第15話:アサシンギルドからの逃亡者
カナン達はペンタス王国に入るとジョルフィアの街へ向かおうとしていた。しかし、ジョルフィアの街に着く直前にカナンはクレナイと言う少女とぶつかった。
(クレナイ)
「きゃっ!」
(カナン)
「痛たたた……君は一体何をそんなに慌ててるんだい?」
(クレナイ)
「……ごめんなさい。私はある組織から追われていて……」
(カナン)
「君は何をしたんだい?どうして、追われているの?」
(クレナイ)
「実は……私はアサシンという稼業をしていましたが、罪なき人を傷つけることが嫌になり、ギルドを抜けようとしたのですが……」
(クルー)
「つまり、あんたは……ギルド抜けをしようとしてるでやんすね」
クルーは唐突に話に割って入ってきた。
(カナン)
「何か知っているのかい、クルー?」
(クルー)
「ええ、あっしもこの国の出身でして……しかし、ギルド抜けをしようとは……何とも無謀でやんす」
(カナン)
「ギルドを辞めるのはそんなに大変なことなのかい?」
(クルー)
「はいでやんす。この国ではギルド長の許可なくギルドを抜けることは死刑になるくらい重いでやんすから」
(クレナイ)
「あなた……この国の盗賊ギルトにいた人間なのね」
(クルー)
「そうでやんす。確かにあっしはこの国に生まれて盗賊ギルドに入ってやしたが……今はもうこの旦那にお仕えてしるんでやんすよ」
クルーは照れ臭そうに鼻の下を擦るとカナンの方を見た。
(カナン)
「ねえ、クルー?アサシンとか、盗賊ギルドとか、一体何のことなんだい?」
(クルー)
「それはでやんすね……」
クルーがそう言いかけるといきなり怒号が聞こえてきた。
(アサシン)
「やっと……やっと見つけたぞ、クレナイっ!この裏切り者めっ!我等からそうやすやすと逃げられると思っていたのか?さぁ、一緒に組織に戻るのだっ!今なら党首のセイリュウ様もお許しになられるであろう……」
(クレナイ)
「絶対に嫌っ!もう私にはあんな事するなんて耐えられないっ!私達は強気者を挫き、弱気者を助ける仕事をしていたはずなのに……」
クレナイは悲しそうに瞳を潤ませると拳を握りしめた。
(クレナイ)
「最近では老若男女問わずに殺しをしているじゃないですかっ!とても小さな子供の命まで奪って……」
(アサシン)
「時代は変わったのだっ!もうそのような甘き事を言っていては今の世では生きていく事などできぬのだっ!そんな些細なことなど考えるだけ時間の無駄だっ!」
(クレナイ)
「だからと言って……小さな命を奪う事のどこが正しいと言うの?そんな偽善めいた事を考える事の何が悪いと言うのっ!」
(アサシン)
「今更、貴様がそのような事を言う資格があると思っているのか?貴様が何と言おうと貴様が殺してきた者の魂は帰らぬわっ!」
クレナイは耳を塞ぐとその場にしゃがみこんでしまった。
(アサシン)
「さぁ、素直にギルドに帰ってくるのだ……人なんて殺してしまえば皆同じだ。恐れる事など何もない……」
アサシンはクレナイに近づくと無理矢理連れて帰ろうとしたが、カナンはそれを黙って見過ごさなかった。
(カナン)
「……ちょっと待ってください」
(アサシン)
「貴様……何奴だっ!」
(カナン)
「あなたは人の命を何だと考えているんですか?人の命を奪いたくないと考える事の何が悪いと言うのですか?人の命を奪う事を恐れる事の一体何が問題なのです?」
(アサシン)
「部外者の癖に我らのことに首を突っ込むつもりか?」
アサシンはカナンを睨み付けた。
(アサシン)
「んっ……というか貴様の顔……何処かで見覚えがあるぞ……そうかっ!貴様等はあの賞金首の逆賊のカナン一味だな?これは好都合だっ!貴様等の首もセイリュウ様の土産にしてくれるわっ!」
アサシンは身構えると仲間を呼び寄せてカナン達に攻撃を開始してきた。
(エルメス)
「うわぁっ!早すぎてどこに敵がいるのか見えないよっ!」
(ベレー)
「エルメス、目だけでなく耳も使って周りの木が揺れる音や木の葉の踏まれる音からも判断するんだ……そこだっ!サンダーっ!」
ベレーの放った雷は見事にアサシンに命中した。
(ベレー)
「どんなもんだいっ!」
(エルメス)
「すごいな、ベレーは……」
(ベレー)
「まぁな……」
ベレーが得意げに自慢していると木の影から鉄製の何かが飛んできた。
(エルメス)
「危ない、ベレーっ!」
(ディザード)
「ふんっ!」
ディザードはベレーに直撃する前に盾でそれを弾いた。
(ベレー)
「サンキューっ!助かったぜ、ディザード」
(ディザード)
「たくっ!お前という奴は調子に乗ってすぐに油断するんだからな」
(エルメス)
「まぁまぁそう言わずに頑張ろうよ」
エルメスは険悪な雰囲気のディザードとベレーをなだめた。
(レクトル)
「カナン様、大丈夫ですか?」
(カナン)
「僕の方は大丈夫だよ。それより他の皆は大丈夫かな?」
(レクトル)
「ええ、今のところは誰も死傷者は出ていないようです。皆うまくやっています」
(カナン)
「そうか……それは良かった……」
カナンが安堵していると前からアサシンが斬りかかってきた。
カナンは剣の鞘でその攻撃を払うとアサシンの腹に剣で斬りこんで倒した。
(スフィア)
「そこだ……てああっ!」
スフィアは木の影を槍で突いた。木の影にはアサシンが隠れていた。
(アサシン)
