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グランドスター  作者: 東メイト
第五章 フルーレ王国編
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第27話:嵌められた皇子

カナン達はサンストー砦の付近でトライ竜騎士団と戦っていた。

竜騎士団を率いるトライはフルーレ国の第一皇子であり、カナン達が自分の父親を殺したのだと強く信じ込んでいた。

(トライ)

「よくも我が父上を殺したなっ!我は貴様達を絶対に許さないっ!」

トライはカナンの返答を聞きもせず、カナン達に攻撃を始めた。カナン達は訳もわからないまま近くの岩の陰に散らばって隠れた。

(カナン)

「あの人は一体何であんなに怒っているのだろうか?それに……父親殺しとは一体どういう事なんだろうか?」

(レクトル)

「さっぱり、理由が分かりません……ですが、今は応戦するしかありません。このままではこちらが全滅してしまいます」

(カナン)

「そうだね……とにかく戦いながら説得するしかないみたいだね。レクトル、皆にできる限り傷つけないように応戦するように伝えてくれ」

(レクトル)

「分かりました……」

レクトルは岩の陰から飛び出すと他の仲間達にカナンの言葉を伝令してまわった。

(カナン)

「さてと……」

カナンは深呼吸して気持ちを落ち着かせると岩の上に姿を現した。そして、トライに呼び掛けた。

(カナン)

「……きいてくれっ!僕がカナンだっ!僕はあなたと話がしたいっ!」

(トライ)

「貴様がカナンか……よくも父上を殺したなっ!」

トライはカナンに狙いを定めると一直線に突っ込んできた。

(カナン)

「はあああっ!」

カナンは気合いを込めると岩に剣を突き立てた。そして、トライの攻撃を真っ向から受け止めた。

(トライ)

「ぐっ……我が槍を受け止めるとはやるな……だがっ!」

(カナン)

「うわあああっ!」

トライが力を込めるとエルブストレイクから炎が吹き出して岩もろともカナンを吹き飛ばした。

(トライ)

「我が炎の槍……エルブストレイクをもってすればこれくらいのことなど造作もないっ!」

トライは炎をまとったエルブストレイクを振り回すと再びカナンに向けて構えた。

(カナン)

「やはり……強いな。だけど……」

カナンはよろめく身体に力を込めると毅然とした態度でトライに立ち向かった。

(カナン)

「僕には……あなたが何を言っているのか分からないっ!」

(トライ)

「我の言っている事が分からないだとっ!我はお前が殺したフルーレ王の第一皇子だっ!」

(カナン)

「僕は断じてフルーレ王など殺していないっ!」

(トライ)

「嘘なものかっ!その証拠にフルーレ城から国王が殺害されたという伝令が届いたぞっ!」

(カナン)

「僕はフルーレ王にはとても感謝している。フルーレ王は僕達に休む場所をくれた。それに……このホーリーエンダーを信頼の証として僕に預けてくれました」

カナンはフルーレ王から授かったホーリーエンダーをトライに見せた。

(トライ)

「そっ、それは……確かにホーリーエンダーだ。……貴様は本当に嘘をついていないのか?」

(カナン)

「僕は嘘など言っていないっ!僕は真実を言っているだけだ。もし、信じられないというのなら……あなた自身が僕の覚悟を知ればいい」

カナンは大の字に両手を開くと剣を手放した。そして、カナンは目を閉じてトライに対して無防備な態勢を見せた。

(トライ)

「……」

トライはエルブストレイクを構えたままカナンへと詰め寄った。

(???)

「お待ち下さい、トライ皇子っ!その方を殺してはなりませんっ!」

(???)

