはアースティアを牢屋の方へと呼び寄せると彼女の瞳に溜まった涙を優しく拭った。

(カナン)

「さぁ、笑って……アースティアは笑っている方が可愛いよ」

カナンはアースティアを笑わせようと明るく微笑んだ。

(アースティア)

「実はね、カナン……私、あなたがモルゴスの砦に行く前にレクトルさんと話している事を聞いてしまったの……」

(カナン)

「そうなんだ……」

カナンはアースティアが何を気にしているのかを知ると表情を曇らせた。

(アースティア)

「私、正直言ってとても驚いたわ。なぜなら、私のお父様のせいであなたは家族を亡くして、その上、国まで追われて。私のお父様がこの国に攻めて来なければ、あなたは幸せだったはずのに……」

アースティアは再び目に涙を浮かべながら話を続けた。

(アースティア)

「そう考えた時、私はとても泣きたかった。それなのに……あなたは……私にとても親切にしてくれたわ。どうして?どうして、そんな事ができるの?って思ったわ」

(カナン)

「どうしてって聞かれて答えられる事じゃないよ。言葉にして言えば『仲間だから』とも言えるけど……そんな理屈が無くても僕はこうしていたと思う」

カナンは再びアースティアの涙を拭うと笑顔を浮かべた。

(カナン)

「それに……アースティアが自分を責める事はないよ。君が僕の家族を殺した訳じゃないだろ?」

(アースティア)

「だけど、カナン……私のお父様が憎いんじゃないの?」

(カナン)

「そうだね……憎くないと言えば嘘になるだろう。だけど……憎しみからでは何も救えない」

(アースティア)

「その言葉は……」

(カナン)

「そうさ、アースティア。僕が君に言った言葉だよ。それにもし君の父上が攻めて来なかったとしても幸せになっていたかは分からない」

(アースティア)

「どうして?」

(カナン)

「なぜなら……今の僕にとって君やレイニード達に会えた事が幸せな事のひとつだからね」

(アースティア)

「本当に?本当にそう思ってくれるの?私に出会えた事が幸せだと……」

(カナン)

「当然さ」

カナンは屈託のない笑顔でアースティアに笑いかけた。

(アースティア)

「何時だってそうなのね、カナンは……いつも他人の事を考えて自分の事は後回しなんだもん」

(レイニード)

「まったくだぜ。そこまで俺達の事を思っているくせに……何が俺達とは無関係だよ」

アースティアの背後からレイニード達がやって来た。

(カナン)

「レイニード、それにデライト、ティラミスさんまで……どうしてここに?」

(レイニード)

「どうしてじゃないぜ。言ったはずだぜ、俺達は兄弟だってな。だから、お前を助けに来たに決まっているだろう」

(デライト)

「そうだぜ。みずくせぇ、お前がいなければ寂しいだろう」

(ティラミス)

「乗りかかった船だ。……それにあのままお別れだとカナン殿があまりにも不憫だと思ってな。一緒に助けに来たのさ」

(カナン)

「みんな……僕の為にありがとう……」

カナンは感動で言葉を詰まらせながらお礼を述べた。

(キリト)

「さぁ、早くこちらへ……」

キリトはカナン達の牢屋の鍵を開けると逃げることを促した。


カナン達が場内に上がるとすぐに兵士達に発見されて脱獄がばれてしまった。

カナン達は急いで城の外へと走った。外に出るとレクトルとキリトが城門の前で立ち止まった。

(レクトル)

「どうやら同じ事を考えているようだな?」

(キリト)

「ええ、分かっています。私もここで足止めをします」

レクトル達は殿を買って出た。

(カナン)

「何をしているんだ、レクトル?早くこっちへ来るんだっ!」

(レクトル)

「カナン様、私とキリトでここは抑えます。ですから、その間にボルゴの港へお向かい下さい」

(カナン)

「駄目だっ!レクトルは怪我をしてるじゃないか。ここで僕の為に死ぬ気なのか」

(レクトル)

「いいえ、違います。この程度の傷で死ぬ程、私は柔ではありません。ここで少し時間を稼いだ後はすぐにカナン様の後を追います。そして、これから先もカナン様をお守りいたします。ですから……ここはこの者と私にお任せ下さい」

(キリト)

「ここは私達を信じて先にお進み下さい」

キリトはレクトルの言葉に乗っかるようにアースティアに逃げるよう説得した。

(レクトル)

「ティラミス様、どうか、カナン様達の事をお願いいたします」

(ティラミス)

「……承知した。できる限り力を尽くす」

ティラミスはカナン達を連れてボルゴの港へと向かった。

(レクトル)

「すまないな……祖国を裏切る様な真似をさせて……」

(キリト)