「はあああっ!」
スフィアが目の前のアサシンを凪ぎ払っていると別のアサシンがスフィアの後ろから攻撃を仕掛けてきた。
(スフィア)
「甘いっ!殺気で位置がばればれだっ!」
スフィアは槍の反対側で突いてアサシンを倒した。
(レイニード)
「見えるっ!そこだっ!」
レイニードは弓を引いて斜め上に射った。その矢は木の上に隠れていたアサシンへ見事に命中した。
(レイニード)
「それから……そことそこっ!」
レイニードは掛け声と共に連続で弓を引き、矢を二本射った。それぞれの矢は両方ともアサシンに命中していた。
(デライト)
「レイニード、よく敵の位置を把握できるな……」
(レイニード)
「まぁなっ!こう見えても俺はハンターだからな。何時も気配を隠す獣相手に山の中で狩をしていたからな。ある程度の気配は読めるぜ……そこだっ!」
レイニードはデライトの後ろを射た。そこにもアサシンが潜伏していた。
(カナン)
「どうやら粗方の敵は片付いた様だね……」
(レクトル)
「そのようですね、カナン様。ほとんどの者達が致命傷を負わなかったようです」
(カナン)
「それは良かった……」
カナンは安堵の表情を浮かべると耳を塞ぎしゃがんでいたクレナイに声をかけた。
(カナン)
「ねぇ?クレナイさん……もう大丈夫ですよ。顔をあげて下さい……」
(クレナイ)
「……すみません。厄介事に巻き込んでしまったうえ、守らせてしまいまして……」
(カナン)
「いいや、気にする事はないよ。遅かれ、早かれ、あの人達とはいずれは戦うことになっていたでしょうし、それよりも……君の話していたアサシンギルドというものがどういうものなのか教えてくれませんか?」
(クレナイ)
「……分かりました。私が知っている限りのことをお話いたします……」
クレナイはこの国の事情について話はじめた。
(クレナイ)
「まずはこの国の構造についてですが……この国、ペンタスは三つの組織がそれぞれ統治をしています。一つはこの国の王達が、もう一つは盗賊ギルドという者達が、そして……最後に私が所属していたアサシンギルドの者達がおります」
(カナン)
「なるほど……」
(クレナイ)
「この国の土地はとても不便で農作物などの食料がほとんど取れません。なのでこの国の人々は物を盗むことでしか、生きていくことができませんでした」
(カナン)
「この国の人々はそんなに貧困に喘いでいるのかい?」
(クレナイ)
「そうです……ですので人々は盗賊ギルドを立ち上げて近隣の豊かな土地の人間達から集団で盗んでおりました。それを快く思わなかったのは豊かな暮らしをしていた王族達でそんな盗賊達から人々を守るために作られたのがアサシンギルドでした」
(クルー)
「そうでやんしたね……あっしらもそんなギルドができたせいでうまくたちゆかなくなって苦しい生活を強いられたでやんす……」
(クレナイ)
「だからと言って人の物を盗むことはいけないことでしょ?」
(クルー)
「それは分かっているでやんす。そこであっしらも生きていくためにこの国の王達と交渉したでやんす」
(カナン)
「交渉って?」
(クルー)
「この国ではなく違う近隣の国から盗みを働いてくるので盗賊ギルドを容認してほしいと交渉したでやんす」
(カナン)
「そんなことを……」
(クルー)
「仕方がないんでやんす。そうしなければあっしらのようなスラムに生まれた人間達は生きていけないのでやんすよ。あっしらが物を取ってきて、その一部を金持ち達に献上することでこの国の市場は回ってきたでやんす。それはあんたも知ってるでやんしょ?」
(クレナイ)
「確かに……その通りだけど……」
クレナイは煮えきらない感じで返事をした。
(クルー)
「それにアサシンギルドだって綺麗なことばかりをやってきたわけじゃないでやんす」
(クレナイ)
「そう……盗賊ギルドが王族と正式に手を結んだことでアサシンギルドの存在意義は薄れてしまった」
(カナン)
「それでアサシンギルドはどうなってしまったんだい?」
(クレナイ)
「だから……アサシンギルドは王族達に認めてもらうために国にとって都合の悪い人間の暗殺を受けるようになりました……それも老若男女、善人だろうと悪人だろうと誰かれかまわずに……」
(クルー)
「そうでやんす。盗賊ギルド以上にやばい組織になったでやんす」
(クレナイ)
「そんな生活が嫌になって私はアサシンギルドを抜けようと考えたのです」
(カナン)
「そういう事情があったんですね……ですが、このまま逃げ続けてもいずれは捕まってしまうのではないでしょうか?」
(クレナイ)
「そうかもしれませんね……」
(カナン)
「それならいっそのこと、そのアサシンギルドをあなたが変えてみるというのはどうでしょうか?」
(クレナイ)
「私がですか?」
(カナン)
「そうです。あなたが信じることができるギルドに変革すれば逃げ続ける必要もなくなります」
(クレナイ)
「確かに……あなたの言う通りかもしれませんね。ですが……今の私だけの力ではどうにもなりません」
(カナン)
「よければ僕達があなたの力になりますよ」
(クレナイ)
「本当ですかっ!」
(カナン)
「任せてください。困っている人を見捨ててはいけませんから」
(クレナイ)
「……ありがとうございます」
クレナイはカナン達をジョルフィアの街にあるアサシンギルトへと案内した。