「その方は無実です」

(トライ)

「分かっている……」

トライはカナンのすぐ近くに槍を突き立てると膝を付けて腰を折った。

(トライ)

「カナン皇子……お前の覚悟はしっかりと見届けた……」

(カナン)

「それじゃ……」

(トライ)

「ああ、これ以上の戦闘行為は行わない」

トライは拳を天高く突き上げると即時戦闘を中止するように合図した。

(カナン)

「分かってもらえて良かったです」

(トライ)

「それにしても……見事な覚悟だったぞ。あの状況で全く身体を動かさないなど普通の者には決してできるようなことではない……」

(カナン」

「それほどの事でもありませんよ。僕は自分の信念をただ貫いただけ

ですから。それに……あなたならきっと分かってくれると信じてましたから」

(トライ)

「カナン皇子……その信じる気持ちは大変素晴らしいが、もう少し人を疑う事を覚えた方がいいぞ。じゃないと命がいくらあっても足りぬからな」

トライは豪快な笑い声をあげるとカナンの肩を叩いた。

(カナン)

「……肝に命じておきます」

(トライ)

「それで……お前達はどうしてこんな所にいるのだ?サーモント、ルーファス」

トライは突如現れた来訪者達の方に視線を向けた。

(サーモント)

「我々はフルーレ王の命令でカナン皇子達をケルト国まで案内するように命じられまして……」

(ルーファス)

「ですから、ここまでカナン皇子様を追いかけてきたのです」

(サーモント)

「それよりも……さっきの話はどういう事ですか?カナン皇子がフルーレ王を殺したとは?」

(トライ)

「そういう風にフルーレ城から伝令が届いたのだ」

(サーモント)

「それはおかしな話です。我々がカナン皇子様を追ってフルーレ城を出発するまで確かにフルーレ王は生きておりました」

(ルーファス)

「それでは私達がフルーレ城を出た後に城で何かあったのでしょうか?」

(トライ)

「そうかもしれないな……とりあえず、我はフルーレ城に戻ってその真実を確かめに行ってくる。カナン皇子、その間、サンストーの城下町でゆっくりと休んでおられよ」

トライは部下達を集めるとカナン達をサンストーの城下町まで警護するように命令した。そして、トライは竜に跨るとフルーレ城を目指して飛んでいった。


その頃、フルーレ城ではゼナムの信頼を得ている役人や大臣達がゼナム新国王の名のもとにかつてフルーレ王に仕えていた大臣や役人達を次々と牢獄の中へと閉じ込めていった。そして、ゼナムの完全支配の体制を作り上げていた。

トライはそんな状況になっているとは露知らず、フルーレ城へと降り立った。

(トライ)

「ゼナムっ!あの手紙は一体どういう事だっ!それにどうして貴様がその王座に座っているのだっ!」

トライは謁見の間に入るなり、ゼナムを捲し立てた。

(ゼナム)

「これは、これは……元第一皇子のトライ殿下ではありませんか。残念ながらこの玉座はあなたの父上の席ではありませんよ。この席は私の物です。そして……この国は私の者になったのですよ」

(トライ)

「そんな馬鹿な話があるかっ!貴様がこの国を治めるなど……それではまるで貴様が父上を殺してこの国を乗っ取ったようなものではないかっ!」

(ゼナム)

「それは違いますよ……フルーレ王を殺して、この国の乗っ取りを企てたのは……カナン皇子とあなたなのです」

(トライ)

「なっ……なんだとっ!」

(ゼナム)

「私はそんな逆賊どもからこの国を救った英雄……そういう筋書きにございます」

ゼナムは玉座の横に置いてあった何かの包みを掴むとそれをトライへと放り投げた。

(トライ)

「なんだこれは……っ!」

トライは包みを開いて絶句した。それは変わり果てたフルーレ王の生首であった。

(ゼナム)

「ふぉふぉふぉ、感動の再会ですな」

(トライ)

「きっ……きっ!きっ!きいさあまあっ!!!」

トライは声にならない叫び声をあげた。そして、怒りに任せてゼナムに向かって突進した。

ゼナムは当然こうなることを予想して玉座に潜ませていた無数の衛兵達に守りを固めさせた。

(トライ)

