第14話:決死の覚悟
レイニードがカナン達の見送りをしているとフィリルが森に入っていくのを見つけた。
そこでレイニードはフィリルを追って森に入った。
(レイニード)
「おーい、フィリル……こんな所で何をしているんだ?」
(フィリル)
「あら?レイニード君こそこんな所で何をしているの?」
(レイニード)
「俺は……あんたの姿を見つけたからここまで追って来たんだ」
(フィリル)
「そうなんだ……私の事を心配してきてくれたんだ」
(レイニード)
「べっ、別にそんなつもりはないが……カナンにフィリルの事をよろしくと頼まれたからな」
(フィリル)
「……そうなんだ。でも大丈夫よ。私はこの薬草を取りに来ただけだから」
(レイニード)
「薬草?なんでまた。何の為に必要だったんだ」
(フィリル)
「それはね……私が運ばれた宿屋の奥さんが病気で寝込んでいてね。それでそこの子供がとても困っていたから代わりに薬草を取りに来ていたというわけなの」
(レイニード)
「それなら部下の者達に取りに来させれば良かったのに……」
(フィリル)
「それは駄目……だって他の皆も顔には出していないけど……とてもショックを受けていたから。今はそっとしておいてあげたいの」
(レイニード)
「そうか……フィリルは優しいんだな」
(フィリル)
「あら?今頃、気付いたの。遅いわね」
(レイニード)
「まぁな……」
レイニードとフィリルは照れ臭そうに互いの視線をそらしながら笑った。
(レイニード)
「……っ!」
レイニードは何かに気が付くと急にフィリルの口に手を当てた。
フィリルはいきなり口を塞がれて目を白黒させていた。
(レイニード)
「……しっ!静かに……何かが近づいてくる。物音を立てずにゆっくりと後へ戻るんだ」
フィリルは静かに首を縦に振るとレイニードに言われた通りに後ろへと下がっていた。
レイニードが気付いた者はバジルの山賊部隊の者達であった。
バジル達はカナン達が思っていた以上に早く村の方へと進行して来ていた。
(レイニード)
「……どう見ても村人には見えねぇな。もしかして、あれがクルーの言っていた山賊なのか?」
レイニードはバジル達の姿から彼らが山賊であることを見抜いた。
そして、レイニード達はバジルに気づかれる前にその場を立ち去ろうとした。
(バジル)
「誰だっ!」
バジルはフィリルが踏んでしまった木の音でレイニード達の存在に気がづいてしまった。
(バジル)
「おいっ!そこにいるのはわかっているんだっ!とっと出てきやがれっ!」
(レイニード)
「やばいっ!奴等に気付かれてしまった。フィリルっ!全速力で逃げるぞっ!」
レイニードはフィリルの足と肩を持ってお姫様抱っこの格好でその場を走り去った。
(バジル)
「ちっ!逃げたかっ!野郎共……追いかけるぞっ!」
バジルの部隊もレイニード達を追って全速力で追いかけてきた。
フィリルを抱えている分、レイニード達の方が逃げるスピードが遅く次第にバジル達との距離が狭まっていった。
(フィリル)
「レイニード君……もういいよ……ここで私を降ろして、この先あなただけでも逃げて……」
(レイニード)
「馬鹿なことを言うんじゃねぇっ!ここにお前だけを置き去りにして行けるわけがねぇだろうがっ!」
(フィリル)
「でも……このままでは二人とも捕まってしまうわ。だから……私を囮にして逃げて」
(レイニード)
「お前が囮になるくらいなら俺が囮になるっ!その方が安全だ」
レイニードはフィリルを木の茂みの奥へと隠した。
(レイニード)
「フィリル、いいか?よく聞いてくれ……周囲の音が全く聞こえなくなったら、すぐに村へと向かい、この事を村にいる仲間達に知らせるんだ。それまで俺が奴らを引き付けて食い止めるっ!」
(フィリル)
「だけど……それじゃ……レイニード君が……」
フィリルが言い終える前にレイニードはその場を離れるとバジルの山賊部隊の方へと向かった。
(レイニード)
「やいっ!鈍間共っ!ここまで来てみやがれっ!」
レイニードは弓を引いてバジルの山賊の一人に矢を射た。
(山賊)
「ぐわっ!」
レイニードの弓は見事に命中した。それに腹を立てたバジルはレイニードを追ってフィリルの居るところから離れていった。
そして、フィリルは周りの音がしなくなったのを確かめると急いで村に戻ってバジル達の事を伝えた。
(フィリル)
「誰でも……いいから……レイニード君を助けに行ってっ!お願いっ!早くっ!」
フィリルは息絶え絶えに声を張り上げるとレオン達に懇願した。
(ファースト)
「……分かりました、姫様。私達にお任せ下さい」
