表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

仕事のやり過ぎがいい訳がないその6

自室に戻るとチビ助がいた。

「おかえり、ご飯にする?それともお風呂?」という嫁が言いそうな台詞をいきなり言ってきた。

チビ助は男なので「君を……。」なんていうお決まりの台詞は言わずに

「まだ食ってなかったのか?もう食堂閉まってるだろう」と言った。

「うん、閉まってるだろうね」

チビ助はそう言うと箱を2つ取り出したそして

「だから、作ってもらったんだ。早く食べよう」

と言って食事の準備を始めた。その姿を見て俺は

「……帯刀、ごめん買ってきちゃった。」と言って俺はビニール袋を見せた。

「へっ……。」

チビ助の呆けた声が響いた。


「買ってくるなら先に言ってよね‼︎」プンプンと怒り出した。

「ごめん、気をつけるよ」俺はビニール袋の中身を冷蔵庫に入れながら言った。あと、お前の連絡先知らねーよと心の中でツッコミを入れる。それを口に出さないのは、いま連絡先を交換するのが面倒くさいからだ。それに野郎のアドレスとかいらねぇ。

「そういえば連絡先交換してなかったよね?」なんて事をチビ助が言ってきたのですかさず

「早く飯食おうぜ」と言った。

「連絡先……。」

「冷めるぞ」

「あー、うん……。」チビ助は諦めてご飯を食べ始めた。

よし、成功!俺は心の中でガッツポーズした


特に話す話題もないので黙々とご飯を食べた

食事も終わりかけた時に

「お風呂先に入る?」と聞かれた。

身体中ベトベトなので早く風呂に入りたかったのだが、チビ助に一番風呂を譲る事にした。夕食待ってもらったし。

「わかった、ありがとう」そう言ってチビ助は風呂場に行った。

静かな部屋にシャワーの音がする。さて、何して時間を潰そうか。机に目を向けるとコンディショナーのボトルが置いてあった。

「あぁ、また忘れちまったのか」

1日ぐらいならいいかなと思い、昨日は使わなかったが2日目となると髪の毛がゴワついてしまう。俺は、コンディショナーをチビ助に渡す事にした。

「おーい、コンディショナー忘れてるぞー!」俺はドアをノックしながら呼びかけた。

風呂場からは依然としてシャワーの音が聞こえる、多分気がついていないのだろう。しょうがないな、直接渡すか。

風呂場と脱衣所には鍵がない。同性なので特に必要ないからだ、なので俺は簡単に風呂場に入る事が出来た。


ドアを開けると、どこからともなく湯気が吹き上げてきて視界を隠す。不自然な光の筋が数本伸び、さながらライブ会場の様な光の演出がはいる。不明瞭な視界の中ぼんやりと人影が見えた。すると、『キャー‼︎』と言う声が聞こえたところで俺は張り手をくらった。

「痛っ‼︎」俺はよろけて尻餅をついた。

未だ湯気が立ち込める風呂場からぬっとヒツジが現れた。


そこにいたのは多分一糸纏わぬと思われる帯刀だった。なぜなら、全身が泡まみれだからだ、頭と手足の先は出ていたが、不自然なほどに泡にまみれていた。

アニメなんかでよくあるヒロインのお色気シーンの時に出現する謎のナニかの過剰版がそこには広がっていた。

「……なに?」チビ助はドアの裏側に隠れると、泣き出しそうな顔で尋ねてきた。

「……えーと、コンディショナー忘れてるぞ」

「ありがとう、そこに置いといて」

「……わかった、なんか……ごめん」俺はそう言うとコンディショナーを置いてそそくさとその場から逃げた。


俺は椅子に座り頭を抱えた。

(何だよあれ?超常現象かよ)

「さっきの悲鳴、もしかして帯刀って女の子?まさか……な、それにここ共学だぞ、男装する必要ないだろ、はっ!待てよ、ハーレムと言ったらなんかよく分からんが女の子と相部屋の物語があったりする……つまり、俺の為に都合よくなってるんだろう、ご都合主義バンサイ‼︎」俺は1人デュフフと笑った。


しばらくすると、風呂場からチビ助が出てきた。顔を赤らめもじもじしている。時折こちらを見ては「あー」とかうー」と唸っている。

俺はチビ助の顔を真っ直ぐ……気持ち斜め下を見つめて

「なぁ、お前ってもしかして女子か?」と聞いた。

チビ助は覚悟を決めたかのように大きく息を吸い込むと

「うん」と頷いた。


湿り気を帯びた髪の毛に上気した頰が妙に艶めかしい。水滴が髪から鎖骨へと流れ落ち今、胸の谷間に……多分落ちなかった。シャツに吸収されたっぽい。それに、谷も山もなかった、平原が広がっていた。

俺は一つ溜息を吐いた。男装少女って奴は、男装がバレたら急に胸が出てくるもんじゃないのかよ。

俺は結構ガッカリした。

「そうか……俺、風呂入ってくる」

困惑気味の帯刀を置いて俺は風呂場に行った。

(チビ助ってまな板なんだな。)


風呂場は視界良好。謎の湯気や光など発生しない。

俺は、ボディソープを適度に泡立て全身を洗った、それなりに泡立つも全身を隠すまでには至らなかった。

俺はもう一度溜息を吐いた。

(俺はアニメの視聴者じゃないんだけどな)そして思う、ラッキースケベとは何だろうかと。


風呂から上がると、ベットの端っこに腰掛けていた帯刀がこちらを見上げている。俺は帯刀を見るついでに再び胸部の確認。現在も平原ナリ。

(……コイツほんとに女の子かな?)