「別に気にしないで下さい。これもアースティア様の笑顔の為です。それにあなたも同じような理由でしょうから」

(レクトル)

「そうだな、お互いの主君の為に頑張って時間を稼ごうっ!」

レクトル達は後続の敵兵を次々に払倒していった。


カナン達がボルゴの港へ向かっていると途中にラルグの砦が見えてきた。

ラルグの砦には『ラングスの鉄の壁』と言われているレクサー将軍が守護を任されていた。

レクサー将軍はとても温和な性格で自分から攻撃を仕掛けるような人ではなかった。けれど、外から来る侵略者には決して道を譲る事はない人物でもあった。

アースティアは遠くからレクサー将軍の姿を確認した。

(アースティア)

「あの砦を守っているのは……レクサーだわ」

(カナン)

「どうしたんだ、アースティア?」

(アースティア)

「カナン……もしかしたら、あの砦で戦わずに先に進む事が出きるかもしれないわ」

(カナン)

「それは本当なのかい?」

(アースティア)

「えぇ、だってあそこにいるレクサーは私が小さい頃、よく私の為に遊んでくれた人なの。だから……話ができる事ができれば説得する事ができるかもしれない」

(カナン)

「そうか。だったら、その作戦で行こう。できるだけ無益な争いは避けたいからね」

そこでカナン達はアースティアの援護をしながらラルグの砦まで向かい、砦の前で白い旗を掲げた。すると砦の門が開き、中からレクサー将軍が出てきた。

(レクサー将軍)

「おなつかしゅうございます。アースティア様、ずいぶん成長されましたな」

レクサー将軍は両手を拡げると懐かしげにアースティアに近づいてきた。

(アースティア)

「えぇ、レクサーも元気そうで何よりだわ。実は……私達はお父様に追われているの。だから、ここを通して見逃してくれないかしら?」

(レクサー将軍)

「なんと国王様に……それはまた、なぜそのような事に?」

アースティアは手短にこれまでの経緯について説明した。

(アースティア)

「……と言うわけなの。それでここを通して欲しいの」

(レクサー将軍)

「そうですか……そういう事情で国を追われるはめになったのですか」

レクサー将軍は困った表情を浮かべるとしばらくの間、口を閉じていた。

(レクサー将軍)

「……分かりました。どうぞ、この砦をお通り下さい。ただし……次に戦場で出会う時はこの様な手助けはいたしません。覚悟しておいて下さい」

(アースティア)

「どうして、どうしてなの、レクサー?私達と一緒に付いて来てくれないの?」

(レクサー将軍)

「なりませんっ!私とて騎士のはしくれ。ここには私が守らなければならないものがたくさんあります」

レクサー将軍は渋い顔を横に振りながらアースティアの申し出を断った。

(レクサー将軍)

「それに……騎士は一度の情けは許されても二度目は許されません。ですから……次に戦場で再会する事があれば容赦はいたしませんぞ」

レクサー将軍はカナンの方を見ると目付きを尖らせた。

(アースティア)

「どうして?私がレクサーと戦わなければならないの。そんなの絶対に嫌よっ!」

アースティアに泣きつかれたレクサー将軍は辛そうな顔をしていた。それを見かねたカナンがアースティアに言った。

(カナン)

「アースティア……もういいよ。騎士には譲れない思いがあるんだよ。

ここはレクサー将軍の好意に甘えて先に急ごう」

(レクサー将軍)

「カナン様……お心遣いありがとうございます」

(カナン)

「レクサー将軍、あと二人……あと二人だけここを通る者がいるのでどうか、その者達にも道をお通し下さい」

カナンはレクトルとキリトのために道を通してもらえるようにお願いした。

(レクサー将軍)

「……承知いたしました」

カナン達はボルゴの港へと急いだ。


その頃、ラングス城の方ではレクトルとキリトがボルゴの港を目指して馬を走らせていた。

(レクトル)

「もう、そろそろカナン様達がボルゴの港に着いている頃だと思うのだが?」

(キリト)

「さぁ、どうでしょうか?……まぁ、時間は十分に稼いだと思いますが……」

レクトルとキリトの後にはたくさんのラングス兵が追って来ていた。

そこでレクトルとキリトは時折、後ろを振り返っては敵を倒しながらボルゴの港へと進んで行った。そして、レクトル達がボルゴの港へ到着するとそこにはカナン達が待っていた。

(レクトル)

「カナン様、約束通りにここへ到着しました。さぁ、速くカトレア国行きの船に向かいましょう」

レクトルはカトレア国行きの船の方を指差すとカナン達を案内した。こうして、カナン達はカトレア国へと出航したのであった。

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