表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

深き森 自愛に満ちた 聖女様3

 私の家へとカタリナさんを連れて参りました。

 『猫を被る』とはよく言ったものですが、カタリナさんは、昼行灯の油を舐める、化け猫級のものを被ってました…。脱ぐの早すぎです。


「お前、アスク様とはどういう関係なの?その程度の顔で身体で身なりで、よくもあんなに親しげに出来るわね?恥ずかしくないの?あの方には、私こそが相応しいわ。

 今後、話すことも視界に入れることも禁止よ。分かった?分かったら、さっさと部屋へ案内なさい。愚図ね」


 ……ぽっかーん。

 ええー。まさか家入って直ぐ、全力で槍ぶん投げてくるとは…ちょっとビックリしました。

 というか、面倒臭くなってきました。


「お部屋はこちらですね。ここは基本、自分の事は自分でします。分からない事があったら聞いてください」

「何この粗末な部屋!明日模様替えをして。家具は全て入れ替えよ!湯を使いたいわ。準備なさい」

「では、教えますね」

「お前が準備するのよ。ずっと。馬鹿なのね?教育しないといけないかしら?」


 え?もう、暴力?

 扇を出して、畳みます。(それどこから?乳?)

 それを上に振り上げて…パシッ!私の30cm上の空気を叩きます。


「は?何よこれ?!防御壁?何故お前が!」


 はい、そうなんです。魔法頑張りました。

 森燃やしたら大変ですから。

 教えてくれるアスクさんのセクハラ…あ、思い出しちゃ駄目!今は、聞きたいことがあるんです。


「召喚をしていたなら、知りませんか?この世界の黒は魔力が強い事」

「なっ?!お前は私が喚んだ者ではないけれど、魔法が使えるのね?忌々しい異界人!」

「本当に、喚んだんですか…。誘拐ですね。犯罪です。反省し」

「はあ?異界人など人間ではないわ。化物よ!どう使おうが私達の勝手よ」

「…あなたが喚んだ方は、どちらに?」

「知らないわ。直ぐ転移で消えてしまったもの。役立たずの癖、その上、復讐までしてきたのよ!穢らわしい獣人を使って!王子や騎士、大勢殺されたわ!」

「あなたが、あの滅んだ国の…」

「折角、王太子妃になれたのに!穢らわしい異界人は、穢らわしい獣人ととてもよくお似合いだわ。

 あなたも、ここにいたら高潔なエルフ族や私が穢れるから、早く出ていきなさい!」


 どうしましょう?言葉が全く通じる気がしないんですが?!

 獣人…会った事ないですが、復讐してくれるほど慕っているんでしょうか?

 無事なんでしょうか、その方は。


「私は今、長様から仕事を任されている身。独断で放棄するわけにはいかないので。では、お風呂…湯の使い方を説明しますね」

「なんですって?!」

「はい。こちらですよー。説明しますよー。私は、あなたの使用人ではないので、これからは自分でやってください」

「なっ?!」


 バタン!!部屋の扉が閉まりました。

 え?入らない選択ですか?


「はぁ。疲れた……さて」


 私はそのまま家を出て、長様の所に殴り込み…ではなくお話をしに行きます。

 コンコン。


「たーのーもー!」

「アキ!」

「ぐえ」


 凄い勢いでドアが開き、アスクさんに抱き締められました。

  

「ア、スクさん、離して」

「心配した。どこも怪我はないか?何された?大丈夫か?」


 おぉう。こんなに心配かけてしまったのか…でも、その心配ぶりを見て、ささくれた心が癒されました。ふぅ。


「大丈夫です。全く何もありません。長様にお話があります。良いですか?」


 そして、長様の部屋へ案内され、アスクさんは何故か防御・防音・不可視の壁を部屋にかけました。なんて厳重。どれだけ危険人物?!


「長様、ありがとうございました。話をする機会を頂いて。出来れば、家には入れたくなかったのですが」

「仕方ない。ワシが聞いても、本音は話さんからな。しかも、同じ人間で若い女性。一緒にいるのが自然な流れじゃ。ワシらの家では、やはり本当の事は言わんしのぅ」

「分かってます。ちょっと愚痴りました、ごめんなさい」


 やっぱり、長様には本当の事は言いませんよね…。狸様だなんて言ってごめんなさい。


「いや。…それで?本性出るの早すぎじゃろ?聞きたいことは聞けたか?」


 私も思いましたよ。

 今回のこの茶番劇、私からお願いしました。

 以前、召喚されて逃げた方が気になって、アスクさんに聞いてもらうようお願いしたんですけど…。実のある返答はなく。

 長様が、私と二人きりにして下さったんですねぇ。


 まさか、カタリナさんが喚んだ張本人とは。

 世間は狭いです。張本人ではなくとも、喚んだ人達が、今どうしているか聞きたかったのですが…結果はご覧の通り。


「即出ししてきました。聞いたは聞いたのですが…喚んだら直ぐに転移でいなくなったから知らないと。

 その後、獣人が復讐に来たと言ってました。あの滅んだ国の事です」

「そうか。行方は分からぬか」

「はい。あの、獣人の方はどうなんでしょう?代わりに復讐するならば、良い人なんでしょうか?」

「そうじゃの。本来獣人は、人間に手を出さん。出したら最後、止まらんから。人も獣人も、全滅や激減すると、世界のバランスが崩れ森が死ぬ。それを知っておるからの。

 だが今回の獣人は、敢えて手を出した。余程気に入ったのじゃろ。多分、大丈夫じゃ」

「そう、ですか…」


 会いたいなぁ。同郷の人かもしれないですし、困っていたら助けたい。

 強い獣人さんに任せた方が、安心でしょうが。


「それから、カタリナさんとは、暮らせませんね。とっても怒らせたうえ、異界人は人ではないと言われました。多分、あちらも一緒に暮らしたくないと思ってます」

「そ、そうか。森の意向が見えるまでは監視したい。女エルフに頼むから大丈夫じゃ。魔力は封じてあるし、心配いらん」

「すみません。お願いします」

「直接ではないがの、奪ったものと奪われたものが、同じ屋根の下は無理がある」

「自分で言い出したのに、挫けるのが早くてすみません」

「謝ることではない。そこは?」

「ありがとうございます?」

「そうじゃ。今日はここに泊まっていきなさい」

「ふふっ。いえ。ご飯も用意してないですし、お風呂も入れてないので、せめてそれはしようかと」

「アキ、必要ない」

「う~ん、知らない土地で一人ですし…その用意だけしてこちらに来ても?」


 知らない土地。一人。

 あの暴言を聞いても、私には身につまされる状況なのです。


「…そうじゃな。では、待っとるよ」

「アキ、俺の家に…」


 まだ言いますか!アスクさん!

 アスクさんに話そうと顔を向けたら、かなり険しいお顔です。おや?


「気配が近付いてる。長、カタリナだ」

「ほっ。どうやら、アキより逞しいの」

「あー…はは。もし、彼女がここに泊まりたいと言ったら、お願い出来ますか?」

「おぉ、ええぞ」

「すみま、ありがとうございます」





 さて、彼女は私に見切りをつけ、ここに泊まるのでしょうか?




お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