君の気持ちなんて分かる訳がないその6
ーー俺はごく平凡な高校生だった、春までは………。
急に両親の海外主張が決まり、日本に1人とり残されてしまった俺。
慣れない家事に戸惑っていると、突如屋根づたいに幼馴染(美少女)が俺の家へやって来た。
「あんた一人じゃ心配だから、あたしが住み込みで面倒見てあげるわ、勘違いしないでよね‼︎あんたのためじゃないんだからね!あたしの為よ、花嫁修業なんだから‼︎」
いや帰れよ。と内心思いつつもお礼をいい、こうして俺は幼馴染との共同生活を送ることとなった。
やれやれ、静かに暮らしたいんだけどなぁ。
それからしばらく経ったある日の放課後。いつものように部室へ行くと、すでにみんな集まって話し込んでいた。
何してんのかな?と思いつつ
「おーす」
と声をかけた。すると
「あら、来たのね」
と言われた。そこにいたのは、先輩であり部長(美少女)だった。
「ええ、たった今来ました。」
どこからともなく3人の美少女が急に現れ
「おそーい」
と幼馴染(美少女)が
「先輩、大丈夫ですか?」
と後輩(美少女)が
口々に言ってきた。
「ちょっと、あたしの方が心配してたんだから」
「なによ、わたしの方が‼︎」
「わっ私も先輩のこと……。」
3人して言い争っているのを横目に先輩が
「私の方が心配していたわ」
と俺の耳元で囁きかけてくる。
思わず体を引くと
「あー、先輩ズルい‼︎」
と言い、どすどすと3人がかけてくる
まったく、職員室にプリントを届けに行っただけなのに、やれやれだぜーー
そこまで読んで、俺は思いっきり本を閉じた。今なら一瞬で押し花が作れると思う。本を破り捨てたい衝動にかられるも、やらなかった。だって続きが気になるんだもん!
夕食も食べ終わり、部屋でゆっくりとシャイニングノベルを読んでいたのだが、あまりのハーレム展開に思わず嫉妬してしまった。
俺もこの本のような反吐がでるほどのスーパーハーレムがしたいのに、現実はハーレムどころか美少女との会話すらままならない。
ほんと世の中って残酷。
俺に残されたシャイニングノベルっぽい展開といえば、共同生活している同居人が女の子である事ぐらいしかない。こいつが、即攻略できるぐらいのチョロインであれば言うことなしなのに、実際は何考えてんのかよく分からん鉄壁女だった。
つまり、俺のハーレムの夢はほぼ潰えたと言っても過言ではない。
持っていた本を放り出し、目を瞑った。かすかにシャワーの音が聞こえる。今、風呂場には鉄壁女こと帯刀がいる。ほんの1、2ヶ月前であれば、シャワーの音だけでもドキドキしていたのに、今となっては何とも思わない。例えば目の前で帯刀が急にストリップしたとしても、俺は動じないだろう。だって、謎の光とかで見えないんだもの。
(あーもー、どうしたらいいんだろ?教えてーおじーさーん‼︎)
と頭の中で叫びつつベットの上を転がる。
しかし、何もアイディアが浮かばなかったので、再びシャイニングノベルに手を伸ばした。
相変わらず、主人公は普通に生きてるだけでモテモテだった。
「はぁ……いっそヒロインにでもなってやろうか、その方が後々百合展開とかでワンチャンあるんじゃ……。」
俺は思わず呟いて、苦笑した。
主人公の事が大好きなたくさんのヒロイン達と俺。
しかし主人公はヒロインに対して鈍感で、次第に焦りだすヒロインたち、思わず愚痴大会とかで集まり、さりげなくその場に俺も居る。
そういうある意味ハーレム状態とか、な。
「まぁ、無いな。」
1人笑っていると
「何にブツブツ言ってるの?お風呂空いたよ」
首にタオルを巻いた帯刀が立っていた。
「うぉ‼︎な、ななななんでもない‼︎」
思わず変な言葉が出た。
「どうしたの?」
帯刀はくすりと笑う。
「……いや。」
俺は立ち上がると、そそくさと風呂へ向かった。
熱いシャワーで身体を流し、シャンプーでわっしゃわっしゃと頭を洗う。目の前には鏡が備え付けられていて、平凡な顔面の男子高校生の顔が映る。平均よりも筋肉が付いて引き締まってしまった身体。これは嬉しい誤算だった。
俺は何故モテないんだろうか?
主人公と俺を隔てる壁は一体なんだ?
俺には幼馴染と妹が足りないからか?
疑問は次々と浮かぶけれど答えはどこにもない。
長く考え事をしていたせいか寒くなってきた。「さみー」なんて言いながら蛇口を捻る。暖かいお湯が頭上から降ってきて俺を包み込む。
これから何をすべきだろうか。
水音と湯気に遮られ先が見えなくなった。




