魔王自治領騒乱中篇
後半の予定がストーリを増やしてみて中盤になりました
エルデェミア草原上空Side
ルナSide
それは、今日の予定の訓練を終えた後に、アタシが本当の姉のように慕っている女性から
手紙が私宛に来て、それを読もうとした時だった、竜騎士団の団長が物凄い勢いで自慢の赤毛のショートポニーが風で揺れているが前髪は汗でぐっしょりだ、飛竜騎士団駐屯地に帰ったら、湯浴みをして、ゆっくり休もう、しかし、突然の出来事でそれも出来なくなった、アタシ達達の詰め所に駐駐屯地の司令官がやってきて、何時もより大きな声で異常を伝えてきた。
「魔王自治領郊外の森に、人間族の武装集団同士が戦闘中、各竜騎士隊は、出撃用意ッ!
また、片方の人間族には非戦闘員も確認されている、双方の目的及び戦力は詳細不明だ、総員出撃準備かかれっ」
「「ハッ!」」
そう、皆が敬礼をし、すぐさま自分の駆る飛竜に騎乗すると次々と大空へと羽ばたいて行った。
アタシは手紙を懐に大事にしまうと、詰め所から外に飛び出して飛竜に騎乗し大空へと舞った。
高度を取り、偵察が辺りを警戒していると、森の反対側に、人間と魔物の混成の武装集団が、人間族を守りながら円陣を組んで、もう一方の武装集団と交戦をしているとの事だ、それに、今日に限って精霊が、何時もより、ざわついていた。
(精霊達がざわついている? いや、どちらかと言うと、まるで助けを求めるかのような・・・・・・)
彼女が、あの一団の指揮を採っているのか、なら彼女達を援護し、もう片方の武装集団を蹴散らしてから、事情を聞く事にしよう。
「ん? あれは獣人の巫女か? 皆、防御陣形を取っている一団を援護する、エリザベートとイダギリは、アタシに続けっ!」
「「ハッ」」
アタシは攻撃の合図を仲間に送ると、急降下を始める、これは魔族に【転生】した、イダギリから
教えてもらった【新戦法】だ、イダギリ曰く、彼の前世の世界では、航空機が目標物を攻撃する際
【ミサイル】と言う誘導兵器が目標を破壊するそうだが、彼が生まれる前に何度か大きな大戦があって、その時代に行われていた、急降下爆撃を彼が飛竜に覚えさせた。
ただし、彼の方法は、私から見れば【褒められた闘い方】ではない、なぜなら、飛竜の足に油の入った樽を運ばせて、敵に目掛けて投付け、そこに、飛竜のブレスで焼き払うと言う野蛮極まりない
方法だった、一度、彼のデモストレーションで見学したが、木人形に鎧を着せ樽を人形の真上ら叩き付けた瞬間、人形は人間の怪我で言うなら、既に死んでいるか動けない程の大怪我を負っている
そこに、飛竜のブレス攻撃だ、火竜とまでは行かないが、高温の劫火で生きたまま焼き尽くされ
ブレスが例え直撃でもないのに、油に火が回り、鎧が飴のように溶けだす、その光景に私は怒りを覚え、イダギリを睨みつけて、恐らくあの時の人睨みなら、それだけで睨まれた者は気絶か最悪死ぬだろう、そんな一睨みで彼に【こんな戦法は二度と提案するな】と、半ば脅迫にも似た警告をしておいた、この男にはどこか信用が置けない不気味さを感じていた。
あたしが実行した、それは、急降下後低空で飛竜の速度を落とさず、瞬発的な高速で突風を相手に叩きつける対地上目標に有効な【ソニックブーム】だ飛竜の速さと降下した時の衝撃が凄まじく
これまで、空中静止で翼をはためかせ、弓兵やヴァリスタを黙まらせた事が出来たので、アタシは、この方法を好んで良く使っていた。
「行くわよ! はあっ」
「うおっ!」
「ひ、飛竜の翼の羽ばたきで、砂埃がくっ」
「ええいっ、怯むなっ」
人間の兵士飛竜の翼から放たれる暴風に怯みながらも反撃を試みようとしていたが、突風が飛竜の翼から自分達に叩き込まれているので、彼らは退却を余儀なくされた。
※※※※
エルデェミア草原Side
リリスSide
わたくしは、三代目魔王の【リリス・エアリル・サンダルフォン】先代の二代目魔王ミレミアム・レミアス・サンダルフォンの愛娘にして、人間の勇者をお父様を持つ混血なのです。
ま、それは、今は、どうでも良い話です。
