第13話:コノート国の皇子フィルト
カナン達がゴンドアの門の近くの村に通りかかった時、唐突に空から雷が降ってきた。
(カナン)
「危ないっ!皆っ!空から雷が降ってきた。避けるんだっ!」
(レクトル)
「これを避雷針代わりにしてと……」
レクトルは銀の槍を空高くに放り投げた。雷はその槍に惹かれるように命中した。
その頃、ゴンドアの門の近くの村ではレイズとトワルが話をしていた。
(レイズ)
「兄者……今度の奴等はなかなか歯ごたえがありそうだぜ?俺の雷を見事にかわしやがった」
(トワル)
「そうか……ならば、今度は俺も援護するぜ」
トワルは呪文を詠唱し始めた。そして、レイズも呪文を詠唱し始めた。
(レイズ)
「サンダーっ!」
(トワル)
「ウィンドっ!」
レイズ達はカナン達に目掛けて魔法を放った。しかし、今度はカナン達もただ指を咥えて見ているだけではなかった。ファーストとエルメスが魔法を放ってレイズ達の魔法を相殺した。
(レイズ)
「兄者っ!奴等、前の奴等と違ってかなり強い様だっ!」
(トワル)
「……そうだな。ならば……魔力全快でいくぞっ!」
トワル達は再び呪文を詠唱し始めた。
(フィルト)
「お待ちなさい、トワル兄弟っ!早く呪文の詠唱を止めるのですっ!」
(トワル)
「そんなに慌てて……どうしたんですか、フィルト皇子?」
(フィルト)
「あなた達は一体誰を攻撃しているのか、分かっているのですか?」
(レイズ)
「ええ、フィルト皇子。我等はモルグス国のグレッグの兵に攻撃しているぞ」
(フィルト)
「やはり……あなた達は勘違いしています。あれはグレッグの兵ではありません。あの者達はカナン皇子一行の者達ですっ!」
(レイズ)
「えっ……ええっ!我等が会おうとしていたあのカナン皇子一行ですか?」
(フィルト)
「そうですっ!間違いありませんっ!」
(トワル)
「何て事だ……おい、レイズっ!ちゃんとあれがモルグス兵だと確認しなかったのか?」
(レイズ)
「兄者だってあれが敵だと決め付けていたではないですか?」
(フィルト)
「今はその様な無益な事を言い合っている場合ではありません」
フィルトは白旗を揚げるとカナン達に近づいた。
(カナン)
「……そうですか。あれはそちらの勘違いと言う事ですか……」
(フィルト)
「はい……大変申し訳ありませんでしたっ!」
(カナン)
「いいえ……お顔をお上げ下さい。幸い僕達の中で怪我をした者はおりませんし、ちゃんと誤解を解く事ができたので気にしておりません」
カナンは誤って攻撃されたことを全く気にしていなかった。
(フィルト)
「そうですか……それでは改めて挨拶をいたします。私はコノート国の第二皇子フィルトと申します。こちらの者達は私の付き人をしているトワルとレイズと申します」
(トワル)
「よろしくお願いするぜ」
(レイズ)
「よろしくな」
トワル達は豪快に笑い声をあげながら手を差し出した。
(フィリル)
「あら?あなた……フィルト皇子じゃない?元気にしてた?」
(フィルト)
「これは……フィリル皇女っ!ご無事でしたか?噂ではカトレア国が滅んだ時に亡くなったと聞いていましたが……」
(フィリル)
「えっ……どういう事かしら。カトレアが滅んだって……」
フィルトはフィリルにカトレア国の行く末について話をした。
(フィルト)
「……と言う訳でして私達は元同盟国であるメルトアの皇子がそのような暴挙な事をするはずがないという事でカナン皇子に直接会って、その事実を確かめようと思いここまで来たのです」
(フィリル)
「そんな……そんな事があるのっ!カトレアが滅んだなんて……」
フィリルはことの顛末を確認すると気を失い、その場で倒れた。
(レオン)
「フィリル姫様っ!」
(ディザード)
「姫、お気を確かにっ!」
(エルメス)
「フィリル姫っ!」
(カナン)
「余程ショックが大きかったのだろう……誰か?フィリルさんの為に宿屋を借りてきてください」
カトレア国のレオン達はフィリルを連れて宿屋へと向かった。
(カナン)
「ところで話は変わりますが……フィルト皇子達はここで何をなさっていたのですか?」
(フィルト)
「フィルトで構いませんよ、カナン皇子」
(カナン)
「……分かりました。それなら僕のこともカナンとお呼びください。それでこのような場所で何をなさっていたのですか?」
(フィルト)
