第25話:伝説の武器と天空人の末裔
レイニードは洞窟の外から近づいてくる気配を感じ取た。
(レイニード)
「誰か……近づいて来る」
レイニードはフィリルを優しく起こすと弓を手に取った。そして、 その人物が洞窟に入ってくる前に戦闘体勢を整えた。
(???)
「……誰かいますね」
外の人物は洞窟内のレイニードの気配を感じ取ると洞窟の入り口の手前で足を止めた。
(???)
「すみません。あたしは別に戦いにきたのではありません。あたしも少しの間、洞窟で休ませてもらえませんか?」
その声を聞いた瞬間、フィリルはとても驚いた表情を浮かべた。
(フィリル)
「その声はもしかして……エリスお姉様っ!」
洞窟にやって来たのはカトレア国第一皇女のエリスであった。
(エリス)
「フィリル……どうしてこの様な所に?」
(フィリル)
「ちょっと雪崩に巻き込まれまして……それより、エリスお姉様こそ、どうして、このような所にいるのですか?どうして、国を出て行ってしまわれたのですか?それに今、国は……」
(エリス)
「フィリルっ!落ち着きなさい。あなたの言いたい事は分かりますが、そんなに捲し立てられても一辺には答えられませんわ」
(フィリル)
「ごめんなさい……エリスお姉様……」
(エリス)
「あたしが国を抜け出した理由はこの世界の運命を変える為です」
(フィリル)
「世界の運命?それはあの占いの結果の事ですか?」
(エリス)
「ええ……そうよ。お母様が占い師から聞いた世界の未来を変える為に大陸のあちこちに眠っているという伝説の武具を求めて旅をしていました」
(フィリル)
「それで国を出て行ったのね」
(エリス)
「そう……そして、手に入れたのがこの『フリースターズ』です」
エリスは袋の中から緑の弓を取り出して見せた。
(フィリル)
「とても綺麗な弓ね……」
(エリス)
「だけど、この弓はそこら辺の者には使えません。この弓は意思を持っています。多分、このような伝説の武器は私達のように聖痕を受け継いだ者にしか扱うことができません」
(フィリル)
「それはどうしてですか?」
(エリス)
「それは……私達が伝説の聖戦士の一人であるカトレア様の血を受け継いでいる末裔だからです」
(フィリル)
「そんな……知らなかった。私があの伝説の聖戦士の末裔だったなんて……」
(エリス)
「フィリル、この弓を持ってごらんなさい」
エリスはフィリルにフリースターズを手渡した。
(フィリル)
「何だかとても懐かしい感じがするわ……」
(エリス)
「そう……それはこの聖具が私達の血に応えているのです。とても自然に弓が引けそうでしょう?」
(フィリル)
「本当……何だかそんな気がするわ」
(エリス)
「私は母の命によりこれらの伝説の武器を求めて各地を旅してきました」
(フィリル)
「なるほど……それじゃ、聖痕を持っているカナンくんも伝説の聖戦士の末裔の一人なの?」
(エリス)
「ええ、カナン皇子もメルトア様の血を受け継いでいます。私は彼に必要になるであろう『エクスぺリオン』を求めてモルゴスの砦に行ってきたのですが……残念ながらエクスぺリオンは既に何者かによって持ち去られた後でした……」
(レイニード)
「モルゴスの砦だって?」
レイニードはモルゴスの砦と聞いて驚きの声をあげた。なぜならば、その場所はカナン達がゴラスを退治するために一度訪れた場所であった。
(エリス)
「あなたは誰です?」
(フィリル)
「ごめんなさい、お姉様。紹介するわね。この人はレイニード君。私を雪崩の中で一生懸命守ってくれた私の大事な人……」
フィリルはレイニードの腕を掴んでエリスに紹介した。
(エリス)
「それは……めでたい事ですね。あなたに大事な人ができていたなんて……」
(フィリル)
「ありがとうございます」
フィリルは照れ臭そうに顔を赤く染めるとレイニードの腕を強く抱き締めた。
(フィリル)
「それでお姉さまはこれからどうなさるのですか?」
(エリス)
「とりあえず、フルーレ城に向かおうと思っています。この国にも伝説の武器『ホーリーエンダー』があるらしいので……」
(フィリル)
「それなら私達もご一緒しますわ。もしかしたら、フルーレ城でカナンくん達にも会えるかもしれないし……」