わたくしが何故、この平原に居るかと申しますと、数カ月前に、この平原の近くにあった、コボルド族やハーピ族の集落が人間の武装集団に襲われ、集落で暮らしていた村人かなりの犠牲が出てしまったので、慰問を兼ねた現状把握を行う為に、視察を行うのと同時に、各魔王自治領軍の警戒レベルを引き上げておくように各所に伝達はしてありましたが、どうやら今回の事件の裏には、イストリア王国が絡んでいるようです、その根拠は、イストリア語を話す盗賊に上手く偽装した兵士が紛れていたそうで、これを検証するため、かってイストリア王国に滞在した事の有る、魔王自治領軍の武官に、イストリア王国軍の戦術や軍の癖を解析してもらいました所、紛れもなく正規軍の特殊部隊の仕業だと言う結論に至りました。
その武官の報告書は事細かく分析され、電話帳500冊相当のレポートが私に提出されました
更に先方に、使い魔に親書を持たせて、この件を【話し合いたい】と打診しました。
何故、大使をイストリアに派遣しなかったかと言いますと、現在、かの国とは国交をいきなり断絶され、その件を抗議に送りした、使者が危うく殺されそうになって、慌てて、転移魔法で我が自治領に逃げ帰ってくる事件があって、それ以来、特に殺されても問題の無い使い魔を派遣して、先方の出方を見ていたのですが、先方は最悪、開戦も辞さない対応で此方もいい加減、何かしらの対策を取らなければと考えていた矢先に起きた襲撃事件でした。
「それにしても、随分と手際が良いですね? 亡国の民をワザと逃亡させて我が魔王自治領が【保護】したのを見計らって、正式に宣戦布告と同時に電撃戦で、領土の大半を制圧ですか?」
「はい、その様になっているとの事です、おや、人間族の一団に、混血の少女・・・・・・
あれはフヨウ王国のサクラ姫ですな、中々攻めにくい陣形を組んで守りを固めていますが
どうやら、あちらは成り行きで戦闘に入ったようです、イストリアに、フヨウが狙われますな?」
そうですね、今、守りを固めて防御に徹底し耐えていた、一団の援護に我が魔王自治領飛竜騎士が助けに入りましたから、これで、イストリアとの武力衝突は回避不可能になりました。
これは、計算の想定内だったのですが、フヨウ王国の姫君までもが混じっていたので、恐らく、フヨウ王国も狙われる可能性が出てきましたので、使者を送らないと・・・・・・ おや? あの黒いユニコーン? いや、グレイルさんですね? そして、100騎のイストリアの騎馬隊を軽々と殺さずに蹴散らしている、魔族の女騎士は・・・・・・。
「はぁ、お母様、久しぶりに、帰ってきたと思ったら、全く、自分のお年を弁えず、あまつさえ
あの様な軽装で敵軍と闘う等、先代の魔王の品性が疑われます」
わたくしは、馬を走らせると、お母様が相手をしている一団目掛けて、爺やと駆け出していた。
※※※※
エルデェミア草原より少し離れた集落Side
ジャンSide
私は、南方海洋連合体から、映映画の撮影のために、魔王自治領にやって来た、と言っても、CGとか特殊効果が無い、この異世界で、【映画】を撮るのは産まれて初めてだ、私自身いわゆる【転生者】だったりもする、この世界には、既に、この世界の人々の手によって【蒸気機関】や【新聞】や【電信】は復元されていた、と言うのも、先の200年前の魔王戦争で、突然、異世界から、この世界に侵略戦争を仕掛けてきた魔族を率いる初代魔王が徹底的に文明を破壊し尽くした為、この世界の技術水準は中世から科学文明の兆しが見えるくらいの時代レベルまで衰退していた。
そして、あらゆる破壊行為を行った、狂気の魔王は、彼の恐慌に恐れ戦いに疲れ果てた、魔族の名も泣き兵士達の手によって、彼は討たれ、その身を果てしない我欲と闘争のみに費やした生涯を終えた。
その後、彼の娘が二代目魔王が即位するも、魔族と人間は一時的に休戦状態を維持しながらも、力を蓄えた両陣営が、1人の人間の勇者が、二代目魔王を破り、その後、添い遂げ、彼が、その生涯を終えるまでの、100年間は平穏な時代を向けえていたが、彼の死が【魔王の謀殺】と言いがかりを付けた
