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4.膝詰めでお話中

ほぼ会話。

「助けに来た。アキ、アキアキ…無事で…」


 アスクさんの声が聞こえました。顔を上げると、小さな光を持った、アスクさんがいます。

 色々考えたけれど、この存在が、今安心出来る存在になっているのは、事実だなぁ。ぼんやり思います。


「アスクさん…ア、アスクさーむっん?んん?」


 一気に安心感が押し寄せ、感謝と安心と驚きが混ざり、涙が溢れてきた…と、思ったんですが。

 顔に影がかかり、また口を塞がれました…あれ?何に?!手、背に回ってますよね?この近いの顔ですか?!

 頭でぐるぐる考えていると、ぬるりとした何かが口の中に入ってきます。


「っ?!は?あす、さ…やめ、んっ?」


 これは!あれか?!え?!は?


 頭が覚醒し、状況を理解。首を振ろうとしたけど、いつの間にか後頭部を掴まえられて動けない。

 肘を動かし服を引っ張るが効果が無い。

 頭でパニックを起こしている間に、どんどん深く、深くなっていく行為。息が苦しい。

 くちくちと、水音が薄暗い空間に響く。くぐもった声を出すも、全て無視され、力が…抜ける。くらくらする。

 脚の力が抜け、体重がその腕にかかり、一瞬口に触れるものが無くなる。その隙に、声と息をと思うが本当に一瞬で、追いかけてきたそれに、また塞がれる。


 まだするか?!

 息苦しさが酷くなり、隙間から息をするが辛い。

 やっと口から離れ、顔が見える。

 息も絶え絶え、ぐったりし身を預けるしかない。

 こ…これだけは、これだけは言わないと。


「あ、あすくさん」

「ん?」

「…しつこい」


 そして身体は、一気に疲労が押し寄せて、意識を失いかけ、身体から全ての力が抜けていく。


「…。…アキ?アキっ?!」


 いえいえ、誰のせいだと。


「本当に、無事で良かった。呼ぶのが遅い。

 …さぁ、やるか」


 言葉を耳にした瞬間、凍える空気。

 ズンッと、心臓が凍りそうになるほどの重圧が肌に触れ、今度こそ本当に意識が落ちた。





 よく寝た…。

 すっきり、目覚め爽やか………?!


「ここどこ?!あれ?」


 目覚めると、木造の狭い部屋、簡素なベッドの上にいました。

 カチャ。村で見ていた扉より、やや小さめのドアが開きます。アスクさんが、手に食事を持って入ってきます。

 

「アキ?起きたか?」

「アスクさん、ここは?」

「助けた後意識が戻らないから、移動は負荷がかかると思って宿を取ったんだ」

「はあ」

「体調は大丈夫か?」

「はい。よく眠れました。どこにいるとも分からない私を助けてくださって、本当にありがとうございました」


 ベッドに座り、頭を下げる。

 ふわっと、包まれる感覚があり、アスクさんは私を抱き締めます。


「アスクさん?」

「本当に、無事で良かった。直ぐ呼んでくれると思ったのに、中々呼ばれないからあちこち探した。話せないようにされてたのか?」

「いえ、女優になってました」

「………?」

「しきりに名前を聞かれたので、何も覚えてない振りをしてました。名前を呼べって、そういう事だったんですね?!」


 まさか、ア○パンマンのように来てくれる事とは、全く思いませんでした!

 よくドラマで、何かあったら直ぐ駆けつけるから俺を呼べよ?的な社交辞令に近いものだと思ったのに!


「…アキ?不安だよな…もうどこにも召喚されないから安心しろ?消してきたから」


 …ナニヲ?

 思い出す。気を失う寸前に感じた、凍えそうに冷たい感覚。いえ、考えるのは止めましょう。臭いものには蓋を!