エリス達は外の雪が完全に止むのを待ってからフルーレ城を目指して洞窟を出た。
その頃、カナン達はフルーレ王とこれまでの旅の目的と旅の経緯について話をしていた。
(カナン)
「……という訳でここまで辿り着きました」
(フルーレ王)
「なるほど……それで国を追われてこのフルーレまで流れ着いたのだな……大変だったであろう?」
(カナン)
「はい……けれども……仲間達のおかげでここまで旅する事ができました」
(フルーレ王)
「そうか、そうか……良い仲間達を持ったのだな。そうだっ!これを持っていくがよい」
フルーレ王は兵士に真っ白な斧を持ってこさせた。
(カナン)
「これは?」
(フルーレ王)
「それはホーリーエンダー。我が国が代々守り続けてきた聖具の一つだ。この国にはその聖具を使いこなせる者はおらん。だから、持って行くがよい。何かの役に立つかもしれん。これはわしからお主に贈る信頼の証じゃ」
フルーレ王はカナンの身の上話を聞いて大層カナンのことを気に入っていた。
(カナン)
「本当にこのような貴重な物を貰ってもよろしいのでしょうか?」
(フルーレ国王)
「構わんよ。この国にはもう1つ……『エルブストレイク』という伝説の槍があるのでな。それは私の息子が所持しておる」
(カナン)
「そうですか……それでは信頼の証として、ありがたくいただきますね」
カナン達は頭を下げるとフルーレ王からホーリーエンダーを受け取った。そして、カナン達はフルーレ王が用意してくれた寝室へと移動した。その途中、カナンはドラン将軍と出会った。
(カナン)
「……どうですか?レイニード達は見つかりましたか?」
(ドラン将軍)
「……すまんな、カナン皇子。まだ全員は発見されていない……」
(カナン)
「そうですか……色々とすみません」
カナンはドラン将軍に頭を下げてその場を立ち去った。
その頃、エルメス達はまだ洞窟の中で待機していた。エルメスはファーストの傍らで気持ちよさそうに眠っていた。ファーストはそんなエルメスを優しく見守っていた。
(ファースト)
「……エルメス……私はこのままあなたをここで死なせはしません。だからちょっと外へ行ってきます……」
ファーストはエルメスの頬に軽くキスをすると洞窟の外へと向かって行った。
(エルメス)
「むにゃむにゃ……ファースト様……」
エルメスは寝言を呟きながら幸せそうな寝顔を浮かべていた。
(ファースト)
「エルメス……起きなさい……」
(エルメス)
「ほぇ?ファースト様?ここは?」
(ファースト)
「仲間が見つかりました。さぁ、顔を上げて行きましょう」
(エルメス)
「えっ!本当ですかっ!分かりました」
エルメスが洞窟から顔を出すと外にはフィリル達がいた。
(フィリル)
「エルメス……無事で良かったわ……」
(エルメス)
「フィリル姫こそ、ご無事で何よりです。それにエリス姫もお久しぶりです」
(エリス)
「エルメス、相変わらずのようですね」
(エルメス)
「ところで……どうして姫様達にはこの場所に僕達がいるって分かったんですか?」
(フィリル)
「この近くで炎の柱が上がっていたから。簡単にここまで来れたわ」
(エルメス)
「どういうことです?そんな炎なんてどこにも上がっていなかったはずですけど……」
(エリス)
「ファーストでしょう?この場所を仲間に知らせる為に道標として炎の柱を必死に作り出していたのでしょうね」
(エルメス)
「それじゃ……ファースト様が僕の為に立ててくれたのかな?」
(フィリル)
「きっとそうよっ!良かったわね」
エルメスは嬉しそうにファーストに抱きついた。
(レイニード)
「よっ、ご両人っ!お似合いだぜ」
(フィリル)
「こら、レイニード君っ!むやみやたらにはやしたてないの」
(エリス)
「さぁ……フルーレ城に向かいましょう」
エリスはその場を取り仕切るとフルーレ城へと出発した。
レイニード達はエリスの持っていた地図のおかげで何とか無事にフルーレ城まで辿り着いた。そして、カナン達と合流を果たした。
(レイニード)
「よう、カナン。何とか無事に着いたぜ」
(カナン)
「本当に無事で良かったっ!ところで……あなたは?」
カナンは初めて見るエリスに首を傾げた。