人間族と再び戦火を交えて、最終的には女神の介入で何とか平和になったらしい。
「まぁ、魔王が居るんだから、女神いてもおかしくないか? それより、皆、収穫は有ったかい?」
「監督、無理でした・・・・・・ 前に、あの【ギャレッグ】が撮影を予定していた、集落に突然押しかけてきて【いい加減な作品】を本国で上映しちゃうもんだから、コボルド族の皆さんカンカンでした。我々にも【申し訳ないが、もう、協力は出来そうに無い】と言われました」
そう、私に申し訳なさそうに言うのは、撮影担当の【ヘレナ・モートン】うちの撮影隊の紅一点で
私と同じ【転生者】で前世では、駆け出しのフリーカメラマンだったそうだ。
外見は、オレンジのサイドポニーにそばかすが特長的名女の子で、元気なのが取りだ。
今回、魔王自治領には初同行となる為、自慢のカメラでコボルド族の撮影とかを楽しみにしていたのだが、コボルド族の族長が協力してくれないとなると、此方のスケジュールに大幅な遅れが出てしまう。
そうなると、今回の撮影は失敗になり、スポンサーも資金提供をしてくれなくなる、さて、どうしたものか? と、考えていたら、音声担当の【ヘンリー・クレイモア】が苦虫を噛み潰したような
しかめ面で私達に駆け寄ってくると。
「ジャン! ケンタウロス族もサキュバス族も吸血鬼族も駄目だった、巨人族に至っては
危うく【此処まで投げて返すぞ!】と警告さてましまったぜ。
どうする? このままだと、ただの観光旅行になっちまうが・・・・・・」
「そうだな、社長と会長には、私から、直接、本社に電信で連絡を入れておくよ
とりあえず、協力してくれそうな、魔族と綺麗な風景を撮ってから、魔王自治領防衛軍の訓練の様子とかも出来れば、フィルムに収めたいが・・・・・・」
ヘンリーは銀髪の長身の優男で、彼も私と同じ【転生者】で、こっの世界が面白そうだからとこの世界にやって来たそうだ、その話は、今度にするとして、今回、私が魔王自治領にやってきたのは、映画の撮影だったのだが・・・・・・。
どうやら、去年よりも人間と魔族の溝が広がっているようだ、ま、原因は此方(人間)に有るのだが最近は、魔族に対する恐怖感を煽る作品や報道が増えてきている、兎に角、私みたいに
ありのままの魔族を撮影する者が減ってきている。 まるで、今日明日にも武力衝突をしかねない勢いが人間側に感じられる、出来れば、本国の検閲が厳しくなる前に撮影をしてしまいたかったのだが。
「かんとく~うっ! ケットーシー族さんとこも駄目でした~、なんでも、猫又族さんたちと
混同されたようで、今回は丁寧にお断りされました~ あ、これ、ケットーシー族さんの族長のおばあちゃんとその件で、相談に来ていた猫又族の族長さんのお土産のカリントウとクッキーです
皆さん総出で、一斉に「ごめんなさい、映画の為に遠路はるばる、海を越えて来て下さったのに
協力できなくてごめんなさい、これお詫びに皆さんでお食べくださいっ」て持たされました
てへへへっ~」
「アイシャお帰り、そっか、ケットーシー族と猫又族の方も駄目だったんだ・・・・・・」
「しっかし、お土産のこの量、どう考えても、俺らの分の倍は有るぞ?」
「たぶん、去年、大人数で来たせいだな? ま、日持ちするから、おやつに食べようか?」
マイペースに、そう、言いながら、貰ったお土産を皆に配る、この娘は【アイシャ・のルーマン】この世界の住人で、映画撮影が面白そうだからと言う理由で私たちの会社に面接してきた、一見、何も考えていない様で、金髪の髪に、まるぶち眼鏡を掛けている、始め撮影隊に同行して来た時は【まぁ、ムードメーカー】レベルだと重いっていたのだが、彼女の交渉術のお陰で去年は交渉が難しいと思っていた。
ケンタウロス族や巨人族の交渉をそつなくこなして、無事撮影が終る事ができた。
しかし、今回は、どの魔族も協力を断られた、どうやら、今回に限っては、あの[ギャレック]が今回の騒ぎに深く関わっているらしい、あいつは金儲けの為なら、どんな事でも平気でする男だ、最近は報道倫理6人委員会が目を光らせていたのだが、どうやら、私たちが別の件で本国を離れた時に【何かが】起きたのだろう、多分、反魔族派の動きがあって、その時に、アイツは入国を禁止されている魔族自治領に潜入して、好き勝手な事をやらかしたのだろう。