「ソ、ソウデスカ。ワーイ、アリガトウ」

「アキ、アキに聞いて欲しい事がある」

「聞いて?あっ!私も、聞きたい事があります!長様…いえ、アスクさんもご存知なんでしょうか?私、すっごい魔力あります。ナナフシがビックリするくらい!」

「は?」

「どういう事なんでしょう?村でダメ元で魔法使おうとしても、何も起きませんでしたよね?私、魔力ただ持ってるだけなんでしょうか?」

「…え、そんな筈は…いや、しかし…」


 アスクさんが、思考の渦に囚われました。

 アスクさんも何も知らない…?

 誰か、私に答えを下さい。このままでは、妄想が暴走して、ネガティブキャンペーン継続されます!


「…アスクさん、ここは森から離れた場所ですよね?少し試したい事があるんですが、付き合って頂けますか?」


 




 ただ今戻りました。

 そして、長様のお宅へ突撃訪問し、膝を詰めてお話し中です。


「長様、もう全て話しちゃって下さい」

「あーうーその、な?」

「私を利用しようとしましたよね?」


 そうなのです。あの後人の国の原っぱで、魔法を使ってみました。あらビックリ!とんでもない大きさの水の玉が現れ、危うく溺れ死ぬ所でした。

 長様の元に行こうとなって、でも何かあったらいけないからと、何時でも逃げ出せる準備を整え、例え長でもアキを守る(キリッ)と言ったアスクさんを少し信じてここに来ました。

 アスクさんには、長の後ろで黙って聞いて頂いています。

 私の言葉に長様が、悲しそうな顔をします。

 騙されないんだから!私の方が、よっぽど悲しいんですからね。


「森と関係ありますよね?」


 森は、数十年澱んでいると聞いた。

 ずっと変わらない森。意思のある森。

 水も空気も、滞ると澱みます。

 そこに出てきた、世界に関係無い私。

 新しい因子を殺して血肉を取り入れ、森は更に成長する。

 そのために、エルフの森に留まるように、見目の良いアスクさんを宛がう。

 後は、アスクさんやエルフのためなら、この命惜しまないように、自ら血肉を森に捧げるように心を誘導する。

 これが、私の仮説です。

 

「そこまで気付いたのか…」

「…はい」

「そうか。確かに、ワシはお嬢さんをアキを利用した。アキにのう、森に入って貰いたかったんじゃ」


 やっぱり!私は頭が真っ白になります。何時でも逃げ出すための道具を握りしめます。


「森に新しい風を吹き込むために。

 アキに、森を歩き植物を採取し、食物を見つけ好きな花を摘んで、動物を狩り、魚を食べ、そうして、森にアキという存在の影響を与えて欲しかったんじゃ」

「森が、澱んできたから…」

「そうじゃ。悠久の時を在り続けた森は、澱んできた。そこに、新しい手を入れて欲しかったんじゃ。

 ワシらでは駄目じゃ、例え新しいと思われる事を森にしても、それはやはりこの世界の中の考え。森には、影響せんからの」

「新しい…手?」


 おや?


「そうじゃ、現にアキはワシらでは、およそ食物と思えぬものでも食し、こうじ?だったかの、あれに新しい働きを与えた」


 全部、食べ物!


「悠久の時にある森には、アキのすることは、ほんの一瞬。極々小さな事。…じゃが、それが更に時が進み、多大な影響を及ぼす。それを期待しての」


 ……それは、バタフライエフェクト。


「エルフの森は、全ての生命、世界に影響を与える。森は、ちょうど良く飛んできたアキを人の国から奪い、隠し、ここにとどめた。

 人の国に行けば、どうなるのかも何となく分かっておったからの。

 人の国で、強制されて泣くアキに影響を与えて欲しいのではなく、自由に過ごし笑うアキに、影響を及ぼして欲しかったんじゃ。

 だから、ワシもここに居てもらうよう、この森で食事を出す事を提案した」

「ちょうど良く飛んでた…え?じゃあアスクさんを私に宛がったのは?」

「宛がう?」


 あ、聞かれちゃいました。


「あて…?アスクはのう、それはそれは暗い性格での。生に既に飽いておった。エルフは、長寿。既に飽いてしまったら、この先、生きてはいけん。狂うか、自ら命を断つじゃろ。

 そこにアキが来たので、いい刺激になるかな~と。ワシは、二人がくっつけば良いと思ったのも事実じゃ。

 しかしの、大切なものは捨てるわ燃やすわで、アスクと一緒にいさせられないと思って訪ねると、まぁ仲良く二人で食事を作っておるじゃないか!しかも、大恩人と言っておるし!」


 軽い!ノリが軽い!