(フィリル)
「カンナ君、紹介するわね。この人は……エリスお姉様。伝説の武器を探して旅をしていたの」
(エリス)
「御初に御目にかかります、カナン皇子。あたしはカトレア国第一皇女のエリスと申します。この度は妹フィリルとカトレア国の者達が大変お世話になりました」
エリスは片膝を着くと丁寧に頭を下げた。
(カナン)
「お顔をお挙げ下さい。お礼を言うのはむしろ僕の方です。フィリルさんやカトレアの人達がいてくれるおかげで本当に助かっています……」
カナンも膝を着くと頭を下げた。
(エリス)
「そうですか……そう言ってもらえると嬉しい限りです」
エリスは顔をあげると優しく微笑んだ。
(カナン)
「ところで先ほど伝説の武器を集めているとおしゃられていましたが……」
(エリス)
「そうです。私はこの世界を破滅から救うために伝説の武器を集めています……」
エリスは袋からフリースターズを取り出してカナンに見せた。
(カナン)
「とても見事な弓ですね……」
(エリス)
「この弓は風の戦士カトレア様が使っていたとされる弓です。私はこのような聖具を求めて大陸中を旅してきました」
(カナン)
「なるほど……それなら僕も持っていますよ」
カナンはフルーレ王から貰ったホーリーエンダーをエリスに見せた。
(エリス)
「そっ、それは……ホーリーエンダーっ!どこで手に入れられたのですか?」
(カナン)
「これは……フルーレ王からいただきました」
(エリス)
「なるほど……この国に封印された聖具は既に発見されて管理下におかれていたようですね……しかし、これだけでは何の意味もありません。これを扱える者も見つけなければ世界を救うことはできません」
(カナン)
「ホーリーエンダーの使い手?」
(エリス)
「そうです。私やあなたのように聖なる証を持った者が大陸のどこかにいるはずです」
(カナン)
「僕のような……ということは僕にも僕が扱える伝説の武器があるということですか?」
(エリス)
「ええ……カナン様は光の戦士メルトア様の末裔です。メルトア様の使われていた聖具はエクスぺリオンなのです」
(カナン)
「エクスぺリオン……」
(エリス)
「それはモルゴスの砦に封印されていたことまではわかったのですが……既に何者かによって持ち去られた後でした……」
(カナン)
「そうなんですか……」
カナンは残念そうな表情を浮かべた。
(エリス)
「心配しないでください、カナン皇子。いつか必ず全ての伝説の武器を見つけ出しますので……それが私の使命ですから」
エリスは自信満々な様子で微笑んだ。
(カナン)
「……分かりました。エリス様にお任せしますね」
(エリス)
「お任せください」
(カナン)
「そういえば……」
カナンはエリスの話を聞いてティラミスやフィルトのことを思い出した。彼らもまたカナン達同様に聖痕の持ち主であった。そして、先ほどフルーレ王から聞いた伝説の武器を所持しているというフルーレ王の息子のことについて話をした。
(エリス)
「……どうやらカナン皇子は伝説の武器やその使い手を惹き付ける何かがあるようですね。こうして私がカナン皇子の下にやって来たのも運命なのかもしれません……」
エリスはカナンの話を聞いてそう確信した。
(エリス)
「私もしばらくの間、カナン皇子の旅に同行しても構いませんか?」
(フィリル)
「本当に?エリスお姉さまと一緒に旅ができるの?」
(エリス)
「ええ、本当よ。そうすることが伝説の武器を集めるにも使い手を見つけるのにも都合が良さそうなので……」
(カナン)
「エリス皇女様がよろしければ、僕は全然構いませんよ」
(エリス)
「それではよろしくお願いしますね……とその前に……」
エリスは急に差し出していた手を引っ込めた。
(カナン)
「どうかしましたか?」
(エリス)
「カナン皇子……私の呼び方も他の人達と同じで構いませんのでエリスとお呼びください」
(カナン)
「……分かりました、エリスさん。それなら僕のこともカナンと呼んでください」
(エリス)
「……分かりました、カナン。これからしばらくの間、よろしくお願いしますね」
エリスは再び手を差し出すと今度はカナンと固い握手をかわした。