そう、考えていたら、集落の森の奥から大砲の砲撃の爆音似も似た爆音が聴こえてきた。
どうやら、何かとんでもないことが起きているようだ・・・・・・。
「ヘレナ、カメラの用意、アイシャとヘンリーは連絡係りだ、本社の会長と社長に至急で電報を打って貰うんだ! あと、同行記者のキッドさんの連絡があったら、メモをしておいてくれ、私たちも危なくなったら、直ぐに逃げる」
「判った、どうせ止めても無駄だから、十分注意しろよ、お二人さん」
「ええ、判ってるわ、じゃぁ、アイシャちゃん行ってくる」
「はい、危なくなる前に、帰って来てください~」
私達は小型カメラとメモ帳を持って、森に向って駆け出した。
※※※※
エルデェミア草原:魔王領防衛軍臨時司令部
キッドSide
俺は今、魔王領防衛軍の臨時司令部に【南方海洋連合体の反魔族勢力のレポート】を持参して
司令部に来ている、何を隠そう、この俺、キッド・エルテェシアは新聞記者は表の顔で何を隠そう、その正体は【魔王領情報部】のエージェントだったのだ!
コホン、さて、俺のユーモアは今はジャンの所に向って投げておいて、さっさと裏の用件を済ませてしまおう、何しろ、ジャンの事は勿論、あの、いけ好かないギャレックを見つけ出して、アイツが俺達のネガティブキャンペーンの証拠を押さえて、魔王領治安管理局に突き出してやろうと考えている。
魔王領治安管理局は解り易く言えば【秘密警察】だ、これは、魔族に転生した者達に、内部の過激思想や国外の要注意人物の取り締まりをする為に立ち上げた組織だが、どちらかと言うと魔王の復権を望む一部の魔族の取り締まりが目的が目的だったのが、その以後の調べで、領内の組織だけでは無く、最近は魔王を崇拝するアレな連中が人間側にも現れて、折角、二代目魔王ミレミアム様が頑張った、人間族と魔族の共存する世界を打ち壊し、再び戦乱を起す準備を始めているようだ。
「さて、今回は、相手がイストリアか? おまけに、この騒ぎは、あいつ等のマッチポンプと来たもんだ、はぁ、俺らも随分舐められたモンだ」
「あ、お兄さん、此処、関係者以外立ち入り禁止だよ? 見たところ、私と同じ混血みたいだけれど
明らかに、民間人だよね?」
ん、気配を殺して、背後から、この俺に声を掛けてくるとは、声からすると、この声の主は若い女しかも、荒事に手馴れているらしく隙が全く無い、得物に手をつけてはいないが、かなりの手誰だ。
「ああ、お嬢さん、ゆっくりとそっちを向いても良いかな? 今から【通行許可書】を提示するから」
「分かりました、では、ゆっくりと後ろを振り返って下さい、でも、少しでも妙な行動を取れば
容赦なく、貴方を捕らえます」
うん、最近の魔族のお嬢さんは油断も隙も無いね? 俺は感心したよ、彼女を刺激しない様にゆっくりと後ろを振り返ると、相手の容姿に驚いた、だってさ、年の頃なら、16~18位で、プラチナブロンドのショートボブに穏やか笑みを浮かべてはいるが、研ぎ澄まされた名刀の刃のような鋭い紅い瞳の半吸血鬼の警備隊員が立っていた、階級は少尉待遇相当官か? 俺は彼女にゆっくりと【通行許可書】を手渡した、許可書と言っても書類ではなく、満月に交差した2本の矢をあしらったペンダントを見せただけだが、これは【魔王陛下直属の密偵】が持つ身分証明みたいなものだ。
何故これが必要かと言うと、各ギルドとかに表立って此方が頼めない【依頼】をする時に優先権とか色々都合が付くようになっているパスだからね。
「これは、特務調査官の! 失礼をいたしました、魔王陛下の所にご案内をいたします」
彼女は俺に敬礼をして、踵を反して俺を現魔王陛下が指揮を採っているであろう陣に案内をしてくれる。
さて、これから報告する内容が内容だけに、俺は少し憂鬱な気分だが、まぁ、これも、宮仕えの悲しい性だね、兎に角、仕事と割り切って報告をする事にしよう。
次回は不定期ですが頑張ります。