 …そうでした。号泣した時、心が弱った時に居てくれて、そう思ったのです。


「えーと?森は、私を殺して血肉を取り込む気はない?」

「なんでじゃ!?森は、無益な殺生は好まん!そんな事したら魔物は増え、悪影響しか出んわ!」

「アスクさんを宛がったのではなく、くっつけば良いなという、お節介な親戚のオバサン的考え?」

「オバサ…?そうじゃ、二人がくっつけばいいな~と思っておった」


 …早合点!私の妄想の残酷設定の酷さよ!

 そういえば、私推理とか仮説とか、一切当たったことありませんでした。

 そっかぁ、森かぁ。


「それ、私が嫌ですと言ったら?もし、森にずっといるより、旅をしたいとか」

「構わんよ。森は、全てに繋がっておる。

 ただ、アキの世界よりずっと危険じゃから、ワシらの目が届く所に居て欲しいのはあるの」

「…すごーく、失礼な事を聞いてもいいですか?」

「あぁ」

「帰れる方法、300年というのは?」

「ああ、それの。それは、残念ながら本当じゃ。証明のしようがないがのぅ。

 人間の国がここ最近、召喚しとるのは知っておるじゃろ?あれの影響で、大地に、森に力が無くなってるんじゃ。まだやっとるとこもある。力が減り、今は300年より500年程に増えてしもうた」

「にんげんのばかー!」

「アキ。ワシらとしては、この世界で思うように生きて欲しい。森は、アキを子のように思うて、勿論ワシも。

 …何を失ったか良く分かっておる。その代わりでは無いがの、その失った部分を埋めるくらいにはなりたいんじゃ。

 しなくていい悲しみを負い、父母とも、故郷とも引き離した、そんなこの世界を信じられんのは、仕方ない事。

 この世界から代表して、謝罪する。

 本当に、申し訳ない事をした」

「…おさ、さま」


 謝って欲しかった。馬鹿な人達に連れてこられて、周り全部信用出来なくて。

 でも、優しくされるとグラついて、でも、やっぱり信用出来なくて。

 本当は、私もこのエルフ達を利用してたの。

 自分達がやったことではないのに、謝ってくれる優しい人達。

 長様の言葉で、泣いた。


「それに、アキをこの世界に引きずり込んだ奴等は、もう罰を受けた。森の子を拐うなど…のぅ?

 だから、安心していいぞ?」


 そういえば…原っぱで魔法試した途中、隣国の城が消えたとか、巨大な穴ができたとか…ブルッ


「魔法!魔法は?私、ここにいると使えないんです」

「アキ、魔法試してみたじゃろ。その時どうだった?」

「掌大の水を出す筈が、家2件程巨大なものが出て、溺れました」

「魔法は、心に左右されるから、慣れるまでは酷く不安定での。アキの心が揺らいでる時に、森で使ってみぃ、森無くなるわ。

 更に、巨大な魔力じゃからな、遊びで使っても村が消えるので、世界を受け入れるまでは、せめて森での魔力を封印したんじゃ」

「子供の火遊びで、村消えるレベル!」

「これからゆっくり覚えていくと良い。森の外で」

「ぐはっ」




 話が終わり、ふとアスクさんを見ると床に打ちひしがれておりました。

 善意を陰謀だと思ってたから、ショックでしたよね…ごめんなさい。




 (それだけではないがの…)ぼそっ






作者、戦闘シーン書くと、描写があり得ない軟体生物になりました。腕3本生えてたり。

なので、カット。すみません。



お読み頂きありがとうございます。

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