「私達はここでグレッグという大変お金の好きな将軍と戦っていたのです。グレッグはこの村から大変高い税金を取り、子供の食料が買えないくらい酷かったので、それを見かねた私達はグレッグからこの村を守っていたのです」
(カナン)
「そうですか……大体の事情は理解しました。それでは私達の力もお貸しします」
(フィルト)
「それは大変ありがたい……それではゴンドアの砦にいるグレッグを倒して来て下さい」
(カナン)
「……分かりました。それと念の為に何人か仲間をここへ置いていきます」
カナンはこの村の事情を話すと部隊を二つに分けた。
(カナン)
「ねぇ、クルー……君の足で一走りしてゴンドアの砦の偵察に行ってくれないか?」
(クルー)
「へい、旦那。それじゃ、一走り行って来やすぜっ!」
クルーはあっという間にゴンドアの砦を目指して走り去っていった。その後、レイニードがカナンに話し掛けてきた。
(レイニード)
「なぁ、カナン?どうせ部隊を二つに分けるなら騎馬部隊と足軽部隊だけを連れて行ってはどうだ?足の遅い重騎士部隊と魔法部隊はここで守備を固めた方が効率がいいと思うんだが……」
(カナン)
「……そうだね。どうせ分けるならそういう風に分けた方が良さそうだね」
カナンはレイニードの案に賛同した。村に残る兵達の大半はカトレア王国の出身の兵達であった。彼らもまたフィリルほどではないが、少なからず傷ついていた。
(レクトル)
「それではそのように皆に伝えて来ます……」
(レイニード)
「それとカナン……俺はこの村に残って守備を固めたいんだがいいか?」
(カナン)
「うん、分かったよ。レイニードがそうしたいって言うんならそれでいいと思うよ」
(レイニード)
「……すまねえな、カナン」
(カナン)
「いいよ、気にしなくて。フィリルさんの事が気になるんだね?」
(レイニード)
「ああんっ!俺がフィリルの事を?違うっ!俺はただこの村の守りが心配なだけだっつうのっ!」
レイニードは珍しく声を荒げるとカナンの言葉を否定した。
(カナン)
「分かったよ、レイニード。そう言う事にしておくよ」
カナンは足軽部隊と騎馬部隊を集めてゴンドアの砦に行ったクルーの帰りを待った。
その頃、ゴンドアの砦ではグレッグ将軍が金の数を数えていた。
(グレッグ将軍)
「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。ふぅ、これで私の金は全部で99万金だ。しかし……まだ足りぬっ!これでは全然足りぬぞっ!」
グレッグ将軍は力任せに机を叩くと怒りを爆発させた。
(グレッグ将軍)
「あの村の者共はまだ抵抗を見せているのかっ!一体何時になったらあの村から金を徴収できるのだっ!」
(モルグス兵)
「今しばらく……今しばらくのご辛抱を……」
(グレッグ将軍)
「その言葉は聞き飽きたぞっ!」
グレッグ将軍は手元にあったワイングラスを床へと叩きつけた。
(ラジアル)
「グレッグ将軍……耳寄りな情報でございます……」
(グレッグ将軍)
「ほう?その耳寄りな情報とはなんだ。申してみい……ラジアル」
(ラジアル)
「はいっ!実は先程……将軍がおしゃられた村にあの逆賊のカナン達一行が入ったという情報をつかみました」
(グレッグ将軍)
「なんだとっ!あの逆賊カナンだとっ!これは何と幸運な……これであの村から金を徴収せずとも百万金に届くぞっ!すぐにカナンの首を持ってまいれ、ラジアルっ!」
(ラジアル)
「はいっ!直ちに兵を揃えて向かいます……」
(グレッグ将軍)
「それと……山賊のバジル部隊にも声をかけておけっ!」
(ラジアル)
「あの野蛮な山賊共にですか?」
(グレッグ将軍)
「そうだっ!私に逆らうとどういう目にあうか……村の連中達にも分からせてやるのだっ!それに万が一にもお前が負けた時に疲れきったカナン共にバジルの部隊をぶつける作戦で行くっ!……いいな?」
(ラジアル)
「はっ!仰せのままに……」
ラジアルはバジルにゴンドアの近くの村を破壊し金品を奪うように伝令を出した。そして、自らもカナン達のいる村に向かって進軍を開始した。
その頃、カナン達は偵察を終えたクルーからラジアルの部隊の事や砦の内部の状況を聞いていた。
(クルー)
「……と言う訳でこの平野に沿ってラジアルの部隊が旦那を討伐に向かっていやすぜ」
(カナン)
「そうか……だったら僕達もこの森を抜けずにこの平野に沿ってラジアルの部隊を撃破してからゴンドアの砦に向かおうっ!」
作戦がまとまるとカナン達はすぐに村を出発した。