「そこをどけえええっ!!!」

トライは目の前の衛兵達を鬼の形相で次々と凪ぎ払っていった。

(ゼナム)

「……ひぃっ!」

トライのあまりの迫力にゼナムは悲鳴を漏らした。

(トライ)

「ぐおおおっ!!!」

トライはゼナムまで今一歩のところで突如黒い炎に包まれた。それを放ったのは謁見の間の二階から様子を窺っていたバルズであった。

(トライ)

「こっ、この力は……」

トライは黒い炎が飛んできた方向に視線を向けた。

(バルズ)

「流石にやりますな。常人であれば今の一撃で消し炭になるところ……伝説の武器とは実に厄介なものだ……」

バルズは冷ややかな視線をトライに向けた。

(ゼナム)

「……なっ、何をしておるっ!早くその者からエルブストレイクを取り上げるのだっ!」

ゼナムは正気を取り戻すと衛兵達にトライからエルブストレイクを取り上げるように命令した。衛兵達は慌ててトライからエルブストレイクを奪った。

(ゼナム)

「これまでのようですな、殿下……」

(トライ)

「……殺せ」

(ゼナム)

「お望みのままに……殿下の父上を葬ったこの剣で殺してあげますよ」

ゼナムは衛兵にトライの両腕を押さえ付けさせると剣を構えた。

(???)

「そこまでだっ!」

(ゼナム)

「……貴様はっ!」

トライの窮地に現れたのはドラン将軍であった。

ドラン将軍はカナン達がフルーレ王を殺したと聞いて信じられず、その真偽を確認するために王都へと訪れていた。

(ゼナム)

「もう遅い……」

ゼナムはドラン将軍に構わずに振り上げた剣を降り下ろした。

(ドラン将軍)

「やらせぬっ!」

ドラン将軍は剣先がトライの首に触れる前に自らの槍を全力で投げるとゼナムの剣を弾いた。

(ゼナム)

「ぐおっ!」

ゼナムはドラン将軍の放った槍の衝撃で尻餅を突いた。

(ドラン将軍)

「うおおおおおっ!」

ドラン将軍はその場にいる全員が呆気にとられている隙にトライの下まで突っ込んでいくとトライを押さえ付けていた衛兵達を殴り倒した。

(ドラン将軍)

「トライ殿下っ!早くお逃げくださいっ!」

(トライ)

「……ドラン。我はもう駄目だ」

トライは完全に生きる希望を失っていた。

(ドラン将軍)

「なりませぬっ!ここで諦めてしまったら本当にこの国は滅びてしまいますっ!王族の血を絶やすわけにはいきませぬっ!さあっ!早くっ!」

ドラン将軍はトライの肩を持つとその場から立ち去ろうとした。

(ゼナム)

「なっ……何をしておるっ!早くその者達を殺すのだっ!」

ゼナムはトライを亡き者にすべくドラン将軍達を殺すように命令した。

(フルーレ兵)

「お覚悟っ!」

(ドラン将軍)

「やらせはせぬっ!やらせはせぬぞっ!!!」

ドラン将軍はトライを前の方へと放り投げると衛兵達の攻撃を一身に受けた。

(トライ)

「ドラン将軍……」

(ドラン将軍)

「はっ……早くお逃げくだ……さい……。この場は……泥水を……啜ってでも……生き抜くべき……です……」

ドラン将軍は全身を剣や槍で貫かれてもその場に立ち続けた。トライの跡を追わせまいと必死で堪えていた。

(トライ)

「……すまぬ……ドラン……」

トライはドラン将軍の必死な思いを汲むと満身創痍な身体を引きずりながら命からがら竜に飛び乗った。そして、何処かへと飛び去っていった。

(ゼナム)

「くっ!逃したか……」

ゼナムは遠退いていくトライの後ろ姿を忌々しそうに眺めていた。

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