俺がそんな事を考えていると

「どうしても叶えたい事があって、それで男の子として入学したんだ、だから……だまっといてくれたら嬉しい」帯刀は呟くように言った。

「わかった、誰かに言いふらしたりなんかしねぇよ。……そんな事より」俺は言いかけて言葉を切った。

(どうやって普通科に入って来たんだよ?試験の時に身体検査やってるはずなんだけどな。)と疑問に思ったが、まぁいいか俺的には男装の経緯も入学できた方法もさほど興味ない、重要なのは帯刀が、男か女かの一点のみである。

「……男装、バレないようにしないとな」

「そうだね!……その、ありがとう」帯刀は安心したように笑った。

「気にすんな、なんか手はあるのか?」

「大丈夫だよ!僕、女の子だって気づかれた事ないから、君が初めてだよ」

「そうか、それなら安心だな……。」

俺とチビ助はお互いに笑った。

(マジかよ……実は、心は女の子で身体は男……とか言うオチじゃないだろうな)俺は静かに戦慄した。

「そろそろ消灯時間だね、寝ようか」チビ助が時計を見ながらそう言ったのでつられて俺も見る、22時まであと数分だった。

「やべっ!刺繍の課題がて出るんだった」

「そうなの、でも時間ないし……明日の点呼終了後にでもやる?手伝うよ!」

「そうだな、助かる」

俺たちは寝る事にした。ちなみに22時になると勝手に電気が消えるようになっている。だからもう寝るしか選択肢が無いのだ。

「おやすみ」

「うん、おやすみなさい」

そう言って電気を消し、ベットの中に入った。


時刻は24時、とある業界的に言うと『てっぺん』である。俺は静かに起き上がり隣のベットの様子を伺う。規則的にすやすやと寝息が聞こえる、多分寝ていると思う。ゆっくりと起き上がりカーテンを開け、俺はニヤリと笑った。

外は満月、月明かりで部屋の輪郭がぼんやりと浮かび上がった。

俺は目を慣らすためにベットに腰掛け薄暗闇を見つめた、十分に目が慣れた所で立ち上がりチビ助が寝ているベットの隣に移動した。


ある人は言った『人生における偶然はない、全て必然である』と、つまり俺的に解釈すると、『ラッキースケベは偶然であるように見せかけて、物語の進行のうえで必然である』と言う感じになる。

偶然のスケベができないなら必要のスケベをすればいいと思ったのだ。

男装少女のお約束といえば、主人公にラッキースケベされてから正体がバレてそこから恋に落ちる。つまり、これから何をするのかというと俺、犯罪をします。良い子は真似しないでね。


俺は大きく深呼吸した。

(許せ帯刀、仕方がないんだ。物語を進めるうえで)

ゆっくりと手を伸ばし、掛け布団を剥いだ。月明かりに照らし出されたそこは、どこまでも平らだった。しつこい様なので、どこがとは言わない。そこに向かって俺は右手を伸ばした。


それは一瞬の出来事であった。伸ばした手を瞬時に捕らえられ、捻りながら帯刀は俺が立っている方向とは逆に寝返りを打った。なので俺の右手は、変に捻れたまま目一杯伸ばされたのだ。

「イタタタっ‼ごめん︎」俺は痛みと、もしかして帯刀が起きてたかもしれない恐怖で思わず叫んだ。

しかし、俺の右手を捻っているヤツは

「う〜ん、ムニャムニャ、もう食べられないよ〜」などと寝言の王道を呟いている。

気の抜けたような寝言で、幾分か冷静さを取り戻した俺はこの現状から脱出するべく頭を巡らせた。が、痛いムリ。俺は自由な左手でベッドの縁をバシバシと叩いた。するとあっさり離してくれた、痛む右手をさすりながら少し、帯刀から距離をとり様子を見ることにした。

「寝ながら護身術するなんてどんな教育受けてきたんだよ」俺はぼやいた。

寝込みを襲うような奴に教育云々言われたくねーよと思うかもしれないが、そんなもん知らん。


俺は帯刀が寝ていることを再度確認すると、次の手を考える。そんな事など露知らず、帯刀は挑発するように仰向けに寝返りを打った。

「接近戦が駄目なら遠距離かららなどうだ」

掃除用のモップを取ってきて構え、柄の先端を帯刀の胸部に向けた。手に全神経を集中させると、優しく振りかぶった。


目的の場所まであと数センチという所で弾かれた。その後も角度を変えてみるも全て弾かれてしまった。そのうえ

「う〜ん、でもパフェならいける」と寝言まで言われた。

「くそっ、何なんだよ‼︎」俺はモップを強く握りしめ横薙ぎに一閃した。

モップの柄は帯刀のパジャマの裾を捕らえ、捲り上げる。

「ふっ、腹チラで勘弁してやるよ」そう言って俺は自分の戦果の確認をとる。

月明かりに照らされた白い肌が……月から伸びたナゾの光線によって、発光していた。だんだんと光が強くなる。堪らず俺は

「目っめが〜」と叫んでいた。


セーラームーンは言った『月に代わってお仕置きよ』

しかし俺は今、セーラームーンを拝む事なく月から直接お仕置きされるのであった。




続く





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