ファーストはベレーとエルメスの魔法使い部隊を連れてレイニードのいる山の中へと向かった。
ファースト達がレイニードの元に着くとそこにはバジルの死体が転がっていた。
(ファースト)
「これは一体……大丈夫ですか、レイニード殿?」
(レイニード)
「……ああ……何とかな。人間……やればできるもんだな」
(ベレー)
「これをお前一人でやったのか?」
(レイニード)
「隠れて、待ち伏せして、隠れて、待ち伏せしてとそうやって何度も奇襲をかけていたら何時の間にかこいつ一人になっていたんだ」
(エルメス)
「それにしてもすごいね。一人でこんなにたくさんの敵を倒すなんて……」
エルメスが感心しているとレイニードはいきなり倒れた。
(エルメス)
「レイニードさんっ!」
(ファースト)
「……大丈夫です。ただの疲労で倒れただけの様です」
(ベレー)
「それよりこいつを連れて早く村に戻ろうぜ」
ベレーはレイニードを背負って歩いた。ファースト達もそこら辺にまだ残党が残っていないか注意を払いながら村へと戻った。
その頃、カナン達はラジアルの部隊と戦っていた。ラジアルの部隊はほとんど歯が立たない様な状況でカナン達は圧勝していた。
(ラジアル)
「そんな馬鹿な……カナン共がここまで強いとは……そうだっ!これは悪い夢ではないかっ!きっとこれは夢なのだっ!」
ラジアルは馬に跨がって剣を振りあげながら無我夢中でカナンへと突進してきた。
カナンはラジアルの剣をしゃがんでかわすとラジアルの脇腹を剣で突き刺した。
(ラジアル)
「ぐはっ!痛いっ!これは夢なはずなのに……どうして……こんなに……痛いの……だ……」
ラジアルは馬から転げ落ちると完全に息の根を止めた。
(カナン)
「このまま一気にコンドアの砦になだれこむぞっ!」
カナンは他の仲間達の士気を高めるとゴンドアの砦へと進軍した。
そして、カナン達が砦に辿り着くと門が独りでに開いた。それは一足先に来ていたクルーが内側から門を開けたからであった。
(クルー)
「旦那、お待ちしておりやした……」
(カナン)
「ばっちりなタイミングだったよ。ありがとう……」
カナン達はクルーの活躍によりグレッグ将軍の元まで一気に攻め込んだ。
(グレッグ将軍)
「おお、お前がカナンか?私の金の為に死ねっ!」
グレッグ将軍はいきなり襲いかかってきた。
グレッグ将軍は銀の斧を振りかざし、カナンだけを執拗に狙ってきた。
カナンはその斧を剣で受けたが、力で押し負けて壁に叩き付けられた。
(カナン)
「くっ!」
(グレッグ将軍)
「がっはっはっはっ!金の為に死ねっ!ぐほっ!!」
グレッグ将軍はカナンに向かって斧を振り下ろそうと仁王立ちしていたが、後ろからレクトルに槍で突き刺された。
グレッグ将軍はカナンに執着するあまり周囲の状況を把握していなかった。
(グレッグ将軍)
「金は……金は……全て私の物だっ!」
クッレグ将軍は薄れゆく意識の中でカナンに襲いかかってきた。
カナンはその攻撃を素早く避けるとグレッグ将軍の腸を切り裂いた。
(グレッグ将軍)
「金は……全て……わたしの……ものだ……」
グレッグ将軍は床に散らばった金を手に握り締めると息を引き取った。
(カナン)
「なっ……何って金に固執した奴だったんだろうか……」
カナンはグレッグ将軍の執念に気圧されて身震いをした。
カナン達はゴンドアの砦を落とすと仲間達がいる村へと戻った。そして、レイニード達と合流した。
(クルー)
「グレッグって奴は本当に金の好きな奴でやんしたね」
(レクトル)
「ああ、そうだな。ところでクルー?お前が偵察に行った時、盗んだ金を素直に出せっ!」
(クルー)
「なっ……何の事でしょうか、レクトルさん?あっしには何の事だか、さっぱり見当がつきやせんぜ……」
クルーは目線を泳がせるとレクトルから視線をそらした。
(レクトル)
「とぼけても無駄だ。私の目を誤魔化す事はできないぞっ!あの金はグレッグがこの村の者達から無理やり奪った金だ。さぁ、素直に返すんだ……」
(クルー)
「はぁ……レクトルさんにはかなわねえでやんす……」
クルーは自分の鞄に入れていた金を素直に差し出した。
(レクトル)
「腰につけているポーチの金も出すんだ」
(クレー)
「これは……あっしの仕事料でやんすよ」
(レクトル)
「それならお前のポケットに入っている金で十分だろ?」
(クルー)
「本当に……レクトルさんには敵わねえでやんす……」
クルーはしぶしぶ腰につけていたポーチの中の金を差し出した。
カナン達はそれらの金をゴンドアの門の近くの村やその周辺の村に配った。その後、カナン達はゴンドアの門を通ってペンタス王国へと入国した。




